医学講座
子育てに寛容に
平成29年10月7日、朝日新聞朝刊、ひとときへの投稿です。
子育てに寛容に
「赤ちゃん、泣いていいよ!」 そんな記事を読み、小躍りするようなうれしさを感じました。先天性股関節脱臼で生まれた私に最良の医療を受けさせようと、母は電車で1時間かかる大学病院に通いました。朝一番の診察のため、通勤ラッシュの電車に乗っていたそうです。
ある朝、固いギプスで股関節を大きく広げた赤ん坊の私は、混んだ車内で大泣き。乗客から「こんな時間に赤ん坊を乗せるなんて非常識」と怒鳴られたそうです。
そのとき、ある紳士が「ごらんなさい、このお子さんは足が不自由なようです。混んだ電車に乗らなければならないのは、理由があるのでしょう」と一言。車内はしーんとし、母は降りるとき、何度もその紳士に頭を下げたそうです。
私は、この話を母から涙ながらに、何度も聞かされました。
私も母になり、似た体験をしました。車内で泣き出した我が子に困惑し、身の細る思いでいたとき、笑顔であやしてくれた年配の女性に、どれほど心救われたことでしょう。子育てに寛容な世の中こそ、誰にとっても住みよい世の中。そんな思いで「赤ちゃん泣いていいよ」という言葉を心に刻みました。
(川崎市 千葉久美子 非常勤職員 67歳)
(以上、朝日新聞より引用)
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通勤時間帯に、
小さな子供さんを連れて通院は大変です。
赤ちゃんでも、
ギプスを股関節につけていると、
かなり重くなります。
昔のギプスは、
白い石膏でできていました。
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私も幼稚園の時に、
ペルテスという病気になりました。
股関節にギプスを巻かれると、
排泄が大変です。
ギプスの中が超かゆくなります。
おできもできました。
おできの処置はとても痛かったです。
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今は子供さんは診ていませんが、
大きな病院の形成外科では、
よく子供さんの手術や処置をしました。
赤ちゃんは泣くのが仕事です。
泣いている赤ちゃんを、
看護師さんが上手におさえてくれて、
抜糸などの処置もうまくできます。
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赤ちゃんがかわいそうでも、
しっかりおさえて、
短時間で終わるほうが赤ちゃんのためです。
処置が終わって抱っこすると、
さっきまで泣いていた赤ちゃんが、
♡にっこり笑ってくれます♡
そんな処置を北大形成外科病棟チーフの時に、
ほぼ毎日していました。
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自分の子供を抱っこする時間はありませんでしたが、
患者さんは毎日抱っこしていました。
そのおかげで63歳でも、
意外と赤ちゃんを抱っこするのが上手です。
赤ちゃんは上手に支えてあげると、
泣きません。
とてもかわいいです。
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朝の満員電車で、
赤ちゃんの鳴き声がうるさいというのも、
わからないことはないです。
ある紳士が、
ごらんなさい、
このお子さんは足が不自由なようです。
混んだ電車に乗らなければならないのは、
理由があるのでしょう
なんて素晴らしい紳士なんだろう、
今から67年も前のことです。
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新米ママへの助言です。
赤ちゃんは泣いていいです
泣くのは赤ちゃんの仕事です。
この世に生まれた時に、
おぎゃあ!
…と泣いて、
肺に空気をいっぱい吸い込むのです。
そこから赤ちゃんの生命がはじまります。
泣くのは赤ちゃんの仕事なのです。