医学講座
形成外科の進歩⑧【ボトックス注射】
毛生え薬に匹敵するくらい、
進歩したと思うのは、
ボトックス注射です。
私がはじめてボトックスを知ったのは、
市立札幌病院に勤務していた20年前です。
外傷で斜視になった患者さんを、
札幌医大眼科の大庭正裕先生に、
みごとに治していただきました。
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ボトックスの効果は、
約6ヵ月と言われていますが…
その斜視が治った患者さんは、
20年後も治っています。
外傷性外転神経麻痺という、
ふつうの斜視とは違う病態だから…?
理由は私にもわかりません。
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美容外科ではじめてボトックスを知ったのは、
サフォクリニックの白壁征夫先生です。
ご自身の額に、
ボトックスを打って見せてくださいました。
ボトックスは、
上手に使うと…
素晴らしい効果が得られる
魔法の薬です。
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シワの治療にも使いますが、
脇の汗を止める注射として、
抜群の効果があります。
欠点は、
保険が効かないこと、
効果の持続が3~6ヵ月と、
限られていることです。
マンガでも解説しています。
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シワの治療も、
多汗症の治療も、
神経終末という、
神経の信号が出る部位にボトックスが作用して、
筋肉の収縮を止めたり、
汗腺から汗が出るのを止めたりします。
30年前には考えられませんでした。
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ボトックスは使い方を間違うと、
こわい副作用もあります。
日本では聞いたことがありませんが、
米国では死者が出たという報道もあります。
また中国製ボトックスなど、
いろいろな製剤が出ています。
ボトックスという名前は、
米国アラガン社の商標です。
アラガン社以外の製品は正確には、
A型ボツリヌス毒素と呼びます。
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札幌美容形成外科では、
Dysport(ディスポート)という、
英国イプセン社製の製品を使用しています。
アラガン社の製品ではありませんが、
有効性と安全性が確かな製品です。
クール便で輸入しています。
最近では、
アレルギー性鼻炎にも、
ボトックスが使われるようです。
正しく使えば魔法の薬です。