医療問題
たらい回し診療の背景
週刊文春、1月31日号、病院情報ファイル2008の記事です。
取材・構成 恵原真知子さん
医療ユーザー編
たらい回し診療の背景
医師の過酷な勤務状況を改善し、
安全な医療を実現するために必要なこと。
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緊急治療を要する産科や外傷患者の救急受け入れがスムーズにいかず、手遅れになる。
この急患たらい回しの報道が目立つ。
保険証があればいつでもどこでもある程度の医療が受けられるはずだが、その常識はもはや幻想かもしれない。
背景には深刻な医師不足がある。
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本質的な問題として医師の過酷な勤務実態や責任に比して低い報酬、あるいは医学教育と医療の制度疲労などがあげられる。
医療が限界状況にきているのだ。
患者側では手出しできない問題ばかりだが、医師が働きやすい環境が担保されなければ、安全な医療など望めない。
医師の仕事や働き方は、ユーザーの問題でもあるはずだ。
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現在、多くの病院ではリスクマネジメント会議などで
「急患は、スタッフなどの受け入れ態勢が不十分な場合は、無理せずに断る」
旨を話し合っているという。
不十分な人員や機材のまま患者を受け入れ、不満足な結果になれば、訴えられ敗訴するからだ。
不眠不休で働こうと誠意を尽くそうと、ミスになる確率が高い以上、診療回避が当然の判断であり、合法的だ。
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しかも、例えば未熟児網膜症により失明した責任を問うた訴訟事例では、被告病院が、治療能力のある病院に転院させなかった落ち度を問われている。
医師の数が十分で、医療レベルが周知されているならそれも正しいだろう。
だが、そのような体制が不備な現状では、我々はいつ診療回避で医療難民になっても不思議はない。
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必要に応じて難なく治療を受け、治る病気を治したいという患者の願いは、医師の願いでもあるはずだ。
もはや他人任せにはしておけないという思いをもった医師たちが、その実現に向けて具体的に動き出した。
そのーつが勤務医を中心とする新しい団体(全国医師連盟設立準備委員会・黒川衛代表世話人)の設立だ。
新団体は、医療崩壊を食い止めるためにも医師の労働環境改善を図るべきとし、本年5~7月頃に千人規模での設立を目指す。
目下の会員数は約420人、平均年齢は約43歳と若い。
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医療の中核的担い手の出番
医師不足に対しては今年から医学部の定員が増えるが、産婦人科医や救急医療専門医が増える保証はない。
また、診療点数は一律で、医師の経験や専門医資格の有無や技術格差は反映されない。
少しずつ定額制が導入されているが、基本的には個々の医療行為ごとに点数が定められているので、検査や処方薬の多い医師のほうが稼ぐなどの矛盾も孕(ハラ)んでいる。
さらに定価になる診療点数が逆手に取られ、ペースメーカーや人工内耳など輸入医療機器は世界一高い価格で買わされている。
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「医師を悪者にして叩いても何も解決しない。
患者と医師は治療の共同体で、敵対関係になるほど不毛なことはない」
と『医療崩壊』の著者で虎の門病院泌尿器科の小松秀樹部長はいう。
そもそも患者を“様”づけし、
「医療も教育もサービス業の一種」
という考え方が示された(「サービス」の誤訳という説も)頃から、
患者側の勘違いも目立ってきた。
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・マナー違反、
・医療費踏み倒し、
・医療スタッフの使用人扱いや
・タクシー代わりの救急車利用
などの事態が、病院の混乱や疲弊に拍車をかけている。
まず一刻も早い医療の総点検が求められる時期なのだ。
医療費を抑制するべきかどうかなどもその後の問題だろう。
たらい回しや高齢者の切り捨てがなく、さらに医療スタッフが落ち着いて働ける医療環境が整うよう、
私たちも関連報道などに注目していこう。
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医療問題の理解に役立つホームページ
・現場からの医療改革推進協議会:
http://plaza.umin.ac.jp/~expres/genba/index.html
・周産期医療の崩壊をくい止める会:
http://perinate.umin.jp/
・ロハス・メディカルブログ:
http://www.lohasmedical.jp/blog/
・医学研究情報所のメールマガジン:
http://mric.tanaka.md
(以上、週刊文春より引用)
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国が進めた医療制度改革で、保険医療機関も保険医も疲弊しています。
私などが、とやかく言うと…
美容整形の医者が何を言ってるんだ!
と、お怒りの電話を受けそうです。
(美容外科医は、悪徳医師の代表のような印象があります。)
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北海道では、平成19年に
五輪橋内科病院/民事再生法 負債41億/H19年1月
北斗循環器病院/破産 負債16億/H19年4月
パーク歯科医院/医療法人白歯会/破産 負債1.7億/H19年5月
松井病院/医療法人円友会/破産 負債2.7億/H19年5月
三恵病院/医療法人社団和城会/民事再生法 負債13.3億/H19年9月
の医療機関が倒産しています。
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昔は、
お医者さん=お金持ち
というイメージがありました。
今は、
お医者さん=休みがない
いつも疲れている。
激務
過労死
などなど…
あまり良いイメージがありません。
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私は、長い間、勤務医をしていました。
総合病院の診療科長会議なんていうと…
格調高い、医学のお話しなんて、イメージをもちそうですが…
実際のところは、経営が苦しいので、皆様のご協力を…
てな、会議が大部分です。
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一般に、勤務医は、いくら働いて‘売上’が多くても、
お給料は上がりません。
せいぜい、増えるのが、時間外手当でした。
それも、出なくなっている病院が多いと聞いています。
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診療科によって、忙しい科と、比較的ヒマな科があります。
9:00~17:00までで、定時に終わる科の医師と
7:00~22:00まで、働いている医師の給与差が、ほとんどないことがあります。
若手の働き者の医師の給与が低く、
あまり働かないで、
‘医局で昼寝’なんかしている医長クラスの給与が高いこともあります。
そうすると、
『こんなところで働いていられるか!』
とキレる医師が出てきます。
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総合病院の院長職の仕事は、優秀でよく働くお医者さんを
いかに多く確保するかに翻弄されます。
医師の給与を、出来高払いにする必要はありませんが、
一生懸命働いた医師が
夢も希望もなくするような病院はダメです。
健康で文化的な生活を営む権利は
憲法で保障された、基本的人権です。
為政者は、この憲法の規定を守るような政策を立てる必要があります。
このままだと、本当に日本の医療は崩壊します。