医学講座
ヒルドイドローションの記事
平成29年10月30日、北海道新聞朝刊の記事です。
保湿用塗り薬の処方で女性急増_保険適用、「美肌」目的か
アトピー性皮膚炎などの治療に使われる保湿用塗り薬の医療機関での処方が急増していることが、健康保険組合連合会(健保連)の調査で分かった。雑誌やインターネットで「美肌になれる」などと紹介されて広まり、公的医療保険の適用により低料金で入手できることから、化粧品代わりに求める女性が増えたことが背景とみられる。
治療以外でのこうした処方は薬剤費を押し上げ、税金や保険料で賄う医療財政を圧迫。年間約93億円が無駄に支出されている可能性があり、厚生労働省は2018年4月の診療報酬改定で処方量の制限など対策を講じる方針を固めた。近く、中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)で議論を求める。
医師から処方される保湿薬の中で特に女性に人気なのが「ヒルドイド」。軟こうやクリーム、ローションタイプがあり、50グラム1185円だが、保険適用の場合、自己負担は最大でも3割の約360円で済む。
アトピー性皮膚炎の場合、かゆみ止めの薬などと一緒に処方されることが多いため、健保連はヒルドイド(後発医薬品を含む)が単独で処方された加入者のレセプト(診療報酬明細書)を集計。
2015年10月から2016年9月の1年間で20~59歳を対象にした処方は、男性が3万9312件だったのに対し、女性は16万4377件と4.2倍。前年同期と比べると、女性は17.3%増えており、男性の増加率7.9%を大幅に上回った。25~29歳では女性の増加件数が男性の33.9倍に上った。多くは病名が「皮膚の乾燥」のみで、健保連は「美容目的の使用が増えていると考えられる」と分析する。
●病院で美容クリーム/化粧品代を節約…
芸能人も絶賛罪悪感薄く
健康保険が適用される保温薬「ヒルドイド」は、雑誌やインターネット上で「究極の美容クリーム」などと呼ばれ、化粧品を購入する感覚で病院を訪れる女性が多い。公的医療保険制度の目的に反しており医療費の増大にもつながるが、利用者の罪悪感は薄い。
「病院で美容クリームをお得に手に入れた。まるで高級メーカーの商品みたいに肌のきめが整った」。川崎市の主婦(37)は約1年前、女性芸能人のプログにあったこんな記述でヒルドイドの存在を知った。
すぐに皮膚科で「ヒルドイドが欲しい」と頼んだところ、医師は症状を尋ねることもなく、軟こう5本分の処方箋を出してくれた。それまで5千円の市販の美容クリームを使っていたが、ヒルドイドなら1本数百円。「化粧品代を節約できた」と声を弾ませる。
女性向けのある美容雑誌に載ったヒルドイドの特集記事には「塗ってパックすると小じわが軽減する≒肌が生き返る」の文字が躍る。ネット上でも芸能人やモデルのブログなど、絶賛する内容が氾濫している。
大阪市の病院に勤務する・皮膚科医の元には、宣伝もしていないのにヒルドイドを求め、20~40代の女性が月10人ほど受診しに来る。中には「ローション5本とクリーム3箱」と処方量まで指定してくる人も。「患者のモラルが崩壊している。健康保険を使った美容目的での使用は非常に問題だと思う。ただ、『乾燥がひどい』と訴えられたら断れない」と嘆く。
札幌市の美容形成外科の院長は、手肌の乾燥にヒルドイドのローションを勧めるブログを10年前に執筆した。自院では美容目的の処方は一切していないが、院長が書いた「3万円の高級乳液より効果があると思う」という言葉がネット上で拡散され、何度も引用される事態となっている。
院長は「不適切だと言われても仕方ないが、当時は手先がひび割れで、出血して困っている人に勧める趣旨で書いた」と弁解する。
その上で「効果を実感したのは事実だが、肌に合わない人もいる」と注意を促した。
健保連の推計では、ヒルドイドを中心とした保湿薬の単独処方による薬剤費は、公的医療保険全体で年間約93億円。厚労省は1回の処方量の制限や、単独処方を保険適用外にすることなどを検討する。
ヒルドイドを販売する「マルホ」(大阪市)は、「患者の自己判断での使用は副作用のリスクもあり、控えてほしい」と訴えている。
(以上、北海道新聞より引用)
■ ■
2017年10月24日に共同通信社から電話取材がありました。
私の2007年2月12日の院長日記、
ヒルドイドローションが、
ネット上でヒットしているそうです。
マスコミからヒルドイドローションの取材は今回がはじめてです。
年間約93億円の医療費無駄遣い、
一回の処方量の制限
まじめに診療をしている皮膚科の先生にお詫びします。
■ ■
私がヒルドイドローションを紹介した目的は、
冬に乾燥肌でかゆくて困っている人のためです。
当院を受診した患者さんで、
かゆくて自分でひっかいて、
血が出ている人がいました。
そんな高齢者のために書いたつもりでした。
3万円の高級乳液より効果がある
…というのが一人歩きしているようです。
■ ■
ヒルドイドローションは医薬品です。
市販の保湿剤より効果があると(私は)思います。
注意しなくてはいけないのが、
肌に合わない人です。
お医者さんがしっかり診察をして、
適切に処方することを想定していました。
私が提案する【解決策】です。
ロキソニンSのように、
ヒルドイドローションにOTC薬を出すことです。
■ ■
ロキソニン
ガスター
リアップ
…などは、
第1類医薬品です。
今はネットでも買えるようです。
ヒルドイドローションを、
薬局で買えるようにすると、
病院に行く時間がない人も買えます。
アトピー性皮膚炎など、
ほんとうに必要な人には、
今まで通り処方できるようにしてほしいです。
“ヒルドイドローションの記事”へのコメント
コメントをどうぞ
私は円形脱毛症で山形大学の皮膚科に通院していました。注射と内服薬セファランチン末とエクラーローションです。ある時、下肢に湿疹ができて広がっていました。その時処方していただいたのがリドメックスコーワ軟膏0.3%とヒルドイドソフト軟膏0.3%の混合です。 そうした病気にも美容目的と言われると困ります。今も足首に毎日塗ってますが、美容目的や乾燥するからではありません。先生の言うとおり薬局でアレグラみたいに買えるようにして欲しいです。でもネットの力は怖いですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。2007年から何度かヒルドイドローションを取り上げました。私の院長日記が原因でアトピー性皮膚炎の患者さんにご迷惑がかかるのだけが心配です。申し訳ありません。保険診療で通院している患者さんに自費でヒルドイドローションだけを処方することはできません。OTC薬として販売されると欲しい人は購入することができます。
ヒルロイドローションの件は
他ネットでもかなり評判になってますね。
最近、やたらと目にしてました。
今夜のニュースでも取り上げられてました。
医療費の無駄遣いだと。
保険適応外になる可能性もあると。
そこでアトピー性皮膚炎の患者さんは
とても困るとインタビューに応じてました。
難しい問題になってきましたね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。私がブログで取り上げる前からネットで評判になっていました。オークションに出たこともあると聞きました。今はオークションはありませんが個人輸入で販売しているサイトもあります。アトピー性皮膚炎の患者さんや高齢者の皮膚の乾燥には保険適応で出せるようにしていただきたいです。
アトピーの人は本当に気の毒です。そのローションで救われるのなら、優先して使っていただきたい。安く美容品が手にはいるのは、魅力的ですが。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。私の院長日記が原因でアトピーの患者さんにご迷惑がかかり申し訳ありません。ご高齢の方にすすめたつもりだったのですが申し訳ございませんでした。
先発医薬品:0.3%ヒルドイドローション(23.7)、0.3%ヒルドイドソフト軟膏25g(23.7)
後発医薬品:0.3%ビーソフテンクリーム25g(9)ビーソフテンスプレー(9)、→0.3%ヘパリン類似物質外用スプレー100g(16.5)
()内は、1gあたりの薬価です。ヒルドイドソフト軟膏25gですと、25g×23.7円=592.5円です。3割負担で177.75円、1割負担59.25円
後発品ですとお安くなります。
美容目的で、51本大量処方ということが実際、あるのであれば確かに問題ではございます。
節度は必要なのかと思いました。本数制限(例えば1ヶ月3本~4本制限、あとは疾患的に重篤と認める場合など本数制限無し、通常は5本目以降は自費になる可能性もあるのかもしれません)
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。美容目的で大量に処方できるのが不思議です。北海道では社保でも国保でも返戻が来ます。症状を詳しく記載するように求められます。ご高齢で皮膚が乾燥して困っている人のために書いたのが原因でご迷惑をおかけして申し訳ありません。
厚生労働省や大手マスコミの方に医療費を抑制したいなら、門前薬局に制限をかける事です。
ヒルドイドソフトやヒルドイドローションの本数制限や自費にするより、解決策として、医薬分業を縮小ないし、廃止にすることです。
いまや、コンビニ(5.4万店)よりも多く、5.8万店舗に膨れあがり、大手チエーン店はバブルです。
『週刊東洋経済』は11月6日発売号(11月11日号)で「薬局の正体―膨張する利権と薬学部バブル―」を特集。
処方箋と病名があっていないケース。。。。
病名と実際の処方薬が何故処方されているか薬剤師がわからず、
処方した医師に電話して聞いて、それで服薬指導料とっていることもあります。
【門前薬局】は、院内処方と比べて高額になります。
外用薬は別途、外用薬調剤料として、1調剤(1薬剤)につき10点(3剤まで)
どの病院でも処方箋を受け付けていれば41点、特定の病院の処方箋なら25点、大手グループの薬局なら20点
ジェネリック医薬品を処方したら、後発医薬品調剤体制加算18点ないし22点になります。
手帳持ちで38点、手帳なしで50点。
門内薬局も最近ではあるようです。門前薬局や門内薬局って薬剤師学会絡みの利権だと思いますが、隣に薬局が並んであって10m歩けば、薬局ってどうなのでしょうか。
【かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師】について、手帳(シール含)持参されても、まだまだ難しそうです。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。当院は院内処方なので門前薬局のことは知りませんでした。確かに大学病院の前には何店舗もありますね。厚生労働省も人手不足なのでしょうがもっと現場の意見を聞いていただきたいです。