医学講座
ヒアルロン酸による血管閉塞
2015年8月15日の院長日記、
ヒアルロン酸は100%安全か?に、
メーカーの添付文書にある、
血管内への誤注入又は局所的血管圧迫
壊死又は潰瘍かいよう
視覚障害、失明、脳梗塞
鼻形成術や他の整形手術を受けた患者が
リスクが高い
…ということをご紹介しました。
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大手美容外科のHPを見ても、
どこにもこんなことは書いてありません。
【謹告】
当院で鼻を高くする目的で、
注入治療を受けた患者さんが、
鼻が壊死になってしまいました。
そのため鼻の注入治療を今後は行いません。
…なんてことはHPにも載せません。
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残念なことですが、
現実には起きています。
注入治療なら、
手術じゃないから、
若い先生だって大丈夫じゃん、
安いほうがいいょ、、、
なんて考えてはいけません。
事故が起きてからでは遅いのです。
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牛コラーゲンを使った注入治療では、
今ほど壊死や失明が問題になってはいませんでした。
私の記憶が正しければ、
Zyplastザイプラストという、
吸収されにくいコラーゲンが開発され、
それを眉間に注射した時に、
注射部位が壊死になったというのが、
注入剤による壊死や潰瘍形成の最初です。
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私の推測では、
コラーゲンの粘土や粒子が変わって、
それまでより、
血管に間違って入る率が上がったのだと思います。
それほど多い副作用ではありませんでしたが、
ヒアルロン酸製剤の普及により、
コラーゲンは市場から消えました。
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ヒアルロン酸は、
美容外科だけではなく、
眼科でも、
整形外科でも使われています。
ごくまれにアレルギー反応が出るという報告はありますが、
私自身では経験したことはありません。
ヒアルロン酸で、
血管閉塞が起きるようになったのは、
深い部位へ、
より多くのヒアルロン酸を注射するようになってからです。
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形成外科医は、
顔の血管や神経を、
いやというほど勉強します。
外傷患者さんでは、
血管を処理しなくては止血ができません。
神経損傷の患者さんは、
神経を探して縫合します。
悪性腫瘍の再建では、
血管を出して血管吻合もします。
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顔面の腫瘍を切除した後や、
鼻を再建する時などは、
皮弁ひべんという手術手技を使います。
皮弁が壊死になったら大変なので、
細い血管を損傷しないように注意して手術をします。
私たちはドップラー血流計というのも使いました。
顔面の血管走行を知らないで、
ただシワにだけヒアルロン酸を注射しようとすると、
とんでもないところが壊死になります。
何度も言いますが、
注入は簡単ではありません。
しっかりとした先生に治してもらってください。