医学講座
コラーゲンのアレルギー反応
私がコラーゲンの臨床試験を担当した30年前まで、
ヒトの体内に♡安全♡に注入できる材料はありませんでした。
大浦武彦先生が学会長なさった、
1986年の第29回日本形成外科学会(札幌)で、
大浦先生が自らコラーゲンの発表をされました。
狭い会場でしたが、
立ち見ができるほど多くの先生が集まりました。
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米国のベンチャー企業が、
牛のコラーゲンを製品化しました。
ザイダームZydermという商品名でした。
牛のコラーゲンから作ったので、
約3%の人にアレルギーが出ます。
皮内テストという、
ツベルクリン反応のように、
少量のコラーゲンを皮膚に注射するテストが必要でした。
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この皮内テストをして、
4週間様子をみて、
アレルギーがない人だけに注射をしました。
米国企業から送られた、
膨大な論文を読みました。
大部分がアレルギーに関する論文でした。
美容目的に使うコラーゲンで、
アレルギーが出たら大変です。
3%の人が合わないというのは結構な高リスクです。
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コラーゲンは、
それまで治療が難しかった、
眉間のしわや、
額のしわに効果的でした。
臨床試験の患者さんがいなかったので、
自分の母親にも注射しました。
眉間のしわがみごとに治りました。
当時私は30歳で、母親が58歳でした。
当院HPの眉間のしわは私の母親です。
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うちの奥さんは28歳でした。
まだ若くてきれいでした。
28歳の奥さんが、
私も目のしわを取りたいと言いました。
今だったら、
28歳の女性のしわは絶対に取りませんが、
コラーゲンの臨床試験に参加してくれる人もいないので、
うちの奥さんのしわも治療しようということになりました。
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マニュアル通りに、
左前腕にツ反のように皮内テストをしました。
残念なことに、
うちの奥さんは皮内反応が陽性でした。
コラーゲンを注射したところが、
蚊に刺されたように真っ赤になりました。
奥さんはがっかりしていました。
それ以上に困ったことが起こりました。
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蚊に刺された赤味は、
せいぜい数日で消えます。
ところが、
奥さんの腕の赤味は、
いつまで経っても消えませんでした。
コラーゲンは注射できないは、
腕には赤い発赤は残るは、
赤いところは痒いは、
【怒】奥さんの怒り【怒】は相当なものでした。
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結局、約半年くらいはうっすらと赤味が残りました。
それ以来、
私は皮内テストを、
上腕内側の目立たない部位にするようにしました。
もちろん研究会でも発表しました。
私は奥さんから、
赤味が消えるまで、
ず~っと文句を言われることになりました。
美容目的で使う製品は100%安全でなければ、
大変なことになると身をもって体験しました。