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子どもの死
映画おくりびとでは、
何回も子どもの葬儀の場面がありました。
赤ちゃんの誕生はうれしいものですが、
大きくなってからは…
さまざまな問題が生じることがあります。
本間家も例外ではありません。
おくりびとのように、
お前の育て方が悪かったからだ。
育てたのは、私一人じゃない。
と家内と何度も大喧嘩になりました。
それはそれは悲惨なものでした。
私の人生も変わりました。
■ ■
私たち医師は、
子どもさんの死という、
親にとっては
もっとも辛い場面にも遭遇します。
形成外科では死ぬことは稀(まれ)ですが、
顔や身体に大けがをして、
搬送されてくる子どもさんが
いらっしゃいます。
■ ■
若いお嬢さんが、
元の顔がわからないくらい…
顔が変形してしまった例も…
何度も経験しました。
事故の前の写真を持ってきてください。
なるべく元に近づけるように手術します。
こう…ご家族にお願いすることがありました。
■ ■
先生に写真を持ってきてといわれたから…
家中を探して…
一番きれいに…
可愛く写っている写真を…
必死で見つけました。
あるお母さんが、
手術からかなり経ってからお話ししてくださいました。
■ ■
おくりびとで、
暴走族と思われる少年たちが、
若い女性の葬儀に来ていました。
おそらくそのお嬢さんは、
暴走族の交通事故で亡くなったのだと…
推測しました。
私は何度も若者の交通事故の手術をしました。
中には…
無免許、盗難車、酒気帯び…
という事故もありました。
■ ■
後部座席に乗っていた、
若者3人のうち2人は死亡。
残った一人も重症で、
顔にも身体にも大けがをしていて…
顔の手術を何回もしたお嬢さんが…
いらっしゃいました。
お母さんが心配して、
毎日、病院へいらしていました。
■ ■
その頃は、
私の子どもは小さかったので、
そのお母さんの気持ちは、
わかったようでいて、
わかっていなかったことに気付きました。
親なんて無力なものです。
成人した子どもには、
日本国憲法が保障した、
基本的人権があります。
■ ■
成人に達した子どもは、
どこに住もうと
どんな職業に就こうと
だれと結婚しようと
自由です。
日本国憲法が保障しています。
親が何と言っても無駄です。
飼い犬でしたら、
首に縄をつけておけますが、
人間にはつけられません。
■ ■
子どもには、
縄(なわ)の代わりに…
‘教育’をつけて、
していいことと悪いことを教えたつもりでした。
ところが…
見事に信頼の絆を切られ、
父親として、教育者として、医師としての自信を失いました。
映画おくりびとを見て、
私のような親が…
一人ではないことに気付きました。