医学講座
形成外科の進歩⑩【縫合法】
私は医学生だった時に、
顔のキズを…
少しでも目立たなく治したいと思い、
図書館で大森清一先生の本を見つけて、
形成外科を知りました。
それから30年以上が経ちました。
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大森清一先生の弟子が、
私の恩師である、
大浦武彦先生です。
形成外科医になった理由に書きました。
人と人の出会いというのは偶然ですが
人生に大きな影響を与えます。
私は幸運にも
とても素晴らしい指導者に恵まれました。
■ ■
私の縫合法の基礎は、
大浦武彦先生と、
北大形成外科の先輩です。
形成外科は進歩しましたが、
切って
縫う
という基本的手技は、
30年前の技術そのものです。
■ ■
世の中には、
ダビンチという手術ロボットが出ました。
回転ずしでは、
すしロボットもあるようです。
どんなに技術が進歩しても、
ロボットが握ったすしは、
職人さんが握ってくれたすしにはかないません。
■ ■
形成外科の縫合法も、
30年やってもまだまだと感じます。
同じ部位でも、
年齢によって、
人種によって、
人によって、
皮膚が違います。
手術ロボットが進化しても、
形成外科の手術は…
ロボットにはできません。
■ ■
私はよく目の手術をしますが、
同じように手術をしても、
左右差が出ることがあります。
片方の目だけ、
キズが目立つことがあります。
もともと左右差がある方、
右だけ眉を上げたりする癖(くせ)、
右だけ目をこする癖(くせ)、
左右差が出る原因になります。
■ ■
形成外科が進歩して、
縫合に使う糸などの材料が若干変わりました。
でも、
皮膚を縫うナイロン糸は、
極細の黒で、
30年前と同じです。
医療工学が進歩して、
手術ロボットが優秀になっても、
私たち形成外科医は失業しません。
それだけ奥深い技術です。