昔の記憶
私の顔を治してください
市立札幌病院に勤務していた、
ある時期のことでした。
救急部に一人の女性が搬送されてきました。
現在、北海道大学救急医学講座教授の
丸藤哲(がんどうさとし)先生が、
手術中の私のところへ、
わざわざいらしてくださいました。
同じ病院内で、
救急の先生が担当医のところへいらっしゃるのは、
よほどのことです。
■ ■
本間先生、
申し訳ありませんが、
この手術が終わったら、
大至急、救急ホールにいらしていただけませんか?
ふだんは冷静な丸藤先生が、
その時は、少し違って見えました。
幸い、短い手術だったので、
私は手術室があった2階から、
地下の救急ホールへ向かいました。
■ ■
救急ホールには、
一人の若い女性患者さんが横になっていました。
私が着くと…
その方は…
私の顔を治してください
と弱々しい声で言いました。
交通事故で、
搬送されてきた患者さんでした。
私はモデルをしています
キズを治すプロを自認していた私も、
驚くほどのケガでした。
■ ■
将来ある若い女性の顔のケガは、
形成外科医にとって大変難しい手術です。
少しでも後遺障害を少なく、
元通りに治してあげたい…。
という思いがあります。
ところが…
まったく元通りにすることは、
限りなく不可能に近いこともあります。
自分にはできないので…
ブラックジャックを呼びたいと思うこともあります。
■ ■
私の顔を治してください
と頼まれた私は、
丸藤先生に全身麻酔をかけていただき、
その日の予定をすべてキャンセルして、
6時間30分をかけて、
その女性の顔を手術しました。
今までの形成外科医人生の中で…
一番重症だった顔のケガでした。
幸い、
手術後の安静も守っていただき、
経過も順調でした。
■ ■
私がJA帯広厚生病院へ転勤してからも、
修正手術を受けに、
帯広までいらしてくださいました。
明るく…
前向きな性格の女性でした。
その後は、
年賀状のやりとり程度が続いていました。
私は元気で働いていることを知り、
安心していました。
■ ■
事故から約10年が経過していました。
私が、
信じてはいけない人に騙されて、
人生で一番落ち込んでいた時期に、
一枚の葉書をいただきました。
先生、結婚しました。
隣にいるのは…
毎日お見舞いに来てくれていた彼です。
一枚の葉書には、
結婚式の写真がついていました。
■ ■
その写真を見て…
私は、
落ち込んでいて…
一度は辞めようと思った形成外科医を
続けることにしました。
今、私が形成外科医を続けているのは、
この女性からの葉書のおかげです。
写真は本人の承諾を得て掲載していますが、
気の弱い人は
最後の写真を見ないでください。
結婚式の写真
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気の弱い人は
この先を
見ないでください!
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受傷時です