医療問題

ボトックスで死者16人

 平成20年1月27日の北海道新聞朝刊に、
 毒素の美容注射で死者
 米消費者団体が警告
 という記事が掲載されていました。
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 この記事は、共同通信が配信した記事です。
 同じ内容の記事をネットで検索したところ、スポーツニッポンの記事が詳しかったので、以下に引用します。
 スポニチの記事は、ロイター通信社の配信記事です。
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 米国の有力な消費者団体「パブリック・シティズン」は1月24日、
 顔のしわを取る美容外科や筋肉を弛緩(しかん)させる治療で使うボツリヌス菌毒素の注射薬で、
 16人の死者が出るなど重大な副作用が発生しているとして、
 医師や患者に警告を出すよう米食品医薬品局(FDA)に要請したと発表した。
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 対象の薬は「ボトックス」と「マイオブロック」で、
 特にボトックスは日本でも美容外科でよく使われている。
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 同団体によると、これらの薬のメーカーがFDAに自主的に提出した報告書から、
 米国内で1997年11月から2006年末までに658件の副作用例があり、
 うち180件は、ものがのみ込みにくくなる障害や肺炎などの呼吸器関係だった。
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 87人が入院し、
 注射後に呼吸器の障害で死亡したケースはボトックスで12人、
 マイオブロックで4人。
 ボトックスの少なくとも1件は美容目的だった。
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 ボトックスの製造元の米アラガン社は
「患者自身の神経的な病状やリスク要因が重大な結果をもたらすことがあり、
 必ずしもボトックスと因果関係があるわけではない。
 過去17年間で重大な副作用は極めてまれだ」
 とコメントしている。
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 ロイター通信によると、
 FDAは「要請の内容を検討してからコメントする」としている。
 (以上、スポーツニッポンHPから引用)
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 ボトックスはHPにも詳しく記載してあるように、
 正しい使い方をする限り、安全で有用な薬剤です。
 ただ、どんなに優れた薬でも、使い方を誤ると重大な副作用が起こります。
 この新聞記事に掲載された内容は、誤りではありませんが、
 いたずらに不安を煽る(アオル)書き方はよくないと思います。
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 札幌美容形成外科のHPにも記載してありますが、
 この薬はもともと斜視の治療に用いられました。
 その後、眼瞼痙攣、片側顔面神経麻痺などの治療に使われ、
 美容外科で使われるようになったのは、ずっと後です。
 日本で最初に使って紹介してくださったのは、
 サフォクリニックの白壁征夫先生だったと記憶しています。
 白壁先生が、ご自身の額に注射して、学会の時に見せてくださいました。
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 米国では、日本よりずっと多くのボトックスが使われています。
 PRSという、米国形成外科学会雑誌に特集号が出たくらいです。
 数多く使われるようになると、不慣れな医師が使って、事故も起こるようになります。
 米国では、歯科医師が‘歯軋り(ハギシリ)’の治療に使うこともあります。
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 死亡事故の原因となった、
 ・ものがのみ込みにくくなる障害
 ・肺炎
 ・呼吸器の障害による死亡
 は、いずれもボトックスを過剰に注射して、
 呼吸筋が麻痺したか
 血管内に注射してしまった事故だと、推測されます。
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 もし、血管内に入って、呼吸障害を起こした時は、
 麻酔器や人工呼吸器で酸素を投与すればよいことです。
 決して、死ぬようなことは起こりません。
 薬の作用機序から考えても、
 致死的な副作用は考えられません。
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 不慣れな医師が、安易に使うと事故になります。
 どんな薬剤にも副作用はあります。
 よく効く薬ほど、使い方が難しいのです。
 そこに、医師の腕が必要になります。
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 米国で大ヒットしたので、
 中国や韓国でも、コピー商品が出ています。
 中国製は、名前まで似ています…
 今回、報告された副作用は、コピー商品ではなく
 本家本元の正規品です。
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 正規品ですら、副作用が問題になっています。
 どんなハイテク航空機でも…
 パイロットが下手だと墜落します。
 乱気球に巻き込まれて、機体が傾いても
 未熟なパイロットは機体を立て直せません。
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 医療も同じです。
 経験を積んだ医師と…
 免許取立ての医師は違います。
 万一の事態に対処できるかどうかで、生命の危険が左右されます。
 安全性からいえば、ボトックスより脂肪吸引の方がずっと危険です。
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 形成外科の専門誌には、
 まだ、ボトックスで死者が出たことは掲載されていません。
 以前にも書いていますが、
 脂肪吸引による重大事故は、文献的にも紹介されています。
 私は、自分の身内にも、ボトックスを注射しています。
 自分の身内に使えないような薬剤は、‘絶対に’使いません。
 ボトックスは、正しく使えば、怖い薬剤ではありません。

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