医学講座
フシジンレオ軟膏
昨日のバラマイシン軟膏に続いて、
軟膏シリーズの続きです。
今日はフシジンレオ軟膏です。
私が医者になる前からある薬です。
フシジン酸ナトリウムが主成分です。
皮膚科でとびひなどに処方されることがあります。
黄色ブドウ球菌などの、
グラム陽性球菌に強い抗菌力があります。
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バラマイシン軟膏との違いは、
やけどなどの創面に塗ると、
痛いです。
緑膿菌りょくのうきんなどの、
グラム陰性桿菌には抗菌力がありません。
使い方を間違えると効きません。
耐性菌ができることもあります。
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バラマイシン軟膏は、
痛くない
いい軟膏です。
でも、
欠点があります。
MRSAえむあーるえすえいという、
耐性菌には効きません。
MRSAに感染すると、
たとえフィブラストスプレーを使ってもあとが残ってしまいます。
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北大形成外科の関連病院に、
形成外科メモリアル病院がありました。
2002年1月に、
時計台記念病院に統合されました。
私は若い時に、
形成外科メモリアル病院に2回勤務しました。
たくさんの熱傷患者さんの治療をしました。
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形成外科メモリアル病院では、
熱傷患者さんに、
バラマイシン軟膏と、
フシジンレオ軟膏を、
1:1で混合した軟膏を使っていました。
薬局長の八木先生が苦労して混合してくださいました。
八木先生のお名前から、
YGわいじー軟膏と呼んでいました。
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私の恩師、元市立札幌病院院長の吉田哲憲先生は、
日本熱傷学会特別会員です。
吉田先生が、
日本熱傷学会で、
抗菌性外用材について報告したことがあります。
私も調査のお手伝いをさせていただきました。
仲間うちで、
北大形成外科抗生物質班と呼ばれていました。
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北大形成外科の関連病院を調査した結果、
多くの病院がMRSA感染で苦労していたのに、
バラマイシン軟膏と、
フシジンレオ軟膏を混合した、
YG軟膏を使っていた形成外科メモリアル病院では、
MRSAがゼロでした。
この調査結果を知っている人は、
少なくなってしまいました。
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抗生物質軟膏を熱傷創面に使うのを嫌う先生がいます。
耐性菌が問題になることも理解できます。
でも、
せっかくフィブラストスプレーを使っても、
熱傷創感染を起こすと大変です。
62歳の熱傷専門医である私は、
小児の熱傷患者さんには、
フィブラストスプレーと、
バラマイシン軟膏とフシジンレオ軟膏を混合した軟膏をすすめます。
この軟膏は痛くありません。