医学講座
市立札幌病院2年連続の赤字
平成28年11月12日、北海道新聞朝刊の記事です。
市立札幌病院2年連続の赤字_2015年度決算資金残高が年々減少
市立札幌病院の経営が厳しさを増している。2015年度決算では経常損失が約13億円に上り、2年連続の赤字となった。病床利用率の低迷が要因という。2016年度にも病院事業会計の貯金に当たる資金残高が底をつく恐れがあり、外部専門家を含む経営健全化会議を設置し、改善に乗り出した。
2015年度決算によると、診療収益などを含む経常収益(収入)は216億6600万円で、前年度比4.8億円増。医師らの給与費などを含む経常費用(支出)は229億6500万円で、7.4億円増だった。前年度に比べて増収だったものの、支出の伸びが上回り、赤字幅が広がった。
主な要因が、収入の6割を占める入院収益の伸び悩みだ。病床利用率が過去5年で最低の65.9%と低迷した2014年度は、125億7千万円だった。
2015年度は年度途中で51床削減し747床にしたため、病床利用率は68.6%と若干改善。入院収益も128億1500万円と少し増えた。ただ、2016年度も9月末までの病床利用率は69.8%。3年連続で70%を割ると、総務省から経営改善計画の提出を求められる。
患者の在院日数が長くなると診療報酬が減る仕組みで、入院期間の短期化が進んでいるためという。経営改善には、新しい入院患者を獲得する必要があるが、市内の他医療機関との競合もあり、思うように増えていない。
この影響もあって資金残高は年々減少し、2015年度決算では10億5200万円となった。2016年度も改善しなければ、一般会計からの繰り入れによる赤字補填(ほてん)が必要になる可能性がある。
今月上旬には、外部コンサルタントを入れた経営健全化会議を立ち上げ、経費節減や委託業務内容の見直しなどの協議を始めた。新しい入院患者を増やすため、8月には札幌市内の診療所の医師が市立病院の医師に電話で直接、患者の紹介を依頼できる専用ダイヤルも開設した。病院側は「診療所との連携強化などで、経営改善を図りたい」としている。(坂本有香)
■ ■
市立札幌病院で医師としての青春時代を送った私には、
とても残念な記事です。
声を大にして言わせてもらいます。
赤字になったのは、
国の医療政策のためです。
市立札幌病院のせいではありません。
市立札幌病院の院長がお気の毒です。
■ ■
私の家に一番近い大きな病院は、
市立札幌病院です。
病院の周囲にはたくさんのマンションがあります。
残念なことですが、
近くの住民が市立札幌病院にかかりたくても、
紹介状がないと
初診時に5400円がかかります。
再診時にも2500円が加算されます。
■ ■
これは、
市立札幌病院にはかかるな!
紹介状のない患者さんは来ないで!
…と言っているのと同じです。
市立札幌病院で働いている看護師さんが、
コンタクトで赤くなった目を
ちょっと診てもらいたくても、
市立札幌病院にはかかれないのです。
■ ■
病院で働いているのに、
自分の病院にかかれないなんて、
変な話しです。
国が決めた医療制度のためです。
通院する患者さんが少なくなると、
当然、入院する患者さんも少なくなります。
悪循環です。
■ ■
病床利用率は、
飛行機でいうと搭乗率です。
空席で飛行機を飛ばしても赤字です。
病院も空床が多いと、
赤字です。
私がJA帯広厚生病院形成外科主任部長だった時は、
常にベッドの空床率を気にしてました。
(当時は稼働率と言ってました)
■ ■
空床が多い科は、
ベッド数が減らされます。
当然、
医師数も削減されます。
各科のトップは、
自分の代でベッド数が減らないように、
毎日一生懸命働いていました。
主任部長も楽ではありませんでした。
市立札幌病院の赤字が減ることをお祈りしています。