医学講座

主任部長の苦悩

 昨日の院長日記に、
 JA帯広厚生病院時代に、
 毎年売上目標があったと書きました。
 JAの病院だけではなく、
 国公立や民間の病院にも、
 売上目標ばあると思います。
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 どの病院でも、
 毎年予算を組みます。
 金融機関から借入をして、
 大きな建物を建てて、
 立派な設備を整えるには、
 お金が必要です。
 お金を借りる時には、
 必ず事業計画書を提出します。
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 チェーン店の美容外科JAの病院が違うのは、
 たとえ売上目標が達成できなくても、
 お給料が減らないのが、
 JAの病院や国公立病院です。
 高いお給料をもらっている先生が、
 さっぱり働かなくて売上が大きく減ると、
 さすがに病院でも問題になりますが、
 基本的には俸給表という給与体系で医師の給与が決まります。
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 チェーン店の美容外科の給料は、
 クリニックごとに違うシステムです。
 儲けや売上によって、
 医師の給料が変わるのはどこでも同じです。
 以前は年収数千万円の給与を提示していた、
 有名な美容外科もありました。
 売上が減ると、
 先生や看護師への給料が払えなくなります。
 倒産した美容外科もたくさんあります
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 JA帯広厚生病院の形成外科主任部長、
 すごいと思いませんか?
 北海道の十勝地方で、
 一番大きな病院です。
 私は40歳から43歳まで勤務しました
 正直に言うと、
 毎年の売上目標達成は大変でした
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 当時のJA帯広厚生病院形成外科には、
 3人の形成外科医が勤務していました。
 私を含めて北大形成外科から派遣された形成外科医です。
 私は学位記をいただいて、
 北大の大浦武彦教授から、
 JA帯広厚生病院の固定医として勤務していました。
 固定医とか固定というのは、
 医者の業界用語です。
 自分で退職の意思を表示しない限りは、
 JA帯広厚生病院に永久就職するという意味です。
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 私以外の2人の医師は、
 北大形成外科医局からの派遣です。
 人材派遣会社からの派遣とは違います
 北大形成外科から、
 JA帯広厚生病院に行きなさいと言われて、
 北大から期限付きで赴任した先生のことです
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 派遣された医師の人事権は、
 北大形成外科の医局にあります。
 JA帯広厚生病院の院長が、
 この先生にはぜひ長く帯広にいてほしいと思っても、
 主任部長が最低3年はいてほしいと思っても、
 ある日突然、大学の都合で人事異動になることがあります。
 これが形成外科主任部長の一番の苦悩でした。
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 全国どこの病院でも同じだと思います。
 自分が持っている知識とか技術を、
 下の先生に伝承するのが私たち上級医の仕事です。
 自分以外の2人の先生が優秀だと、
 病院から提示された売上目標も楽にクリアーできます。
 ところが、
 3人だった常勤医が大学の人事で、
 ある日突然2人になることもあります。
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 医師3人でやっていたことを、
 2人でこなすのはかなり大変なことです。
 形成外科専門医が3人なのと、
 形成外科専門医1人と研修医2人では、
 できる手術に大きな違いがあります。
 大学から派遣される医師によって、
 仕事内容も売上も大きく違ってきます。
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 私がJA帯広厚生病院形成外科主任部長だったのは、
 今から20年前です。
 今は大学医局を選ぶ医学部卒業生が減りました
 大学も派遣する医師が少なくて困っています。
 常勤医3人だった形成外科が、
 ある日突然、部長職が一人になることもあります。
 売上目標達成どころか、
 毎日の患者さんの診療にも支障をきたします。
 私の形成外科主任部長時代の一番の苦悩は、
 下の先生が一年毎に変わることでした。
 40歳を過ぎていろいろ考えて、
 私は開業医の道を選びました

“主任部長の苦悩”へのコメント

  1. なっちゅん より:

    1年ごとに下の先生が変わるのは
    大変なご苦労だと思います。
    折角伝授しても
    1年限りで又振り出しからなのですから。

    先生は独立して正解だと思います。
    日記を披露して
    相談メールに答えて
    大変だと思いますが
    沢山の方を救ってると思います。

    お身体に気をつけて頑張られてください。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。大きな病院にはそれなりの悩みがあります。一人でできることには限界があります。業績を上げようとするとそれなりのマンパワーが必要です。今の状態は慢性的な医師不足でどこの病院も苦労していると思います。

  2. さくらんぼ より:

    病院の中身はよくわかりませんが、大学病院の皮膚科に長く通院していましたが何回か主治医が代わりました。せっかくなれたのになあ〜。また先生との信頼関係を築いたと思ったら先生が交代でした。でも 私は当初 荻野先生の事件が大学と整形外科、形成外科、皮膚科の絡んだ事件とは知らずその当時皮膚科の主治医だった先生に悩みを話したことがありました。その直後先生はコロラド大学に留学されてしまいましたが、相談にはのってくださる優しい先生でした。 妹も秋田のJA病院でガン治療をしましたが、婦人科も行くたびに先生が代わり大変だと言ってました。執刀医も手術後二週間で寿退職し、今は常勤の山形の寒河江出身の偉い先生にみてもらっているので安心だと言っています。
    偉いから安心というわけではなく ずっと同じ先生に診てもらえる安心感です。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。医師を派遣する大学側の事情もわかります。最近の若い先生の中には、専門医も取らずに急に辞めてしまったり、専門医取得直後に辞める先生もいます。全国どこの大学でも同じようです。患者さんのお気持ちも理解できます。民間の病院経営者にとって優秀な先生に長く勤めてもらいたいのが本音ですが、なかなか難しいようです。

  3. くくるん より:

    指導もして、売上達成も考えて、病院(美容も?)上級医先生の苦悩はどれほどなんですかね。

    患者の満足度や売上目標のことを考えたら、下の先生に早く成長してもらいたいという気持ちにもなりますね。
    でも下の先生がすぐに変わると、また最初から教え直しですよね。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    自分たちも教えていただいて今があるので偉そうなことは言えません。ただストレスが多くて辞める上級医がいます。

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