医療問題
酒気帯び手術
平成20年1月11日、朝日新聞朝刊の社説に、医療事故調査委員会のことが掲載されていました。
最後の方に、‘もちろん、酒を飲んで手術をしたり、カルテを改ざんしたりするのは論外だ。’と書かれていました。
この‘酒を飲んで手術’が気になりました。
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医師は急患の診察を求められた際に、‘酒を飲んでいる’ことを理由に断ることができます。
誰が考えても、‘正当な理由’です。
私は、25年以上医師をしていますが、緊急のために‘酒を飲んだ先生’が手術をしたことを何度か知っています。
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私自身は酒は飲めませんし、飲んでもごく少量です。
アルコールに弱い体質だと思います。
医師の中には、大酒飲みやアルコール依存症?と思われる方もいらっしゃいます。
朝、手術室で一緒に手術をはじめる時に、手術用マスク越しに、アルコールの臭いがした‘先生’もいました。
問いただすと、朝方まで飲んでいて、数時間休んで、そのまま病院へ出てきたということでした。
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病院では、航空会社やタクシー会社のような‘点呼’はありません。
個々人の自覚に任されています。
酒臭い息をして、外来診療をすると、すぐにバレますが、手術室ではわかりません。
チェックする機構も機能もありません。
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手術の前日に、朝方まで酒を飲んでいる先生はもちろん論外です。
酒臭い息をして、手術室に入るなんて許せません。
ただ、医師法には、呼気中・血液中のアルコール濃度が○%だったら診療をしてはいけないという規定はありません。
自動車の運転と違って、酒気帯びで手術をしても、診療をしても、罰則規定はないはずです。
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問題なのは、緊急手術で呼び出しを受けた時です。
病院も、ふつうの会社と同じように、歓送迎会や忘年会をします。
特に、忘年会は手術部、各病棟、医局、と所属部単位で行われます。
年に一度の‘慰労会’です。
楽しく、にぎやかな忘年会が多いです。
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問題なのは、手術部の忘年会や救命救急センターの忘年会です。
当直要員は、もちろん病院で通常通り勤務しています。
手術部の当直で、準夜・深夜を合わせて看護師が5~6人。
救命救急センターの医師が、多くても10人程度。
その日の当番は、病院で仕事です。
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忘年会の夜は、大事故が起こらないようにと祈って参加します。
ところが、何年かに一度は、その日に限って大事故が起こります。
病院から緊急の呼び出しを受けると、
忘年会の2次会でカラオケにいても…
宴会の最中で、ちょうど盛り上がったところでも…
ただちに病院へ直行です。
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大事故で大ケガの場合は、たとえ酒を飲んで‘酒気帯び’でも、緊急手術をしなければ、生命の危険がある場合があります。
手術をできる先生が、一人しかいなくて、その先生が‘酒気帯び’だったら…
もちろん、ベロベロに酔っ払って、手術ができない状況だったら別です。
ビールを1~2杯飲んだ程度の、‘酒気帯び’だったどうでしょうか?
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私が患者だったら、たとえ酒気帯びの先生でも
『先生、お願いします、助けてください』と言います。
僻地や、専門医が一人しかいないような地域でしたら、
現実には、ちょっと位の‘酒気帯び’でも、診療を引き受けている先生はいらっしゃると思います。
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医師だって人間です。
お酒やワインが好きな先生もたくさんいます。
お酒を飲んで、気分よく休んでいる時に、呼び出されて緊急手術なんかしたくはありません。
夜間に、呼び出されて、‘酒気帯び’で緊急手術を引き受ける先生は、仕方がなく引き受けているだけです。
航空機のパイロットのように、乗務○時間前から、一切飲酒は厳禁。
違反した場合は、医業停止。
なんて規定を作ったら、間違いなく、日本の僻地医療や救急医療は崩壊します。