医療問題
出産事故-補償-
平成20年1月24日、朝日新聞朝刊の記事です。
出産事故2,500万円補償
2008年度から-重い脳性まひ救済-
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政府方針で導入される、出産時の医療事故で重い脳性まひになった子の救済制度について、
厚生労働省所管の財団法人・日本医療機能評価機構は1月23日、子1人当たりの補償額を計約2,500万円とすることを決めた。
事故直後の一時金と、成人するまでの分割給付金に分ける。
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救済対象となるには出産を扱う病院・医院が保険に加入している必要があり、 同省などが加入を呼びかける。
2008年度中に開始する。
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救済対象は、妊娠33週以降に体重2,000グラム以上で誕生するなど、通常の妊娠・出産で、重い脳性まひになった子。
年間500~800人程度を見込む。
未熟児や先天的に脳に異常がある子らは原則対象外。
医師に過失がなくても救済されるのが特徴で、産科医不足の一因とされる医療紛争を減らす狙いもある。
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補償金は、出産後の一時金(500万~600万円)と、
子どもが成人するまで支払われる分割金(1ヵ月当たり約8万円、総額約2,000万円)に分けて給付。
子どもが成人前に死亡した場合は遺族に給付される。
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医療機関が支払う保険料は出産費用に転嫁されるとみられ、個人負担が3万円程度高くなる恐れがある。
このため同省は、制度開始にあわせて健康保険から支払う出産育児一時金(現行35万円)を引き上げる方針。
(以上、朝日新聞から引用)
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赤ちゃんは、お母さんのお腹にいる時は、お母さんの血液から、胎盤を通じて酸素をもらっています。
出産と同時に、赤ちゃんは自分で呼吸を始め、『おぎゃぁ!オギャァ!』と言って、酸素を自分で取り込みます。
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産道を通って、無事に生まれるまでの間に、『何か?』が起こると、赤ちゃんの脳に酸素が届かなくなります。
出産時の脳性マヒは、簡単に説明すると、こういう‘事故’です。
お母さんが健康でも、赤ちゃんが健康でも、事故が起こる可能性はあります。
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・妊娠33週以降
・体重2,000グラム以上
・通常の妊娠・出産
と条件がついていて、
・未熟児
・先天的な脳の異常
は原則対象外となっています。
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脳性マヒになるのは、出産時だけではなく
出生前
・胎内感染
・母体の栄養障害や中毒
・胎児の黄疸
・未熟児
出生後
・脳炎
・脳内出血
・中枢神経感染症
などによっても起こります。
1,000人につき2?4人の割合で起こり、
早産児にはその10倍と言われています。
こちらの萬有製薬HPに詳しく記載されています。
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以前から私が書いているように、どんなに医療が発達しても、100%安全なお産はありません。
お母さんだけではなく、赤ちゃんにも危険は生じます。
不幸にして、悪い状態で生まれた子供を助けてくれるのが、小児科医です。
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私は、平成元年から平成6年まで、市立札幌病院に勤務しました。
市立札幌病院には、NICUがあり、服部先生、中島先生という、素晴らしい先生が活躍していらっしゃいました。
NICUは未熟児センターと呼ばれていました。
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私の友人や後輩の子供さんが、1,000㌘にも満たない、極小未熟児で生まれた時に、
見事に助けてくださったのが、未熟児センターの先生でした。
私も、形成外科医として、未熟児センターへよく往診に出かけました。
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周産期医療ということばがあります。
元気な赤ちゃんを産むには、お母さんのお腹にいる時から、赤ちゃんをしっかり診断して、
もし、異常があれば、生まれる前から治療をしたり、治療の準備をします。
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産科医はもちろん大切ですが、小児科医も大役を果たします。
残念なことに、産科医も小児科医も、不人気なのが現状です。
今回の出産事故の補償は、一つの保険システムです。
救済されるのは、脳性マヒの方の一部です。
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国は、少子化対策の一環として、
不幸にして脳性マヒになった子供さんすべてが、救済されるようなシステムをつくるべきです。
生まれてくる子供に罪はありません。
脳性マヒで困るのは、子供の時期だけではありません。
生涯にわたり、ハンディが残ります。
障害者に優しい国づくりが、日本を豊かにすると思います。