医学講座
性同一性障害
おくりびとの冒頭の場面は、
美しい女性の葬儀からはじまります。
実際の撮影は女優さんだったと思いますが、
後の場面で、
美しい女性に、
男性器がついている
ことがわかります。
死化粧を男性用にするか?
女性用にするか?
とご両親に問う場面がありました。
■ ■
美しい女性として、
死化粧を施していただき、
お父さんが感謝の言葉を述べていました。
男に生まれた息子が
女の格好になって、
亡くなってしまった。
息子がこんなになってしまってからは、
毎日、喧嘩ばかりだった…
と話されていました。
■ ■
性同一性障害
(GID:Gender Identity Disorder)
という診断名は、
私が医学生だった30年前にはありませんでした。
日本精神神経学会は、
生物学的には完全に正常であり,
しかも自分の肉体がどちらの性に属しているかを
はっきりと認識していながら、
その半面で、
人格的には自分が別の性に属していると確信している状態
と定義しています。
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1997年に
日本精神神経学会から
「診断と治療のガイドライン」が発表されました。
性別適合手術(Sex Reassignment Surgery:SRS)が
埼玉医大倫理委員会から承認を得て、
厚生省公衆衛生審議会精神保健福祉部会、
中央児童福祉審議会母子保健部会の了承を受けて、
1998年10月16日に、
埼玉医大総合医療センターで、
形成外科の原科孝雄教授により
実施されました。
■ ■
原科孝雄先生は、
マイクロサージャリーの権威です。
事故で陰茎を失った男性に、
遊離皮弁という技術で
陰茎再建手術をなさいました。
札幌で行われた国際学会の時に、
原科先生のご発表がありました。
同時通訳の女性が、
スライドを見て思わず『わぁ~』と
声を上げたのを覚えています。
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形成外科の進歩にもかかわらず、
男性器をつくるのはとても難しい手術です。
特に機能する
伸びたり縮んだりする
のは…不可能に近いとお考えください。
私が知っている範囲の知識では、
立っておしっこができて、
おしっこが漏れないようにするのも、
なかなか大変な手術です。
■ ■
男性器どころか?
肉の塊がついただけで、
おしっこは漏れてしまい、
立っておしっこができない男性器も
たくさんあると思います。
男性→女性への手術も大変です。
つくった腟の中に毛が生えてしまったり、
小さくなってしまったり…
とにかく性器をつくる手術はとても大変なのです。
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うちの奥さんを含めて、
大部分の一般市民の方は、
外国へ行けば…
簡単に
取ったりつけたりしてくれる
と思われている?ようですが、
神様がおつくりになった外性器は、
簡単にはつくれません
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埼玉医大で行われていた
性別適合手術(Sex Reassignment Surgery:SRS)は、
原科教授の定年退職によって中断されています。
現在、日本でGIDの治療を積極的に行っているのは、
ナグモクリニックです。
山口悟先生をGIDセンター長とし、
豊胸術や乳房切除術などの胸の手術によって、
性同一性障害の患者さんを治療しています。
タイまで行って手術を受ける方もいらっしゃいますが、
結果は必ずしも満足できるとは限らないようです。