医学講座
病気腎の移植、先進医療に
平成29年10月20日、朝日新聞朝刊の記事です。
病気腎の移植、先進医療に
徳洲会の申請認める 厚労省部会
がんの治療で取り出した腎臓を、別の腎臓病患者に移植する「病気腎移植」について、厚生労働省の審査部会は10月19日、条件付きで先進医療として認めることを決めた。実施施設は治療の経過などを厚労省に報告せねばならず、国の仕組みのもとで実施される。安全や倫理面で批判されてきたが、実績をつめば技術自体が公的保険の対象になりうる。
病気腎移植は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などで万波誠医師(77)らが実施していたことが2006年にわかり、厚労省が監査に入った。患者の同意書がないケースもあった。関連学会が「安全性に問題あり」などと否定し、厚労省は臨床研究以外の実施を禁じた。
徳洲会(本部・東京)側は「移植する腎臓が不足し、患者のために必要」と、2009年12月から2016年5月の間に17例の臨床研究を実施し、2016年6月に先進医療に申請した。腎臓に直径7センチ以下のがんがあり、がんの部分切除が難しく、全摘出に患者が同意した場合が対象。がんを取った腎臓を腎不全患者に移植する。4年で42例の計画で、移植後5年間の生存率やがんの発生がないかなどを調べる。
10月19日の部会では、説明文書や治療経過のチェック体制の整備が進み、安全性や妥当性に大きな問題はないとされた。摘出が適切かどうかを検討する委員会に、泌尿器科や移植の関係学会の委員を入れることなどを条件とした。また移植した腎臓が機能しない例が4例出れば中止する。
移植手術をしてきた万波氏は、「(腎臓を提供する)ドナーが足りていない。ドナーが1人でも2人でも増えてくれるとうれしい」と話した。
(以上、朝日新聞より引用)
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ドナーカード
2006年11月7日の院長日記です。
腎移植には、
私の強い思いがあります。
恥ずかしながら、
私自身が臓器提供に抵抗がありました。
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実は医師になって働きはじめた頃は
自分の組織を提供することには抵抗がありました。
1989年4月から市立札幌病院に勤務し、
毎日救命救急センターへ行って、
外傷や熱傷の患者さんを救急の先生と一緒に治療していました。
私はそこではじめて脳死の患者さんを診察しました。
いままで漠然としか脳死を知りませんでしたが、
救命救急の現場で、
脳死とはどのような状態であるかを知りました。
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市立札幌病院には救命救急センターのほかに
腎センターと腎移植科がありました。
腎移植科の平野哲夫先生は献身的に腎移植に取り組んでいらっしゃいました。
市立札幌病院ではたくさんの患者さんが人工透析を受け、
腎移植を希望する方もたくさん待っていらっしゃいました。
ある日、腎バンクの登録希望者を募集していたので、
私はすぐに腎バンクに登録しました。
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その後、臓器移植法が整備され、
臓器提供意思表示カードを医師会でもらったので、
腎臓提供カードから、
腎臓以外の組織もすべて提供できる、
臓器提供意思表示カードに切り替えたのが1998年でした。
私は自分の死後に、
もし自分の臓器が役に立つなら喜んで提供します。
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ちょうどこの院長日記を書いた、
2006年に宇和島徳洲会病院の万波誠先生のことが報道されました。
ドナーカード
2006年11月7日の院長日記に書いた言葉です。
最近、病気の腎臓を移植した先生のことが問題になっています。
家内は『取らなくてもよい腎臓をとって移植したんじゃないの!』と怒っています。
私はもし自分の腎臓が病気でそれを摘出して
他人の役に立つなら喜んで提供します。
腎臓は部分的に切除するより
全摘出のほうがリスクが少ない場合もあると思います。
一部で報道されているように
医師が自分の功名心のために腎臓移植をするとは到底考えられないからです。
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毎日、透析を受けて腎移植を待っている人を見れば
誰でも助けてあげたいと思います。
今の日本に必要なのは、
もう少し臓器移植を円滑に進めることができるシステムです。
お金持ちだけが中国へ行って
死刑囚の腎臓を移植してもらう方がよほど問題だと思います。
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腎移植は進歩しました。
死体腎移植を待っていても順番が来ないので、
生体腎移植を受ける人が増えました。
自分の奥さんから、
腎臓をもらって元気で働いている人を知っています。
私は自分が患者だったら、
病気の腎臓を移植してもらいます
病気の腎臓が役に立つのだったら差し上げます
もっと移植医療の研究が進むことを祈っています。
私は宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は、
♡いい病院♡だと思います。