医学講座
ヒアルロン酸は100%安全か?
私は日航ジャンボ機の墜落事故が起きた30年前に、
北大形成外科でコラーゲン注入剤の臨床試験を担当しました。
米国のベンチャー企業が牛コラーゲンを製品化し、
それを日本で承認を取るためです。
臨床試験の責任者が、
北大形成外科の大浦武彦先生でした。
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北大形成外科、
東大形成外科、
京大形成外科、
…という国立大学の形成外科が担当しました。
米国では美容目的に使われていたコラーゲン注入剤ですが、
当時の厚生省は美容目的に使うことを禁止して認可しました。
実際には美容目的で多く使われていました。
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最近、札幌美容形成外科でも使っている、
レスチレンというヒアルロン酸製剤が認可されました。
以前から認可されている、
ジュビダームという製品と合わせて、
2つの会社から、
美容目的に使えるヒアルロン酸が販売されています。
ネットで添付文書や注意書きも読めます。
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大手美容外科の広告を見ると、
ヒアルロン酸は100%安全と誤解するような表現があります。
実際の添付文書には次のように書かれています。
重大な有害事象
血管障害
血管内への誤注入又は局所的血管圧迫の結果、
白変、変色、水疱様の事象、壊死又は潰瘍として現れる
注入部位又は血流の供給を受けている部位の虚血が生じることがある。
ごくまれに遠位部の塞栓による虚血が
一過性の視覚障害、失明、脳梗塞につながることがある。
鼻形成術や他の顔面手術を受けた患者では
局所の血管系の変化により、
こうした事象を生じるリスクが高い。
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大手美容外科の広告とはえらい違いです。
過去に整形を受けた人が高リスクです。
壊死や潰瘍はたまにあります。
めったにありませんが、
視覚障害(視力低下)や失明も、
他の製剤で起きたという報告があります。
ですから、
札幌美容形成外科ではまぶたなど、
目の近くにはヒアルロン酸を注入していません。
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厚生労働省が認可したのは、
使用目的又は効果
本品は、真皮中間層から深層に注入し、
中等度から重度の顔面の皺(ほうれい線等)の矯正及び整容を目的とする。
だけです。
なお、口唇、眼瞼への使用及び
隆鼻術等の形状の変更を目的とした使用は本品の適応に含まれない。
…としっかり書いてあります。
血管解剖を知らない、
なんちゃって美容外科医や、
なんちゃって美容皮膚科医に、
安易にヒアルロン酸注射を受けるのは危険です。