医学講座
マイクロサージャリーを支える日本の町工場
マイクロサージャリー学会2021で印象に残った発表です。
Family-run Factories Supporting Microsurgery
マイクロサージャリーを支える日本の町工場
…と訳してみました。
杏林大学病院 形成外科教授
多久嶋亮彦たくしまあきひこ先生が、
第44回日本マイクロサージャリー学会会長の時に作られたビデオです。
■ ■
私ははじめてこのビデオを見ました。
感動しました。
NHKのプロフェッショナルのような構成でした。
世界で最初に指の再接着をなさった、
奈良県立医大名誉教授の玉井進先生へのインタビューがありました。
玉井先生が恩師の恩地裕先生から、
切断指再接着の勉強をすすめられたこと、
縫合糸や針、
血管用クリップで苦労されたことを知りました。
■ ■
続いて、東京大学名誉教授の波利井清紀先生のインタビューがありました。
波利井先生がマイクロサージャリーをはじめられた頃には、
秋葉原で時計屋さんが使うピンセットを買ってきたそうです。
今のようにいいステンレス製がなかったので、
一晩おくとピンセットはさびだらけになっていて、
そのさびを落として使われたそうです。
たくさんのご苦労があってマイクロサージャリーが進歩したことを知りました。
町工場の職人さんが、
持針器を作ってくださっている現場もわかりました。
■ ■
私たちが手術で使っているナイロン糸が、
どうやって針につけられているかも、
40年形成外科医をやっていて、
はじめて見て知ることができました。
ベテランの女性が、
みごとな指使いで、
いっぽん一本糸を針につけていました。
まさに職人技でした。
私たちの手術を支えてくださっている、
日本の医科器械製作の会社を見ることができました。
形成外科の若い先生や、
看護師さんにもぜひ見ていただきたいと思いました。
いいビデオを作ってくださった多久嶋亮彦教授に感謝いたします。
“マイクロサージャリーを支える日本の町工場”へのコメント
コメントをどうぞ
ナイロン糸はお医者様が
針の穴に通すのではないのですね。
その事を初めて知りました。
素人だからですね、意表をつかれました。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。手術で使う糸は看護師さんが針につけるタイプと最初から針に糸がついているタイプがあります。マイクロサージャリーに使う糸は髪の毛より細いので看護師さんが針につけることはしません。最初の切断指再接着に使われた糸は米国から持ち帰られた8-0ナイロンという糸だったそうです。その後、日本の会社に依頼して極小の針に髪の毛より細い糸をつけてもらったそうです。このようなご苦労があってマイクロサージャリーが進歩したことを知りました。
マイクロサージャーリーは町工場の人に支えられて進歩してきたのですね。
ピンセットは仕事で使いますので10本以上あります。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。東京の町工場で職人さんが持針器やハサミを作っているところをビデオで見せてもらいました。素晴らしい技術で感動しました。後継者がいないところもあるそうです。日本のものづくりはすごいです。
患者さんが良くなるには、
お医者さまの精一杯施してくださる
手術はもちろんですが、
それに至るまでの初期の工夫や、
職人さんの丁寧な技も支えとなって
いるのですね。今日も勉強になりました。
たくさんの医療従事者の皆様にも
見て、知っていただきたいですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。私は40年以上形成外科医をしていますが手術器具を作ってくださる町工場や職人さんを初めて見ました。持針器やはさみなどにこだわりを持って製作されていました。職人さんの『切れすぎても困る』切るところまででピタッと止まるはさみというお言葉をお聞きして『なるほど』と思いました。日本の町工場はすごいです。後継者難だけが心配でした。