医学講座

ワキガ手術-通院不要?-

 先日、次のようなお問い合わせをいただきました。
 他の美容外科では、ワキガ手術を、2回とか3回の通院でしている。
 お宅で、何回も通院させるのは、
 保険でやって、ちゃんとやっていないからじゃないの!?
 という、お電話でした。
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 何度も、私がHPや日記で繰り返しています。
 ワキガ手術は、ワキの皮膚を裏側から削る手術です。
 どんな方法で手術をしても、必ず皮膚は傷つきます。
 傷ついた皮膚を回復させるためには、軟膏を塗ったり、マッサージをしたりする必要があります。
 ちゃんと治療しているから、何回も通院するのです。
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 保険診療では、形成外科の再診(通院)は赤字です。
 現在の保険制度では、私と看護師が15分もかけて説明して、マッサージをしても軟膏代+490円(再診料別)しかいただけません。
 クリニックで処置をした際の、テープ・ガーゼなどの料金は、こちらで負担。
 本人には請求できません。
 処置だけの場合でしたら、本人負担額は500円程度です。
 テープやガーゼの価格を考えると赤字です。
 通院が多ければ多いほどクリニックの赤字は増えます。
 それでも、通院が必要ですとご説明し、赤字でも通院して処置をしているのは、
 キレイに治すために、処置が必要だからです。
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 先日いらした女性の方は、東京でワキガ手術を受けられました。
 通院は不要。
 その日に手術ができます。
 その言葉を信じて…
 手術を受けられました。
 結果は…
 ワキのキズが化膿して、キズがふさがらず、結局、大きなキズが残ってしまいました。
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 私が手術をしても、残念なことに、キズが残る方はいらっしゃいます。
 その方の体質により、盛り上がること(ケロイド)や、
 皮膚が一部死んで壊死(エシ)になってしまうことがあります。
 範囲が広い方は、ワキ中央部の血流が悪くなります。
 臭いのキツイ方、
 毛の濃い方は
 できる限り、汗腺や毛根をキレイに取り除きます。
 そうすると、皮膚血流が悪くなり、壊死(エシ)や色素沈着(クロズミ)のリスクが高くなります。
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 キズが目立ったり、黒くなったりした部位は軟膏を塗って治療します。
 回復までに一年以上かかることもあります。
 それだけ、ワキガ手術は大変なのです。
 総合病院の形成外科では、入院手術をすすめます。
 入院しても手術後はベッドの上で安静にしているだけです。
 自宅でもできることです。
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 手術後にキレイになるかどうかは、
 安静を保つこと
 ご自身のケアー
 タバコを吸わないこと
 によって、大きく違ってきます。
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 通院不要は、手術を受ける側にとって、 魅力的な言葉です。
 通院不要で、ワキガ手術をしたら…
 汗腺をしっかり取らなければ、キズの治りもよいので可能かもしれません。
 しかし、臭いを取るのが目的の手術です。
 汗腺の取り残しがあれば、必ず臭いが残ります。
 一般に『再発』といわれているヤツです。
 最初から取っていないのですから、『再発』ではなく『取り残し』です。
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 多くの美容外科では、ワキガ手術は‘簡単です’と説明しています。
 難しい手術で、キズが残る可能性があります…
 なんて書いたら、お客さんが逃げてしまいます。
 形成外科出身の美容外科医は悩みます。
 治療方針と‘営業方針’が合わないからです。
 私も、雇われ院長だった時に悩みました。
 当時も‘安静の必要性’を説明しました。
 ですから、手術件数は他院より少なかったかもしれません。
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 自分で開業してからは、保険診療以外ではワキガ手術をしておりません。
 お休みが取れない方には、手術をおすすめしません。
 赤字でも、
 お客さんが減っても、
 私は、キズをキレイに治すことを第一に考えています。
 残念なことに、これだけ、徹底しても、治りが悪い方がいらっしゃいます。
 キズが残った時は、キレイになるまで、責任を持って治療しています。
 それは、私が形成外科医だからです。

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