医学講座
極薄分層植皮
第8回北海道形成外科フォーラム
…で私が一番勉強になった発表です。
【特別講演Ⅱ】
『極薄分層植皮 ―歴史と展望―』
愛知医科大学形成外科教授 横尾和久 先生
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひ
…と読みます。
■ ■
私たち形成外科が得意なのが、
植皮術しょくひじゅつです。
皮膚を植える手術です。
そんなの簡単じゃん!
皮膚を植えればいいんでしょ?
…と思うのは大間違いです。
経験約40年の私でも100%植皮を生着させるのは、
とても難しいことです ■ ■
植皮には大きく分けて2つあります。
分層植皮ぶんそうしょくひと
全層植皮ぜんそうしょくひです。
全層植皮は、
読んで字のごとく、
皮膚全層で植える手術です。
厚い皮膚を移植できます。
■ ■
分層植皮は、
皮膚を薄くむいて、
皮膚の上の方だけを植える手術です。
分層皮膚を採取した部位は、
ちょうど皮膚をすりむいたようなキズになります。
厚い分層皮膚を採取すると、
皮膚を採取した部位にキズが残ります。
■ ■
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひは、
透けて見えるくらいの薄い皮膚を移植する技術です。
採皮する技術も、
移植する技術も難しいです。
この極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひの最大の利点は、
皮膚を採取した場所に、
♡キズが残りません♡
同じ部位から、
時間をおいて繰り返し採取できます。
■ ■
広範囲熱傷や、
難治性潰瘍など、
皮膚移植が必要な患者さんに有用です。
愛知医科大学形成外科教授
横尾和久先生が伝授してくださった、
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひは、
名古屋の中京病院形成外科で発案されました。
■ ■
中京病院形成外科の故井澤洋平先生が考案され、
刃物の街、
岐阜県関市にある、
貝印、
フェザーから、
専用の採皮刀が生まれました。
自分の身内でしたら、
採皮部に♡キズが残らない♡
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひを選びます。
横尾和久先生ありがとうございました。
“極薄分層植皮”へのコメント
コメントをどうぞ
極薄分層植皮はやけどとかにするのでしょうか?父は入院中ですが、皮膚が薄くなり すぐあざになるので皮膚の代わりになる薄いシートを貼っています。 植物を植えるより難しそうな植皮ですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。そうなんです。植物には根が生えているので移植も根をつけたままできます。植皮には根がないので挿し木みたいなものなのです。ですから枯れることもあります。極薄分層皮膚は厚い植皮よりも生着しやすく皮膚を採取した部位にもキズが残りません。唯一の欠点は移植した部位がキズのようになります。ですから広範囲熱傷や難治性潰瘍などとにかくキズを治したい部位に使います。なかなか全部がうまくいく方法はありません。
熱傷に植皮しても
痕が残らないのって素晴らしいですね。
神業です。
友人は小学1年頃に熱い牛乳がかかり
植皮しましたが
今思うと全層だったのでしょう。
大腿に残る傷が水着姿の際に痛々しかったです。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。大腿にキズができるのはふつうの分層植皮です。採皮部として大腿を使うのは一般的で極薄ではないふつうの厚さの分層植皮です。電動デルマトームという機械を使うこともあります。
本当に素晴らしい技術だと思います。傷が残らない手術ができれば、いいですね。細かな作業で敬服しますが、求めている人には、救いになるのではないでしょうか。ひと昔には、考えられないほど、医学は進んでいると思いました。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。植皮術は古くからある手術手技です。昔からある手術ですが難しい手術です。昔にくらべると植皮をする機会が少なくなっています。若い先生にもぜひ手技をマスターしてほしいです。