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子どもの死

 映画おくりびとでは、
 何回も子どもの葬儀の場面がありました。
 赤ちゃんの誕生はうれしいものですが、
 大きくなってからは…
 さまざまな問題が生じることがあります。
 本間家も例外ではありません。
 おくりびとのように、
 お前の育て方が悪かったからだ。
 育てたのは、私一人じゃない。
 と家内と何度も大喧嘩になりました。
 それはそれは悲惨なものでした。
 私の人生も変わりました。
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 私たち医師は、
 子どもさんの死という、
 親にとっては
 もっとも辛い場面にも遭遇します。
 形成外科では死ぬことは稀(まれ)ですが、
 顔や身体に大けがをして、
 搬送されてくる子どもさんが
 いらっしゃいます。
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 若いお嬢さんが、
 元の顔がわからないくらい…
 顔が変形してしまった例も…
 何度も経験しました。
 事故の前の写真を持ってきてください。
 なるべく元に近づけるように手術します。
 こう…ご家族にお願いすることがありました。
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 先生に写真を持ってきてといわれたから…
 家中を探して…
 一番きれいに…
 可愛く写っている写真を…
 必死で見つけました。
 あるお母さんが、
 手術からかなり経ってからお話ししてくださいました。
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 おくりびとで、
 暴走族と思われる少年たちが、
 若い女性の葬儀に来ていました。
 おそらくそのお嬢さんは、
 暴走族の交通事故で亡くなったのだと…
 推測しました。
 私は何度も若者の交通事故の手術をしました。
 中には…
 無免許、盗難車、酒気帯び…
 という事故もありました。
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 後部座席に乗っていた、
 若者3人のうち2人は死亡。
 残った一人も重症で、
 顔にも身体にも大けがをしていて…
 顔の手術を何回もしたお嬢さんが…
 いらっしゃいました。
 お母さんが心配して、
 毎日、病院へいらしていました。
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 その頃は、
 私の子どもは小さかったので、
 そのお母さんの気持ちは、
 わかったようでいて、
 わかっていなかったことに気付きました。
 親なんて無力なものです。
 成人した子どもには、
 日本国憲法が保障した、
 基本的人権があります。
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 成人に達した子どもは、
 どこに住もうと
 どんな職業に就こうと
 だれと結婚しようと
 自由です。
 日本国憲法が保障しています。
 親が何と言っても無駄です。
 飼い犬でしたら、
 首に縄をつけておけますが、
 人間にはつけられません。
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 子どもには、
 縄(なわ)の代わりに…
 ‘教育’をつけて、
 していいことと悪いことを教えたつもりでした。
 ところが… 
 見事に信頼の絆を切られ、
 父親として、教育者として、医師としての自信を失いました。
 映画おくりびとを見て、
 私のような親が…
 一人ではないことに気付きました。

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