昔の記憶
麻酔科研修の想い出③
私が麻酔科研修を受けた時に、
私に直接、麻酔技術を指導してくださったのは、
高橋長雄教授ではありませんでした。
私に喉頭鏡(こうとうきょう)という器具を使って、
口から麻酔の管(くだ)
【挿管(そうかん)チューブと言います】
を入れる手技を教えて下さったのは…
当時の講師や助手・研究生の先生でした。
■ ■
そのうちのお一人が、
風のガーデンで、
麻酔科の指導をなさった、
旭川医科大学の岩崎寛教授でした。
岩崎先生は大学院生で、
博士号を取得するために、
日夜研究をなさっていらっしゃいました。
その他にも、
当時、助手や研究生だった先生が、
日本全国で、
麻酔科教授としてご活躍中です。
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麻酔科の朝は早く、
夜は遅くまで研究室で勉強をしていました。
ほぼ全員…
夕食は出前でした。
札幌医大近くのラーメン屋さんだったり、
食堂だったりしました。
夜の勉強は強制ではありませんでしたが、
教室全体が勉強をする雰囲気でした。
勉強の途中で、
医局でコーヒーを飲んだり、
雑談もしました。
■ ■
そこら中に、
教科書を執筆するような‘先生’が、
何人もいました。
医局には本や論文などの資料も、
豊富にありました。
わからないことがあれば、
何でも気軽に質問できる雰囲気がありました。
この豊富な人材こそが、
高橋長雄教授が築かれた…
貴重な財産であり、
札幌医大麻酔科が、
多くの教授を輩出した、
原動力だと思います。
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私は麻酔科研修で、
点滴の刺し方から、
中心静脈カテーテルの入れ方。
心肺蘇生の基礎。
とにかく…
医師として、
いざという時に必要な手技や知識を
すべて教えていただきました。
麻酔科研修を終えた後は、
医師としての自信が数倍にもなった気がしました。
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札幌医大麻酔科で教えていただいたのは、
技術だけではありませんでした。
事故を起こしてはいけないという、
極めて基本的なことを何度も言われました。
医師賠償責任保険にも加入しました。
依頼があった麻酔は、
断らないというのも、
札幌医大麻酔科の特徴でした。
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われわれは、
北海道が作った公立大学の職員で、
札幌医大は道民のための大学病院。
手術を必要としている患者さんのために、
最善を尽くすのが当然…と
当時の並木助教授(現名誉教授)に、
教えていただきました。
麻酔の手技とともに…
私の心の中に生涯、残っている、
札幌医大麻酔科のスピリットです。