昔の記憶
失業の経験
医者は失業しない。
大学教授には、失職の心配がない。
ふつうの人は、
こう思います。
ふつうの人であった私も、
自分が失業するまでは、
職を失うと思ったことは…
一度もありませんでした。
大学の医局に在籍していれば…
待遇に文句を言わなければ…
職を失うことはありませんでした。
■ ■
病院はつぶれない
銀行はつぶれない
と思われていた時代もありました。
今は…
病院も銀行も…
つぶれる時代になりました。
真面目で…
優秀な…
大学教授でも、
失職の危機にさらされることがあります。
■ ■
私は自分が職を失った時に、
もがき苦しみました。
職を失って、
『明日からどうしよう…』
と思ったのも事実です。
それ以上に、
裏切られたという思いと…
気付かなかった自分は…
何て愚(おろ)かだったのか?
と自分が嫌になりました。
忠告してくださった先輩もいたのに…
もっと注意すべきだった…
■ ■
幸いなことに、
私はたくさんの人に支援していただき、
再起することができました。
高須克弥先生からいただいたコメントです。
そうだよ
逆境の時ほど本当の友人が発見できるんだ。
落ち目の時は友人を見極めるチャンス。
よかったと思いなさいね。
ほんとうに…
ありがたいお言葉です。
■ ■
私が職を失ってから、
7年になりました。
その間に、
中央クリニック札幌院院長→
札幌美容形成外科の開業→
医療法人の設立と
あっと言う間の7年でした。
48歳→55歳になりました。
苦しい時代でしたが、
失業の経験は、
自分にとってよかったと思います。
■ ■
人生には、
さまざまな失敗があります。
信じてはいけない人に騙(だま)されたのは…
自分に…
見分ける眼力がなかったからです。
医師とか弁護士は、
困っている人を助ける職業です。
自分に困った経験がなければ、
親身になって、
相手の立場にたって、
助けてあげることはできません。
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自分が職を失って、
唯一、気になっているのが…
私を頼ってくださっていた、
患者さんのことです。
術後の経過が良い方ばかりではありませんでした。
何度も手術をやり直した方のことが、
今でも気がかりです。
申し訳ないことをしました。
ごめんなさい…
と謝りたいです。
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今は、
小さなクリニックの院長です。
私を信頼してくださる、
患者さんや従業員を、
裏切らないように…
毎日、精一杯がんばっています。
雇用を守って、
従業員を失業させないように、
がんばっています。