医療問題
薬の名前と医療事故
昨日はJAL機の事故について記載しました。
間違いやすい表現を使わないのが、
事故防止の第一歩です。
医療事故で多いものに、薬の取り違えがあります。
薬の名前を間違えて投与してしまう。
薬の名前を間違えて処方してしまう。
などです。
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医学部でも看護学部でも、薬についての講義があります。
薬学部も、もちろんあります。
ところが、大学や看護学校で教える名前は、
病院や診療所で、実際に使う薬の名前ではありません。
薬屋さんで売っている薬の名前も教えません。
国家試験も同じです。
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一般に薬屋さんで売っている薬。
病院で使う薬。
これらの名前は、すべて‘商品名’です。
同じ中味の薬でも、
売っている会社によって違います。
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ガスターという胃潰瘍の薬があります。
TVで宣伝していたので、有名になりました。
大学で教えるのはガスターという名前ではありません。
ファモチジンという、一般名を教えます。
ガスターは、現在のアステラス製薬㈱、
昔の山之内製薬㈱がつけた‘商品名’です。
現在は、後発医薬品を含めて、
たくさんのファモチジン製剤が市販されています。
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・ガモファー
・ガスイサン
・ガスセプト
・ガスドック
・ガスポート
・ケミガスチン
・ストマルコン
・ファモチジン
・プロゴーギュ
これらのすべてが同じ中味の『ガスター』です。
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中味が同じなのに、
会社によって価格(薬価)が2倍以上違います。
もちろん、一番高いのが、本家本元のガスターです。
私たち医師は、自分が使う薬を覚えるだけです。
薬剤師の先生は、すべては覚えられないにしても、
医師の何倍も何百倍も、
薬の名前を覚えなければなりません。
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学校を卒業して免許証を手にした医師、薬剤師、看護師は、
まず、これらの商品名を覚えることから始めます。
医師は、ともかくとして、看護師は大変です。
配属された病棟が、外科なら外科で一つの科だけなら、
使う薬が限られるので、まだ覚える薬の名前も少なくて済みます。
ところが、内科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科、放射線科など
たくさんの科の患者さんが、一つの病棟にいることがあります。
これを混合病棟といいます。
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そうすると、そこの看護師さんは、
すべての科の薬を覚える必要に迫られます。
新卒で何もできないナースが、
薬の名前や作用・副作用まで覚えるのは…
まず、不可能といってもいいくらいです。
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ナースだけではありません。
医師も、最初は何も知りません。
商品名を教えてくれるのは、
先輩や教科書のこともありますが…
先輩の医師は忙しいので、親切には教えてくれません。
親切に薬の名前を教えてくれるのは、
医薬品情報担当者と呼ばれる、
製薬メーカーの営業担当者です。
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営業担当は、
先生に自社製品の名前を覚えてもらうのが仕事です。
当然、親切丁寧に教えてくださいます。
私も製薬メーカーの方には、
数え切れないほどお世話になりました。
薬剤師の資格を持った方もたくさんいらっしゃいます。
自社製品以外のことも、たくさん教えていただきました。
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薬の名前には、似たような名前がたくさんあります。
サクシン(筋弛緩薬)とサクシゾン(ステロイド製剤)
アマリール(糖尿病用薬)とアルマール(不整脈用剤)
など、
間違うと、とんでもないことになるのに
似たような名前が、厚労省で認可されています。
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人間はミスを犯すものです。
医学部、薬学部、看護学部で
実際に使う薬品名も教える。
似たような名前で、
間違いやすい名前の薬は認可しない。
など…
医療事故が起こらないように、
対策を考えることが、国の仕事だと思います。
残念なことに、このような対策は取られていません。