医学講座

線状痕の手術

 線状痕(せんじょうこん)という言葉が
 何回か出てきました。
 線状の瘢痕(はんこん)
 つまり線のようなキズ痕(あと)のことです。
 顔にキズができてしまったら、
 少しでも目立たなく…
 キレイに治したいと思うのが人情です。
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 私たち、
 形成外科医の仕事で、
 一番最初に覚える手術が、
 この線状痕の手術です。
 われわれは、LS(エルエス)、
 linear scar (リニア スカー)の略、
 と呼んでいました。
 形成外科医として、
 最初の手術が線状痕の手術で、
 何年経験を積んでも難しいのが、
 この線状痕の手術なのです。
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 なぜ難しいかというと…
 キズを消すことはできません。
 限りなくゼロに近づける手術です。
 ところが、
 人によって(体質により)
 手術をしても…
 赤く目立ってしまう人もいます。
 思春期の方は、
 一般的にキズが目立ちやすい傾向があります。
 成長期なので、
 キズを治す細胞も活発に増殖するのが、
 原因だと思います。
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 よく、
 形成外科より美容外科の方が、
 キズをキレイに治してくれる???
 とお考えになる人がいます。
 もっともな、お考えのようですが、
 実は、形成外科医の方が、
 キズを治すことに関しては、
 プロが多いのです。
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 美容外科のキズが目立たないのは、
 目立たないところを切るからです。
 豊胸術でしたら、ワキの下。
 フェイスリフトは耳の前と後ろ。
 二重切開は、ラインの中。
 隆鼻術は鼻の中。
 つまり、
 目につきにくいところを切るだけです。
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 形成外科は大変です。
 唇裂は口唇の、
 一番目立つところにキズができます。
 あの手この手で、
 キズを目立たないようにケアーします。
 一番大切なのが、
 キズの安静です。
 どんなに上手に縫合しても…
 そこに緊張をかけて、
 キズを引っぱると赤くなって目立ちます。
 手術後にテープを貼っていただくのは、
 キズにかかる緊張を
 少しでも少なくするためです。
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 私は形成外科医として2年目の秋に、
 日本形成外科学会学術講習会を受講し、
 このキズの安静について、
 当時、東大形成外科教授の
 福田修先生から教えていただきました。
 福田先生はとても温厚な先生で、
 耳の手術がご専門でした。
 福田先生(当時は今の私くらいの年齢?)にしても、
 キズをキレイに治すのは難しいと
 丁寧にお話ししてくださいました。
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 時代が変わっても、
 キズを治すのが難しいのは変わりません。
 魔法のように、
 キズに塗っただけで…
 あっという間に、
 元の皮膚に戻る薬なんてのは、
 できないと思います。
 一つひとつ、
 手作業で丁寧にキズを治すのが
 形成外科医の仕事です。
 地味で根気がいる仕事です。

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