医学講座
ある日突然_薬でショック①
平成28年5月8日、朝日新聞朝刊の記事です。
この記事は、
医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、薬剤師など、
医療関係の方にぜひ読んでいただきたいです。
とても大切なことです。
(患者を生きる:3047)ある日突然_薬でショック①_歯科の麻酔注射で異変
兵庫県に住む准看護師の女性(49)は、県南部の総合病院の内科で働いている。薬剤の取り扱いには普通以上に気を使っている。代表的な局所麻酔薬にアレルギーがあり、一部の抗生剤などほかの薬剤にもアレルギーの疑いがあるからだ。
初めてアレルギーの症状が出たのは30年前。19歳だった。出身地の福井県で産婦人科医院の准看護師になって、2年ほど過ぎた頃。憧れの職業につき、日々、奮闘していた。
虫歯の治療で勤務先近くの歯科医院に行った。診療台に横たわり、口の中に注射器で麻酔を打たれると、異変が起きた。血の気が失せ、顔面そうはくになり、息が苦しくなった。横になっていられず、「いすを起こしてください」と頼んだ。
歯科医が言った。「これは、麻酔薬のアレルギーじゃないか」
食べ物によるじんましんなどアレルギー性の病気とは、幼い頃から無縁だった。家族の間でも、アレルギー体質だという話を聞いたことはなかった。「本当にアレルギーだろうか」とにわかには信じられなかった。
歯の治療は中止になった。勤務先から同僚の看護師に迎えに来てもらい、勤務先に戻った。近くの内科病院から駆けつけた医師の診察を受けた。この内科医も「アナフィラキシーではないか」。アナフィラキシーは全身に強いアレルギー症状が出る状態。点滴をしてもらい、そのまま勤務先に1日入院した。
アレルギーは体を守る免疫の過剰反応だ。原因物質それぞれに個別に働く抗体という免疫の担い手があり、アレルギーの引き金になる。薬も原因物質になる。ただ、抗体があれば必ずアレルギーになるわけではなく、なぜなるのかははっきりしない。
当時の女性の勤務先では、出産の際に局所麻酔薬を使っていた。女性は正式に雇われる2年前から見習いをし、採用後は麻酔薬を瓶から注射器に移す作業もしていた。少量でも長年その物質に接しているとアレルギーになることがある。女性の場合もそのケースということもありうるが、もともとアレルギーがあった可能性も否定できなかった。(鍛治信太郎)
◆5回連載します。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
朝日新聞に掲載された写真は、
歯科用麻酔薬です。
この麻酔薬は、
キシロカインという商品名です。
歯科だけではなく、
医科でも使います。
動物にも使います。
■ ■
私たち外科系医師は手術の際に使います。
内科医が内視鏡をする時ものどや鼻に使います。
耳鼻科で鼻を診る時にも使います。
とてもいい薬です。
世界中で長い間使われています。
残念なことですが、
きわめて極めてまれに、
朝日新聞に掲載されたようなことが起こります。
■ ■
新聞に掲載された女性は、
担当の歯科医師が、
「これは、麻酔薬のアレルギーじゃないか」
…と気付きました。
気付くことが大切です。
点滴をしてもらい、
そのまま勤務先に1日入院した。
…これで済んでよかったです。
適切な処置をしないと死亡事故です。
■ ■
私自身は、
キシロカインでアナフィラキシーは経験したことがありません。
でもいつも気にしています。
ごくまれに、
キシロカインの効きが悪い人もいます。
なんちゃって美容外科医や、
なんちゃって美容皮膚科医の
『先生』も注意してください。
■ ■
どんな患者さんでも起きる可能性があります。
適切な処置をしないと、
生命にかかわることになります。
美容医療に使う、
ヒアルロン酸に、
このキシロカインが入った製剤があります。
添付文書をよく読むと、
アナフィラキシーのことが書いてあります。
くれぐれも注意してください。