医学講座
これからの乙武さん_小説家なら不幸ではない
平成28年4月8日(金)朝日新聞朝刊の記事です。
(寂聴_残された日々:11)
これからの乙武さん_小説家なら不幸ではない
今から17年前の初夏、乙武洋匡さんが後にも先にも一度だけ、京都の私の住み家、寂庵(じゃくあん)へ訪れてくれた。たしか乙武さん、23歳の時だった。早稲田の学生で、すでに「五体不満足」という本を出版して、本は売れに売れ、有名人になっていた。
その乙武さんと私との対談を、雑誌「現代」が企画した。
約束の時間通り、現代の長身の編集者が軽々、乙武さんを胸に抱き、門から入ってきた。玄関に入るなり、私の足元へ、軽い荷物を置くように、抱いてきた乙武さんをひょいと置いた。乙武さんは、その瞬間、私の目には、一個のぬいぐるみのように見えた。そのショックで、私はうろたえてしまった。本も読み、写真も見てはいたが、実際に両手、両足のないその人を目撃した瞬間の驚きは、予期以上のものであった。この体で生まれ、早稲田の学生になって、ベストセラーの本を出すまでの歳月、人のしないどれだけの苦労をしてきたかと思うだけで胸がいっぱいになった。
対談が始まったら、乙武さんは、すがすがしい美形の顔を真っすぐあげ、私の顔を正面から見て、その清潔で深い瞳で私の目を見つめ、質問に即座に期待以上の答えをくれた。
「障害は不便である。しかし、不幸ではない」
と、「五体不満足」の本に書かれたヘレン・ケラーの言葉を、彼の口から、きっぱりと、じかに聞くと、その言葉の重みが、格別の感動を呼びおこすのであった。彼以上の苦しみに耐えて、ここまで爽やかな人間に育てあげた母なる人の、精神の強さと聡明(そうめい)さに、改めて感動した。
*
会ったのはその時だけだったが、その後の乙武さんの動きや噂(うわさ)を他人事(ひとごと)ならず注意していた。結婚したと聞いた時も、教育者になったと聞いた時も、子供が次々生まれたというニュースも、自分の肉親の慶事のように嬉(うれ)しかった。
ずっと陰ながら好意を抱きつづけ、その幸福を祈っていた乙武さんが、突然、不倫の不行跡をあばかれ、週刊誌に書きたてられ、マスコミに非難されている。
まさか夏の参院選に向け、自民党で立候補するなど思いもかけなかったが、さすがにそれは取りやめた。
これから生きのびるには、小説家になるしかないのでは。小説家は不倫をしようが、色好みの札つきになろうが、その恥を書きちらして金を稼いでもどこからも文句は言われないよ。
◆作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんによるエッセーです。原則、毎月第2金曜日に掲載します。
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うちの奥さんがTVの報道を見て怒っていました。
がっかりした、
残念だ、
選挙はダメだわ。
女の人は投票しないわ。
お怒りはごもっともです。
知り合いの女性も、
がっかりしたと話していました。
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私は2012年9月に開催された、
第4回世界創傷治癒学会連合会議で、
乙武洋匡(おとたけひろただ)さんの特別講演をお聴きしました。
感動しました。
とてもよいお話しでした。
今回の報道を残念に思っています。
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こんなことを院長日記に書くと、
さくらんぼさんからも
なっちゅんさんからも
お叱りを受けることは覚悟の上です。
男性としての正直な感想は、
五体不満足でも
あっちの方は不満足じゃなかったんだ。
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この報道を見て、
俺でもできるかも?
俺でも大丈夫かも?という、
身体にハンディを持った男性がいると思います。
女性にはわからないと思います。
不倫は悪いことです。
奥さんや子供さんがいるのにダメです。
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米国大統領だって、
不倫で大きく報道されたことがあります。
女性の生理と同じで、
男性には精液がたまってきます。
たまってくると、
放出したくなります。
放出の仕方を誤ると、
こんなことになります。
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私は風俗には行きません。
でも世の中には風俗が好きな男もいます。
風俗で働く女性もいます。
風俗には、
身体にハンディを持った男性も行くそうです。
そんな男性にも、
サービスを提供してくれるそうです。
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私の札幌医大の先輩、
故_渡辺淳一先生は
不倫を題材にした小説も、
たくさんの女性とお付き合いをしたことも、
小説に書かれました。
乙武さんには、
瀬戸内寂聴さんのお言葉のように、
また活躍していただきたいと願っています。
青少年に勇気と夢を与えるような仕事をしてほしいです。
ぜひ名誉挽回をお願いします。