昔の記憶
麻酔科研修の想い出④
麻酔科は外科系の科から、
麻酔の依頼があると、
麻酔をかける科です。
当たり前のようですが、
これが大変なことなのです。
患者さんを選んで…
麻酔をかけるのではなく、
依頼があれば引き受けるのが原則です。
■ ■
中には、
生死にかかわるような手術もあります。
麻酔をかけただけでも、
生命の危険を伴うこともあります。
私も札幌医大形成外科に勤務していた時に、
心臓の機能が低下していて、
麻酔科と相談して、
手術を一度は諦めた患者さんが
いらっしゃいました。
■ ■
私が北大形成外科で研修をしていた頃、
北大病院手術部では、
毎週金曜日のお昼に、
手術場(しゅじゅつば)会議というのがありました。
各科から出された、
翌週の手術予定を調整する会議でした。
手術室看護師の数や、
麻酔科医の数には限りがあります。
全ての科の手術や麻酔を引き受ける、
人的な余裕がありませんでした。
■ ■
今はどうかわかりませんが、
看護師さんの数が足りないので…
直接介助は無しでお願いします。
【2名の看護師がつくところを1名にしてください】
【看護師の代わりは研修医です】
とか
この手術は次週にまわしてください。
という調整の会議でした。
この会議に出るのが、
形成外科ではチーフレジデントでした。
私も半年間出席しました。
■ ■
この会議で手術が(予定に)入らなくなると…
患者さんに説明をして…
『申し訳ございません。』
『手術室の都合で来週の手術は延期になりました。』
と謝るのも、
チーフレジデントの仕事でした。
幸い、私の時には断られて…
中止になった例は無かったと思います。
ただ、毎週気の重い会議でした。
患者さんへの説明も、
金曜日の手術部の会議の後で
最終的な手術日程を説明していました。
■ ■
麻酔科研修をした札幌医大では、
手術部の人員の関係で、
手術ができないとか…
麻酔科医が足りないので、
手術ができないとかいうことは…
まったくありませんでした。
手術が必要な患者さんを
手術が必要な時に引き受けるのが、
麻酔科と手術部の仕事でした。
優秀な看護師や麻酔科医が、
たくさんいたのでできたのだと思います。
■ ■
現在の保険医療制度では…
病棟の看護師を増やすと…
病院に入る収入が
増えるようになっています。
ところが…
手術室の看護師を増やしても、
麻酔科医を増やしても、
病院は経費がかかるばかりで、
直接の収入増にはなりません。
私たちが安心して医療を受けるためにも、
国は麻酔科医や手術部の看護師にも、
目を向けてほしいと思います。