医学講座
皮膚移植2017
昨日の院長日記、
極薄分層植皮に、
さくらんぼさんから、
コメントをいただきました。
植物を植えるより難しそうな植皮ですね。
そうなんです。
皮膚を植える植皮はとても難しいのです。
■ ■
私たちの世代の形成外科医は、
まず、
植皮を100%生着させること!
…これが形成外科医への第一関門でした。
植皮がうまく生着しないことを、
植皮が落ちた
植皮が着かなかった
植皮グラフトが落ちた
植皮グラフトが着かなかった
…こんな言い方をしました。
■ ■
今の私ですら、
皮膚移植を100%成功させることは、
とても難しいです。
手術が下手な先生が植皮をしても、
また植皮が落ちた
○○先生のグラフトがまた落ちた
私も新人形成外科医の頃に、
何度か植皮が落ちて、
自分も患者さんと同じくらい落ち込んだことがあります。
■ ■
瘢痕拘縮
植皮術
2007年6月、
今から10年前に書いた院長日記です。
植物の苗を買ってきて移植しても、
水やりが悪かったり移植後の管理が悪いと枯れます。
皮膚も上手に移植することはもちろんですが、
移植後に動かないように固定しないと生着しません。
ベテランの形成外科医はこの固定が上手です。
皮膚の移植は植物の移植と同じ『移植』を用います。
英語でもtransplantationと言います。
plant(植物)をtrans(動かす)のです。
■ ■
植物の移植は、
根がついた苗を移植します。
皮膚移植は、
根のない、
葉を
挿し木で植えるようなものです。
挿し木で根付かせるのは
根がついた苗より難しいです。
■ ■
皮膚を上手に移植するには、
移植後に動かないように上手に固定する必要があります。
ベテランの形成外科医はこの固定が上手です。
植物と違って、
生きた人間に移植するので、
移植後に動かないように固定するのが大変です。
固定が下手だと生えた根が切れてしまいます。
■ ■
植物を移植して
根が伸びて生着します。
移植した皮膚に必要なのが血管です。
植物に根が生えるように、
移植した皮膚にも血管ができます。
これを血管新生と呼びます。
目に見えないような微小血管が生えて、
移植した皮膚が生着します。
■ ■
意外に思うかもしれません。
皮膚移植を生着させるために、
ギプス固定をします。
私も形成外科医になるまで、
形成外科でギプス固定をすることを知りませんでした。
植物の移植に添え木が必要なように、
皮膚移植には固定が必要です。
固定が下手だと皮膚は落ちます。
“皮膚移植2017”へのコメント
コメントをどうぞ
植物でいう接ぎ木や 挿し木に似ていますね。父は元気な頃趣味で菊を作っていて挿し木で根をつけていました。主人は毎年りんごの接ぎ木をしていますが、例えば 千秋からシナノスィートの樹に変えるとき接ぎ木をします。ビニール袋をかけ テープで抑えます。上手くいくときと上手く行かない時があり生きづかなかったといいます。ブドウでも 接ぎ木でデラウェアからシャインマスカットにした人もいます。 人間の植皮はずっと大変なのですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。接ぎ木に似ていますね。ご主人はお上手なのですね。植物は『生きづかなかった』なんですね。『落ちた』よりいいですね。教授回診や正式な記録では『生着せいちゃくしなかった』と言ったり記載したりします。接ぎ木でデラウェアからシャインマスカットはすごいですね。教えていただきありがとうございました。
形成外科では細やかな手術が多い中で
ギブスでの固定には驚かされました。
固定も重要なんですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。整形外科のギプスと違うことは圧迫し過ぎると生着不良になることです。動かないように少しゆるめにというのがコツなんです。これがなかなか難しくてちょっとでも過圧迫になるとオーバープレッシャーと言って生着不良の原因になります。二重埋没法より難しいかも?です。
皮膚移植が昔からあったとは。でも今ほど技術が進んでいなかったと思います。友達のうちは、裕福だったから、手術できたはずだけど右腕にやけどのあとが残っています。形成外科のちからのみせどころですね。多くの人が救われます。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。植皮術は外科学の基本で大昔からあります。それなのに現代社会でも植皮を100%生着させることはとても難しいのです。奥が深い手技です。