医学講座
美容外科合併症と保険診療2023
今日は2023年5月1日(月)です。
札幌もようやくあたたかくなりました。
サクラは散っていますが、
大通公園のチューリップが咲きはじめています。
花壇にお花が植えられて、
とてもきれいになってきています。
GWにたくさんの方がいらっしゃると思います。
■ ■
美容外科合併症は誰が診ていくのか?の続きです。
美容外科で注入を受けて失明、
アクアフィリングで感染しICUに入院、
不幸な事故が起きています。
同業者としてとても残念なことです。
■ ■
失明の事故や、
重篤な感染が起きると、
患者さんは救急搬送されることが多いです。
救命救急センターの先生は、
豊胸や注入について詳しくないので、
だいたい形成外科医が救急に呼ばれます。
すぐに緊急の処置が必要なことも多いです。
■ ■
たとえば眼動脈に注入剤が入ってしまった時、
眼の血管をよく知っているのは眼科医です。
眼科の先生を呼んで、
『動脈に入っている注入剤を溶解したいのですが、、、』
…と相談しても、
健康保険が適応にならない自費の患者さんだったら、
眼科医が処置をしてくれないこともあります。
■ ■
理由は私たちが加入している医師賠償責任保険です。
美容目的の手術や治療には、
ふつうの医師賠償責任保険は使えません。
病院で加入している保険も同じです。
もし失明の治療中にさらに悪化しても、
眼科医は責任を取れないですし、
病院も責任を取ってくれません。
■ ■
最悪の場合は、
事故を起こした美容外科が、
治療法が悪かったから失明が悪化したと、
責任を眼科になすりつける可能性もあります。
私たち医師には応召義務おうしょうぎむがあります。
『先生治してください』と言われたら、
保険がなくてもお金がなくても、
診なくていけないという決まりです。
美容外科の事故や合併症はほんとうに大変な問題です。
“美容外科合併症と保険診療2023”へのコメント
コメントをどうぞ
応召義務、ルビを
ありがとうございました。
恥ずかしながら知りませんでした。
お医者様は大変ですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。美容外科で起きたトラブルで救急搬送されると、形成外科が呼ばれます。形成外科医は何とかして助けてあげたいと思います。その時に賠償責任保険でカバーされないことが明らかだと、私でも躊躇すると思います。困ったことです。
そうなったら誰も診てくれなくて死んでしまいます。
恐くて保険の効かない手術はしたくなくなります。
応召義務初めて聞きました。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。血管閉塞で失明しそうになって眼科の先生に血管の処置を断られた例はありました。もっと悪化したら困るし責任を持てないという理由でした。命にかかわるような感染症の治療は救命救急センターでしてもらいます。健康保険が使えないと莫大な金額になります。
今日は平日ですが札幌駅は
人が多かったです。大通公園も賑わって
いるのかと想像しました。
眼の処置が必要なのに
眼科の先生に診てもらえないこと
があるのですね。
美容外科の事故や合併症については、
先生に教えていただくまで
全く知りませんでした。
先生のおっしゃるように大変な問題
だと思うので対策を考えてほしいと
思います。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。厚生労働省は美容外科の合併症に健康保険を使えないと指導しています。海外で美容外科手術を受けた人などが困ります。美容外科が倒産して無くなっていることもあります。患者さんは『後遺障害が残る』と知っていれば施術を受けなかったと思います。救急搬送された患者さんを治療する側にとっても大変な問題です。