医学講座
美容外科の魅力と魔力
2017年7月1日の第129回日本美容外科学会(仙台)
もう一つ有意義なご発表がありました。
特別発言
美容外科の魅力と魔力
北里大学名誉教授
○塩谷信幸
[抄録]
形成外科医にとって「再建と美容は車の両輪」、という言い方がよくされます。
本当にそうでしょうか?まず、再建と美容に線を引くことは可能か、という疑問です。
これは再建を復元と考えるからで、外傷で失われた鼻を再建する場合、もし、元の鼻が鼻ぺちゃだったとしたら、わざわざ見っともないぺちやんこの鼻を作りますか。いや、本人の喜ぶような立派な鼻、つまり美しい鼻を目指すでしょう。再建と美容と分けるのは、「醜形の原因」が外傷、腫瘍などの病的なものか、生まれつきなのかだけの達いで、目的は「美」にあります。そして手段、つまり「手術方法」も再建と美容で異なることはない。ということを前置きとして、美容外科の魅力の最たるものは造形の楽しさにあると申し上げたい。鼻を例にとれば、数ミリ、1度、2度の角度を変えただけで「決まった」という感じを得た場合の達成感。これこそ何物にも代えがたい魅力といえます。
その反面、魔力というか落とし穴もあります。まず自由診療のため、とかく「イージー・マネー」としか捉えられない。また、良くも悪くもリスクを冒したくないので、臆病になる。新しいことに挑戦しなくなる。もちろん、怖さを知らない素人美容外科医が、無茶苦茶なことをやらかすのも問題ですが。また、美容の目的は究極はセックス・アピールにつながります。エロスを裏側からメスでマニピュレートしているうちに、倫理観が曖昧になり身を滅ぼすものも過去にありました。そういうわけで美容外科に関わる医師には、美的感覚の他に、患者とのコミューニケーションの能力、厳しい倫理観が再建外科以上に要求されます。こうして再建外科が美容外科の基盤として必要な反面、美容外科の経験が再建外科医をさらに洗練されたものにすると僕は信じています。
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このご発表に塩谷先生ご自身が、
ブログで次のように書かれています。
仙台日帰り
さすがに今日は疲れました。
「日本美容外科学会」に参加のため、仙台を日帰りしました。
だが新幹線は早い。はやぶさで東京仙台間わずか1時間半。
でも行った甲斐はありました。
僕は特別発言で、「美容外科の魅力と魔力」について20分話させてもらいました。
美容外科は形成外科医がまともに取り組むべきと我々は考えます。
造形美の極致、美容外科の魅力はこれに尽きます。その技術で患者さんのニーヅに答えられた時の喜び。
ヘルタースケルターの蜷川監督が言う「美のヒエラルキー」に苦しられてきた女性を、その「コンプレックス」から救い出す医療。
だがそれには落とし穴があります。
自由診療として安易な金儲けの手段に堕することです。
そのためには他科にも増して、厳しい倫理観が要求されます。
僕が美容外科を志す若い形成外科医に訴えたかったのがこういう「美容外科の魅力と魔力」です。
いささかでもこの想いが届いたかどうか・・・
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塩谷信幸先生は、
私の恩師、大浦武彦先生と同年代です。
私の主治医、大竹尚之先生の師匠です。
日本全国に、
たくさんの優秀な美容形成外科医を育てられました。
日本の形成外科出身の、
美容外科医の父とも言える先生です。
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塩谷先生の想いは、
会場に十分伝わりました。
残念なのは、
会場に来られなかった、
若い形成外科医に、
ぜひ塩谷先生の想いを伝えたいと思いました。
技術で患者さんのニーヅに答えられた時の喜び
私もその通りだと思って毎日手術をしています。
塩谷信幸先生ありがとうございました。