医学講座
巨大色素性母斑の治療【2016福岡】
3日間の日本形成外科学会が終わりました。
今日は福岡→札幌への移動日です。
昨夜も緊急地震警報がありました。
福岡も大きく揺れました。
また熊本で被害が出たようです。
これ以上、被害が大きくならないことを祈っています。
被災された方に心からお見舞いを申し上げます。
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第59回日本形成外科学会では、
21のシンポジウムがありました。
まずご紹介したいのが、
【第1日目】4月13日(水)10:30~ 12:00第1会場 3F(メインホール)
シンポジウム2
巨大色素性母斑の治療:多様な選択肢と実際
司会:武田 啓(北里大学医学部形成外科・美容外科学)
舟山 恵美(北海道大学大学院医学研究科機能再生医学講座形成外科学分野)
SY2-1 多様の選択肢 そしてcryosurgery(凍結外科療法)
冨士森良輔(医療法人冨士森形成外科医院)
SY2-2 巨大色素性母斑の治療
貴志 和生(慶應義塾大学医学部形成外科学教室)
SY2-3 自家培養表皮製品ジェイスR の先天性巨大色素性母斑への適応拡大を目的とした医師主導型治験の成績
金子 剛(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
SY2-4 培養表皮を用いた巨大色素性母斑の治療
相原 正記(聖マリアンナ医科大学医学部形成外科学講座)
SY2-5 巨大色素性母斑に対する皮膚剥削術とレーザー照射の検討
茂利 真美(愛知医科大学形成外科)
SY2-6 先天性巨大色素性母斑に対する色素レーザーおよびQスイッチルビーレーザーを用いた複合レーザー治療の有用性
舟山 恵美(北海道大学大学院医学研究科機能再生医学講座形成外科学分野)
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京都の冨士森先生が抄録に書かれています。
巨大色素性母斑は大変な疾患である。まさに津波のようでその治療は困難を極める。
演者は長年この疾患と立ち向かってきた。そして一応納得のできる結果も得たが不満も多い。まず植皮術。広範囲なので遊離植皮が適応となるが顔面に限られる。そして医師と患者の協力と辛抱の成果が問われる。皮膚剥削術、皮膚剥離術はよほどの適応でないと患者を悲惨に導くだけに終わる。縫縮術はかなり効果的であるが、以後の治療方針も定まらず、単に皮膚を傷つけただけだとすれば非難は免れないであろう。残念ながらレーザーは治癒につながらない。それを知っていつまでも照射を続けたとすれば信頼できる医者とは言えないのではないか。結局今学会では培養皮膚移植と凍結外科療法との対決と思っている。
現在の培養皮膚による巨大色素性母斑の治療の結果はどうなっているのか、楽しみと期待に胸が膨らむ。演者は長年凍結療法を行っている。表皮を傷つけないことを最大の目標としているが白斑の発生と後年の再発をいまだ解決できないでいる。多くの症例を報告したい。
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今年の日本形成外科学会でも、
京都の冨士森先生にたくさん教えていただきました。
シンポジウムの後で冨士森先生とお話しをしました。
残念なことですが2016年4月の時点では、
培養表皮移植で巨大色素性母斑の治療は、
満足な結果を得られていません。
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冨士森先生は、
2歳半までは凍結外科療法をすすめています。
確かに効果があります。
冨士森先生が抄録に書かれているように、
一応納得のできる結果も得たが不満も多い
これも事実です。
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以前に私の院長日記でご紹介した、
北大形成外科のレーザー治療があります。
確かに効果があります。
しかし限界があることを、
今年のシンポジウムで知りました。
司会と演者をなさった舟山恵美先生によると、
小さいうちに、
体幹部の巨大色素性母斑に照射した場合は効きますが、
大人になってからは限界があります。
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一番効いてほしいと思う、
顔面の大きな色素性母斑は、
眼瞼部にある黒の濃い色素性母斑には効いていましたが、
薄い黒の色素性母斑には効いていませんでした。
頬部の色素性母斑にも効いていませんでした。
今日の院長日記で訂正させていただきます。
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身体の半分以上が黒い巨大色素性母斑をどう治すのか?
冨士森先生が抄録に書かれたように、
まさに津波のようでその治療は困難を極めるのが現実です。
自分の身内が巨大色素性母斑だったらどうするか?
とても悩むところです。
私ならまず北大式のレーザー治療をします。
皮膚移植をできる部位や、
組織拡張器を使える部位だったら
手術を考えます。
形成外科には、
まだまだ解決しなければならない疾患がたくさんあります。
医師と患者の協力と辛抱の成果が出る日が来ることを期待しています。