医学講座
粉瘤(ふんりゅう)の手術2017②
粉瘤がくさいのは、
皮膚にできた、
嚢腫のうしゅという袋に、
垢あかがたまって、
その垢あかに、
ばい菌がつくからです。
ふつうは、
皮膚に常在するブドウ球菌などが感染します。
■ ■
感染していない粉瘤は、
くさくないこともあります。
でも、
粉瘤には穴があいていて、
その穴から、
いつばい菌が入るかわかりません。
きれいなお嬢様の皮膚にも、
常在菌という菌がいます。
ふつうの菌が感染しても、
死ぬことはありません。
■ ■
粉瘤(ふんりゅう)の手術2013⑤
2013年7月2日の院長日記に書きました。
粉瘤は化膿しても…
適切に処置をすると死ぬことはありません。
人喰いバクテリアとか…
劇症型溶連菌感染症という…
恐ろしい菌に感染しない限り…
命にかかわることはありません。
人食いバクテリアで悪化した感染性粉瘤を…
一例だけ救命救急センターで診たことがあります。
■ ■
人食いバクテリアは、
2012年2月25日の
第83回日本形成外科学会北海道地方会①
…に書いてあります。
ふつうの人は粉瘤が感染しても死ぬことはまずありません。
免疫能が低下した人。
免疫抑制剤を内服している人など…
特別な状態でなければ大丈夫です。
■ ■
2016年に札幌美容形成外科で手術をした、
感染性粉瘤の患者さんです。
嫌気性菌けんきせいきんという、
ふつうではない菌に感染していました。
外から見ただけではわかりませんでした。
血液検査で白血球数が増えていて、
CRPという炎症反応の数値が異常でした。
■ ■
切開をして、
嚢腫のうしゅという袋と、
袋の中身をきれいに取り出しました。
周囲の組織もとけていたので、
周囲組織も切除しました。
取り出した後で、
きれいに洗浄をして、
抗生物質の点滴もしました。
■ ■
切開すると、
とてもくさいにおいがしました。
においをかいで、
嫌気性菌感染けんきせいきんかんせんを疑いました。
私は大きな病院に入院をすすめましたが、
患者さんは帰宅したいというご希望でした。
帰宅していただいてからも、
患者さんと連絡を取っていました。
■ ■
翌日朝になっても、
熱がありました。
診察にいらしていていただき、
私が入院をすすめました。
斗南病院形成外科の佐々木了先生にお願いして、
感染していた部分を再度切開し、
入院して、
抗生物質の点滴をしていただきました。
■ ■
患者さんは無事に退院されました。
嫌気性菌感染でした。
粉瘤ができた部位は、
大腿部でした。
壊死性筋膜炎になるところでした。
その患者さんは、
札幌美容形成外科を受診する前に、
皮膚科の先生から抗生剤をいただいていました。
抗生剤で粉瘤の感染は改善しませんでした。
■ ■
札幌美容形成外科を紹介され、
当院で切開と感染部位の摘出手術をしました。
残念なことに、
嫌気性菌感染は厄介でした。
手遅れになると、
壊死性筋膜炎になるところでした。
きわめてまれな例です。
粉瘤の感染でも、
重症になると命にかかわることがあります。
■ ■
最初に診てくださった皮膚科の先生はベテランです。
信頼できる先生です。
私も感染性粉瘤を摘出すると、
炎症は治ると思っていました。
ところが、
嫌気性菌感染は難治性でした。
斗南病院で治療をしていただかなければ、
もっと症状が悪化していた可能性があります。
粉瘤の感染も重症になると大変です。
しっかり診察をして治療しないと大変なことになります。