医学講座
痩身目的の注射で広範囲壊死を生じた1例
昨日の院長日記でご紹介した、
形成外科10月号は札幌美容形成外科の職員にも見せています。
私が日頃から、
無理な手術で悲惨な例をよく見せているので、
多少のことでは驚きません。
札幌美容形成外科の職員は患者さんからの問い合わせにも、
適切に
親切に
対応してくれます。
■ ■
形成外科10月号を見た女性職員が、
一番驚いていたのが、
日本大学形成外科の、
樫村勉先生と仲沢弘明先生の
痩身を目的とした薬剤の皮下注入により腹部の広範囲壊死を生じた1例でした。
私が見ても、
まるで壊死性筋膜炎の後か、
蜂窩織炎の後のようです。
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この患者さんは、
もし日本大学形成外科に入院して手術をしていなければ、
亡くなっていた可能性が高いと思います。
梅田整先生が報告された、
脂肪吸引後の感染症例に似ています。
日本大学形成外科の仲沢弘明教授は、
日本熱傷学会理事長です。
適切な判断で救命できました。
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論文の内容です。
患者さんは痩身目的で、
非医療施設で腹部皮下に脂肪融解剤とされる薬剤を注入されました。
注入直後から激しい疼痛を訴え、日本大学救命救急センターに救急搬送されました。
入院後に全身麻酔下に皮膚が壊死になった部分を切除しました。
その後に腎不全となりましたが救命されました。
10日目に壊死の範囲が拡大したためさらに切除を追加しました。
約1ヵ月後に植皮術を実施しましたが大きな傷が残りました。
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施術した者は逃走し、
警視庁科学捜査研究所と日本大学病理部で検査をした結果、
注入された薬剤は強アルカリ性であることが判明しました。
アルカリによる損傷は重症になります。
私自身も熱傷深度の判定を誤りました。
患者さんには申し訳ないと今でも思っています。
日本大学形成外科の患者さんも、
入院直後に壊死組織を切除していなければ、
亡くなっていた可能性があります。
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搬送された救命救急センターに、
仲沢先生がいらっしゃらなかったら、
この患者さんは亡くなっていたと思います。
注射だけでやせるというのは、
確かに魅力的な言葉です。
でもわけのわからないものを注射されると、
生命にかかわります。
美容外科での施術ではありませんが、
簡単にやせられるというの100%うそです。