医学講座
ある日突然_薬でショック⑤
このシリーズの最終回です。
局所麻酔薬のキシロカインで、
これほど重篤な症状になった人を、
はじめて知りました。
あらためて、
日常診療で注意しなくてはいけないと痛感しました。
記事を書いてくださった、
朝日新聞社の鍛治信太郎記者に感謝しています。
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平成28年5月13日金曜日、朝日新聞朝刊の記事です。
(患者を生きる:3051)ある日突然_薬でショック⑤情報編_アレルギーの特定検査を
アレルギー反応は、体に入ってくる異物を攻撃して排除する免疫機能が過剰に働いて起きる。原因となるのは食物や花粉、ダニなどさまざまで、薬も含まれる。
同志社女子大薬学部の杉浦伸一(すぎうらしんいち)教授は「どんな薬でも原因になりうる」と話す。
日本アレルギー学会のウェブサイトによると、抗菌薬や消炎鎮痛薬、かぜ薬、抗けいれん薬、痛風治療薬はアレルギーを起こしやすく、また、重症になる恐れもあるので注意が必要という。高血圧や糖尿病の治療薬、造影剤、局所麻酔薬、抗がん剤などでも起きることは少なくない。症状で最もよくみられるのは皮膚症状で、じんましんや湿疹といった軽症から、体中がただれる重症まである。ほかの症状には呼吸器障害や肝障害、腎障害などもある。
連載で紹介した兵庫県の女性(49)は局所麻酔薬で「アナフィラキシー」を起こした。これは即時型のアレルギー反応で、呼吸困難、発疹、吐き気、腹痛など全身に症状が現れる。特に、血圧の低下や意識障害を伴う場合は「アナフィラキシーショック」と呼ばれ、命にかかわる。
学会のアナフィラキシーガイドラインによると、アナフィラキシーショックによる死亡の原因は、医薬品が最も多かった。次いで、ハチによる刺し傷、食物、血清と続く。血清は、毒ヘビにかまれた時などの治療に使われる。
アナフィラキシーショックの治療では、血圧を上げたり、気管を広げたりする作用のあるアドレナリンを注射する。効果の持続時間が短いので、症状が続く場合はアドレナリンを追加する。酸素吸入や食塩水の点滴、抗アレルギー薬なども使う。
ショックを起こさないようにするには、どうすればよいのか。埼玉医科大の土田哲也(つちだてつや)教授は「薬剤に対するアレルギーは一度なるとその体質は一生続くと考えた方がよい。対策はその薬を使わないようにすることに尽きる」と語る。
アレルギーのある薬をカードに書いてふだんから健康保険証などと一緒に持ち、診療を受けるときに医師や薬剤師に必ず見せるようにする。そのためには、どの薬にアレルギーが疑われるのか検査で調べる必要がある。
(鍛治信太郎)
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
上の表を見て驚いたのは、
2001年~2013年までの、
アナフィラキシーショックによる死亡数。
医薬品323人、
ハチ刺傷266人です。
13年間で、
ハチに刺されて266人も亡くなっていることを、
恥ずかしながら知りませんでした。
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なっちゅんさんからコメントをいただき、
調べたらこちらのページがヒットしました。
蜂に刺されたときの症状と対策
蜂に刺されたときの症状には、刺された場所のまわりにだけ現れる局所症状と、体中にでる全身症状とがあるので、症状をよく観察し、直ちに緊急処置を行うこと。
軽い全身症状では、顔や体が酒を飲んだ時のように赤くなり、全身にかゆみが起こり、なんとなくだるい、苦しいといった症状があらわれます。
中ぐらいの全身症状では、軽い全身症状に加えて、喉がつまったような感じがして胸苦しくなったり、口が渇き、口のなかがしびれたような感じがします。また、腹痛、下痢、吐き気を起こしたり、さらに頭痛、目まいがしたり、全身がむくんだりします。
重症症状では、息をするのも苦しくなり、物を呑み込めなくなり、声がしわがれて、全身の力が抜け、その場にうずくまってしまいます。また、目が見えなくなったり耳が聞こえなくなったりして、意識がはっきりしなくなったりしますので、一刻を争って緊急処置をとらなければ、死亡してしまいます。
林業・木材製造業労働災害防止協会の資料から引用
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刺す蜂の中で怖いのは、
スズメバチとアシナガバチで、
夏から秋がピークで危険です。
こんなことも知りませんでした。
アナフィラキシーはこわいです。
アレルギー体質の人は、
くれぐれも注意してください。
この連載を書いてくださった、
朝日新聞社の鍛治信太郎記者に感謝しています。