医学講座
顔の傷、男女差は「違憲」
平成22年5月28日、朝日新聞朝刊の記事です。
労災で顔に傷、補償に男女差は「違憲」京都地裁判決2010年5月27日
顔などに重い傷が残った労働災害の補償で、男性を女性より低い障害等級と認定する国の基準は法の下の平等を定めた憲法に反するとして、京都府内の男性(35)が国に障害補償給付処分の取り消しを求めた訴訟の判決が5月27日、京都地裁であった。瀧華聡之(たきはな・さとし)裁判長は「男性も顔に障害を受けたら精神的苦痛を感じる。性別による差別に合理的理由はない」として基準を違憲と判断し、処分を取り消した。男性の弁護団によると、労災の障害等級の男女差を違憲とした司法判断は初めて。
労災保険法は顔などに重い傷が残った場合の障害等級について、女性は「7級」、男性は「12級」と規定。7級はその障害がなくなるまで、障害を負う直前3カ月間の平均賃金の131日分が「障害補償年金」として毎年支給される。12級は平均賃金の156日分が「障害補償一時金」として給付されるにとどまる。
判決によると、男性は1995年、京都府内の勤務先で金属を溶かす作業中に顔や腹に大やけどを負った。地元の労働基準監督署は2004年、ほかの症状と合わせて、障害補償一時金の支給対象となる11級と認定。これを不服として再審査を求めたが、国に退けられた。
判決はまず、接客が必要な仕事には女性が多く就いているとした国勢調査の結果から「外見の障害は女性のほうが不利益を被る」とした国の主張について検討。不特定多数の人と接する仕事は「法務従事者」「音楽家」「理容師」など他にもあり、明らかな根拠とはならないと判断した。
国の「女性のほうが外見に高い関心を持っているため、顔の傷による精神的苦痛の程度は大きい」との主張についても、性別によって大きな差が出るとはいえないと指摘。重い外見の障害補償だけに性別差が設けられていることは「著しく不合理だ」と結論づけた。
厚生労働省によると、重い外見の障害等級の男女差は、1936年改正の工場法で定められて以降、見直されていない。同省労災補償部は「関係省庁と協議し、対応を決める」としている。(玉置太郎)
障害等級
労働者が仕事で負傷したり病気になったりして障害が残った場合、労災保険法に基づいて国から支給される給付金の額や支給方法を決める区分。厚生労働省の同法施行規則で、障害の程度に応じて1~14級に分けられている。
手や足、視力・聴力などの障害には男女差はない。一方で顔部分に跡が残る障害については、その程度によって男性は女性より2~5級低く分類されている。
(以上、朝日新聞より引用)
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2008年8月14日の院長日記に、
顔の価値:男女差
という内容で書いてあります。
女性と男性には、
年齢制限はありません。
つまり、
98歳のシワシワのおばあさんも、
18歳のピチピチのお嬢さんも同じ等級です。
また、
男性にしても、
私のようなおっさんも、
ジャニーズ系や
キムタクのような
イケメンも同じです。
これって、変じゃありませんか?
■ ■
2008年の日記にも書いてありますが、
そもそも…
国の基準は、
外見に対して低すぎるのです。
障害認定の際の判断基準も、
1936年のままです。
■ ■
形成外科が発達して、
キズはかなり治せるようになりました。
いざ…
手術でキズを治そうとすると…
さまざまな障害があります。
顔のキズも…
四肢のキズも…
運動制限がなければ…
労災保険の適応になりません。
■ ■
運動制限とは…
目が閉じれない…
口が開かないという症状です。
美容目的の手術には…
労災保険は適用できません。
事故でできたキズをきれいにするのに…
美容目的も何もあったものじゃない!
と私は思います。
■ ■
釧路労災病院形成外科の医長として勤務しましたが、
労災病院ですら…
キズをきれいにする手術に困りました。
診療報酬点数表にない手術を、
労災病院といえど…
勝手にすることはできないからです。
国はもう少し形成外科を勉強して、
形成外科医が活躍しやすい制度を作ってほしいです。
日本形成外科学会では、
毎年、国に対して要望を出していますが…
なかなか認められません。