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精子提供で人工授精、施設減少_ネットでは個人やりとり

 平成29年3月26日、朝日新聞朝刊の記事です。
 精子提供で人工授精、施設減少 ネットでは個人やりとり
 夫が不妊症の夫婦を対象に、他人の精子を使った人工授精(AID)に取り組む医療施設が、この14年で26カ所から7カ所に減ったことが朝日新聞の取材でわかった。一方、ネットを介して、個人が精子を提供する動きが出ている。規制もなく、トラブルや子どもへの影響を懸念する声もある。
 AIDは、提供精子を器具を使って人工授精する。国内では1940年代から始まったとされる。日本産科婦人科学会(日産婦)が1997年に営利目的の精子提供を禁じて、対象を婚姻した夫婦に限るルールをつくり、実施施設を登録制にした。登録施設は、2003年に26カ所あったが、2016年には14カ所に減少。朝日新聞の取材では、このうち現在も実施している施設は7カ所だけだった。
 減少の背景には、子どもに精子提供者の情報を知らせる「出自を知る権利」が世界的に認められつつあり、将来のトラブルを心配して提供者が減っていることなどがある。感染症検査で一時凍結した精子を使うため、妊娠率が数%という低さも敬遠される一因だ。2012年に中止した施設は「出自を知る権利が認められたら対応できない」と説明。実施中の複数の施設も「提供者が集まりにくい」と回答した。
 施設が減る中、国内でAIDを最も多く手がけている慶応大学病院は、1年以上先まで予約で埋まっている。
 自民党は2013年、AIDで生まれた子の父親は夫と明確化し、精子や卵子の提供のあっせんなどを規制する法案の検討を始めた。しかし、議論が深まらないまま、今の法案では具体的な規制は削除。取りまとめ役の古川俊治・参院議員は「まずは親子関係を最優先したい」としているが、法案提出のめどはたっていない。

 〈AIDに詳しい吉村泰典・慶応大学名誉教授の話〉 精子の提供は倫理的な問題を伴い、学会という民間団体が決めたルールしかない現状は普通ではない。生まれた子の父親が誰かという基本的なことすら法的に不明確なままだ。生まれてくる子のためにも制度化の議論を進めるべきだ。
 自称「精子バンク」、60サイト以上 性交渉も選択肢
 他人の精子を使った人工授精を手がける医療機関が減る一方、ネット上には「精子バンク」などと称して精子の提供を掲げるサイトが、活動休止中も含めて60以上存在する。多くは「無償」や「ボランティア」とし、個人で運営している。精液を入れた市販の注射筒を渡して、女性が自分で注入する方法のみのサイトがある一方、性交渉を選択肢とするところもある。
 都内に住む20代後半の女性は「無償の精子バンク」を運営する男性の提供で、長女(1)を生んだ。胸に抱いた長女を見つめて「そっくりでしょ」と笑う。スマホには、長女によく似たまゆ毛の男性の写真が映っていた。「男性への恐怖心や嫌悪感」で結婚はしたくなかったが、子どもは欲しかった。医療施設ではAIDを受けられないため、ネットで提供者を探した。
 複数のサイト運営者と面会し、4人目の男性に「こちらの気持ちをくみとってくれている」と感じた。1年近くにわたり月1、2回、注射筒をもらって、自分で人工授精を十数回繰り返した。うまくいかず、妊娠の確率を上げようと性交渉した結果、妊娠したという。「後悔は何もない。この子の質問には答えていきたい」と話す。
 提供した男性は関東地方の40代の既婚者だ。「子どもがなかなかできず、別の形で子どもを残したい」と、妻に秘密で7年前から始めた。これまでに28人に提供したという。子どもが生まれると、誕生日に毎年メールを送る。「以前は最後の最後にたどり着く感じだったが、割と早い段階で連絡してくる人が増えた。子どもが望めば、名前や住所が特定されない範囲で会いたい」と話す。
 ただ、医療施設を介さない提供は、感染症の厳格な検査やカウンセリングがなく、提供者とのトラブルや経緯を知った子どもへの影響も心配される。AIDの相談活動をする清水清美・城西国際大学教授は「医療施設が提供に応えられない中、個人的な提供に安易に流れないか」と懸念する。
 慶応大学病院でAIDを受けて、長女を授かった沖縄県の男性(35)は「どういう経緯で生まれたのかを親自身が堂々と言えることが大事だと思う。医療機関が実施することは大きな意味がある」と語る。
 都内の女性に精子を提供した男性は「提供する側も受ける側も、互いに素性が知れず、自己責任でやっていて、リスクを感じる。そこまでして欲しい人がいるのだから、公的な管理の下でやる方が良いという議論が起こってしかるべきだと思う」と話す。

(以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 難しい問題だと思います。
 私はネットで見つけるのは?
 どうか?
 …と思います。
 リラ冷えの街2014
 2014年5月17日の院長日記です。
 この院長日記で、
 自分の父親を探している人のことを書きました。
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 「リラ冷えの街」という、渡辺淳一さんの小説があります。
 昭和45年に北海道新聞日曜版に連載された小説です。
 当時、本間家では…
 朝日新聞しか購読していなかったので、
 私はこの連載は読んでいません。
 私が札幌西高校1年生の時です
 札幌オリンピックが昭和47年でした
 オリンピックを目指して札幌の街づくりが盛んでした。
      ■         ■
 医学生と人工授精が関係する小説です。
 私が学生の頃から、
 札幌医大産婦人科では不妊治療をしていました
 人工授精に使われる精子は、
 医学生が提供すると言われていました。
 数人分を混ぜて…
 誰のかわからないようにすると言われていました。
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 医学生のアルバイト?があったかどうかわかりません。
 少なくとも私自身や私の友人に、
 精子提供者はいませんでした。
 あまりおおっぴらにできないので、
 おそらく医局との個人的なつながりで?
 契約していたのかも?
 …と想像します。
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 最近になって、
 人工授精で生まれたと知った人が、
 自分の遺伝上の父を探して、
 大学医学部に情報開示を請求したという記事を読みました。
 お気持ちはよく理解できます。
 でもおそらく資料は残っていないと思います。
 昭和40年代~50年代は、
 将来情報開示請求があるとは考えていなかったと思います。
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 もし私が遺伝上の父を見つけるとしたら、
 大学医学部の卒業記念アルバムを探します。
 学会で知り合った先生を通じて、
 先輩や後輩を紹介してもらいます。
 同級生だったら、
 ○○先生の若い頃にそっくりだ
 …とわかると思います。
 DNAを調べるより早いと思います。
 遺伝上の父は難しい問題です。
      ■         ■
 不妊治療は必要だと思います。
 精子提供も選択肢の一つだと思います。
 私は、
 しっかりと法整備をして、
 医療機関が、
 営利を目的としないで
 他人の精子を使った人工授精AID)ができるのがいいと考えます。
 子供には父親を知る権利があると思います。 

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