医学講座
悲惨な鼻の後遺症
昨日2015年10月1日、年間購読している、
形成外科という専門誌の10月号が届きました。
先月号には、
レディエッセで失明した患者さんが掲載されていました。
この論文を契機に、
札幌美容形成外科ではレディエッセを中止しました。
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今月号の論文は、
下顎骨骨切術(いわゆるエラ削り)による後遺症、
オトガイ形成術による後遺症、
鼻の手術による後遺症が掲載されています。
鼻の患者さんは、
23歳と27歳の女性です。
それぞれ別のクリニックです。
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美容外科に従事する先生には、
なんちゃっての先生も含めて、
是非読んでいただきたい論文です。
これから美容外科に転科を考えている先生にも、
こんな合併症があることを知ってほしいです。
そして患者さんや一般国民にも、
こんな後遺障害で苦しんでいる人がいることを知って欲しいです。
消費者庁や国民生活センターにも動いていただき、
広くマスコミで取り上げていただきたいです。
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形成外科 第58巻第10号(2015年10月号)
特集:美容医療の合併症から学ぶ2─骨切り他編─
企画にあたって 細川 亙 1077
下顎角部骨切除術で関節突起も一塊として摘出された1例 細川 亙 1079
下顎角形成術後の合併症の1例 高橋範夫ほか 1082
過剰なおとがい骨切除術後にインプラント挿入を受けた1例 田口久雄ほか 1086
美容手術後の外鼻変形の1例 井上義一ほか 1090
治療に難渋した美容手術後外鼻変形の1例 細川 亙 1094
正常な未成年者に対して行われた植毛術により禿げ様外貌に陥った1例 岡崎 睦 1098
包茎専門美容外科クリニックにおける術後尿道欠損の1例 渡辺頼勝ほか 1102
痩身を目的とした薬剤の皮下注入により腹部の広範囲壊死を生じた1例 樫村 勉ほか 1107
下腿脂肪吸引術後に激痛と皮膚潰瘍を生じた1例 河内 司ほか 1111
腰腹部の脂肪吸引術後に広範囲に難治性の多発膿瘍を生じた1例 森 秀樹ほか 1115
乳房増大を目的とした脂肪吸引術後に採取部に皮膚壊死を来たした1例
(以上、克誠堂出版HPより引用)
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大阪大学の細川亙(ほそかわこう)先生は日本形成外科学会理事長です。
この特集号には、
細川先生ご自身が2編の論文を書かれています。
形成外科学会理事長として、
細川先生の強いお気持ちが伝わります。
細川先生のお言葉です。
美容医療の合併症から学ぶ②
―骨切り他編―
企画にあたって
学術雑誌に論文を投稿する目的の1つは、個人的に経験した極めてまれな事象を読者に知ってもらい、多くの人が共有する知識と経験にする、ということです。
いわゆるまれな病気の1例報告などはこれに当たり、学術雑誌の重要な使命です。
永い間形成外科の診療をしておりますと、美容医療などで生じたまれな合併症を目撃する経験が幾度かあります。患者さん個人にはお気の毒なことですが、そのような貴重な事例は発表されて衆知され、その後の予防などに活用されなくてはなりません。しかし、美容医療での合併症を目撃しても、前医での治療前や治療中の情報が不十分であることが多く、論文として雑誌に症例報告することを断念せざるを得ない場合がほとんどなのではないかと推測します。今回の特集では、通常の論文で要求するような術前・術中に関する詳細な記載は必ずしも求めず、論文作成のハードルを極力低くすることで、貴重でありながら日の目を見ずそのまま闇に葬られてしまいそうな事例を拾い上げて光を当てようとしました。
このような企画に対して、さまざまな美容医療合併症例の投稿がありました。
前号にはそのうちフィラーの注入(脂肪注入を合む)に関する合併症のみを掲載致しましたが、本号ではフィラー注入を除く各種の合併症をまとめました。顔面骨切りをはじめとする各種の美容医療の施術により、思いもよらないような合併症を生じている現実を知っていただき、重篤な合併症の回避に留意していただくための警鐘になればと思います。
大阪大学形成外科 細川 亙