医療問題

重症熱傷の治療

 高度救命救急センターでも…
 重症熱傷の患者さんの救命は、
 とても大変なことです。
 一施設で…
 一度に治療できる…
 重症熱傷患者さんには限りがあります。
 無理をして収容しても…
 全員亡くなってしまいます。
      ■         ■
 全身の半分以上が焼けてしまった…
 重症熱傷は、
 外傷の中でも、
 もっとも侵襲(けがの程度)が大きいです。
 胃癌の手術や…
 脳腫瘍の手術よりも…
 ずっと身体の負担が大きいのが…
 重症熱傷です。
      ■         ■
 救命救急センターがなかった時代には、
 形成外科、
 外科、
 皮膚科などで…
 熱傷(やけど)の治療をしていました。
 私の幼馴染(おさななじみ)だった、
 お医者さんの子どもが、
 大ヤケド亡くなってしまいました
 当時は外科か皮膚科の先生が診たと思います。
      ■         ■
 私が医師になった30年前は、
 形成外科だけで熱傷の治療をしていました。
 はっきり言って…
 50%以上のⅢ度熱傷は、
 救命できませんでした。
 補液や呼吸管理という…
 全身管理ができなければ…
 重症熱傷は救命できません。
      ■         ■
 皮膚が焼けると…
 焼けたところが身体中の‘水’を奪います。
 火を消すために水をかけるようなものです。
 身体中の‘水’が足りなくなるので、
 たちまち血圧は下がり、
 おしっこが出なくなります。
 広島の原爆で亡くなった方が…
 『水をくれ…』と最期に言ったのは…
 このためです。
      ■         ■
 重症熱傷の患者さんが搬送されると、
 まず点滴を何本もします。
 ‘ルートを取る’と業界では呼びます。
 何リットルも点滴をするので、
 身体はパンパンになります。
 焼けた部分の皮膚は伸びないので、
 皮膚を切開して、
 血液循環を維持します。
 これを減張切開(げんちょうせっかい)といいます。
      ■         ■
 一般の外傷(腹部損傷など)に比べて、
 何倍も人手がかかるのが…
 重症熱傷の治療です。
 救急のスタッフを総動員しても、
 一人の治療に何時間もかかります。
 その間に…
 救急隊や…
 一次二次の病院から、
 受入要請の依頼が入ります。
 熱傷患者さんを治療中だからといって…
 他の外傷を断ることもできません。
      ■         ■
 熱傷治療には、
 熱傷用ベッドなど…
 高価な特殊設備も必要です。
 設備面でも…
 重症熱傷の治療ができる施設は
 極めて限られています。
 札幌医大高度救命救急センターには、
 設備も優秀な先生も、
 優秀な看護師さんも揃っています。
 2年間もの受入中止で…
 貴重な医療資源が使えないのは、
 とても残念なことです。

“重症熱傷の治療”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ