医学講座

解剖学実習

 私が医学生だった30年前は、
 入学して3年目から医学部の専門科目の勉強が始まりました。
 解剖学、生理学、生化学です。
 医学部へ入学できたものの、
 解剖学実習は恐怖でした。
 札幌医大は単科の医科大学だったので、
 先輩たちがロッカー室で、黄色く変色した白衣を着て、
 解剖実習室へ入って行くのを大変そうだなぁと見ていました。
      ■         ■
 勇敢な同級生は、先輩が実習している部屋を覗いたりしていました。
 私にはとてもそんな勇気はなく、どうしよう?と思っていました。
 とうとう3年生の春がやってきました。
 北 杜夫(きた もりお)さんのドクトルマンボウシリーズか何かを読んで、
 解剖学実習の日はご飯を食べられないとか?
 手に臭いがしみついてとれないとかを心配していました。
      ■         ■
 解剖実習の日がやってきました。
 広い解剖実習室に、真新しい白衣を着て入りました。
 白衣の下は、汚れてもいいようにジャージを着ていました。
 実際にご遺体の脂肪がついたり、体液がついたりして汚れます。
 たしか、白い帽子もかぶっていたような気がします。
 解剖実習室では、ステンレスの解剖台の上にご遺体が載せられ、
 ビニールシートがかけられていました。
 遺体の乾燥を防ぐためです。
      ■         ■
 全員がそろったとこで、黙祷をささげて実習がはじまりました。
 シートをはがすと、木綿の薄い布が全身にかけられています。
 生きている人間とは違い、薄茶色に変色しています。
 体格のいい方、痩せた方、などさまざまです。
 私たちは、12人で一体を解剖させていただきました。
 2人一組がペアーになって、左右に分かれて
 頭部、体幹、下肢に分かれて解剖しました。
      ■         ■
 合計で3体のご遺体を解剖させていただきました。
 私は下肢→頭部→体幹の順番でした。
 男性→女性→男性でした。
 ですから、トータルで4人で一体を解剖したことになります。
 解剖は、実際に人体を切り刻んで、構造を覚える学問です。
 どんな正確な教科書よりも、実物が確かです。
 これ以上の教材はありません。
      ■         ■
 学生がどのような手順で解剖するかは、各大学に任されています。
 札幌医大では、当時は頭部、体幹、下肢に分けていましたが、
 現在では違うと思います。
 教える、教授の方針で解剖実習の仕方も異なってきます。
 ただ、覚える知識量は、どこの医科大学や医学部でも同じです。
 とにかく、頭のてっぺんからつま先まですべてです。
 人体という世界地図を覚えて、どこに何があるかを覚えるのです。
      ■         ■
 日本語以外に、ラテン語の学名、
 英語でも覚えます。
 今なら、絶対に覚えられない自信があります。
 若いから覚えられたのです。
 自分の専門領域以外の部位は、忘れてしまいますが、
 今でも教科書を見ると思い出せます。
 私たち外科医は、実際に生きている人を切っています。
 どこにどんな血管や神経があるか知らないと、
 間違って切ってしまい医療事故になります。
      ■         ■
 内科の先生や放射線診断学の先生は、
 解剖を知らないと、診断もできません。
 内視鏡で体の内部を見る時も、
 解剖学を知らなければ、組織をキズつけてしまいます。
 現在の医学教育では、解剖学の講義時間数や、
 解剖学実習の時間が少なくなっていると聞きます。
 おじさん先生の考えは、解剖こそ医学の真髄。
 解剖を軽視しないで欲しいと願っています。

“解剖学実習”へのコメントを見る

医学講座

解剖の教科書

 医学部はお金がかかる。
 とよく言われます。
 私大の医学部は入学金も授業料も高額です。
 国公立大学は、医学部も他の学部も授業料は同じです。
 私が札幌医大の学生だった30年前は、
 授業料は一ヵ月3,000円でした。
 子供がいた同級生が、
 ‘幼稚園より安い’と言っていたのを覚えています。
 私の数年前に入学した先輩は月1,000円でした。
 留年しても入学時の授業料が維持されるシステムでした。
      ■         ■
 他学部と違ったのは、修業年限が6年間だったこと。
 これも、今では獣医学部や薬学部も6年間になりました。
 ですから、医学部だからといって、
 特別にお金はかかりませんでした。
 ただ高価だったのが、教科書代金でした。
 今では安価な教科書もありますが、
 当時は、廉価版といえど、一冊一万円程度しました。
      ■         ■
 授業料と教科書代金は親が出してくれました。
 ただ、一冊数万円もする本は、
 さすがに買ってくれとは言えませんでした。
 医学は日進月歩です。
 30年前と現在では、覚える内容もガラリと違います。
 30年前の教科書で、
 唯一、現在も使えるのが、
 解剖学の教科書です。
      ■         ■
 人体の構造は、30年経っても変わりません。
 私は30年前に使った教科書を今でも見ることがあります。
 また、30年前は高価で買えなかった教科書を
 ようやく手にして、大切に持っていて使っています。
 外科学の基礎は解剖学です。
 内科学でも解剖学はとても大切です。
 医学生の時は、解剖実習が重労働で大変でした。
 夜まで解剖実習室に残って、解剖をしたり、
 口頭試問の前日は、
 遅くまで同級生と確認し合って、勉強したものです。
      ■         ■
 医師になってからの方が
 解剖学の重要性がわかりました。
 いくら教科書を読んでも、
 3次元的な構造はわかりません。
 教科書にも書いていないことがあります。
 私が解剖学教室で研究をして論文を書いたのはそのためです。
 臨床の場で‘人体実験’や‘練習’はできません。
 外国では、ご遺体を使わせていただく、
 手術トレーニングがあると聞いて、羨ましく思いました。
      ■         ■
 解剖の教科書には、
 実習室でついたシミや臭いがついています。
 30年経っても残っています。
 少し汚れた教科書ですが、
 辛かった解剖学実習の想い出となっています。
 これから解剖学実習をはじめる医学生諸君。
 一生で一度しか経験できない貴重な体験です。
 医学生だけに許された実習です。
 30年経っても役に立ちます。
 しっかり勉強してください。

“解剖の教科書”へのコメントを見る

未分類

テスト80点でコロッケ2個

 平成20年4月4日、朝日新聞朝刊の記事です。
 ひと
 80点取った高校生におまけするコロッケ店主
 森島豊(もりしまゆたか)さん(79)
 岐阜県御嵩(みたけ)町の店先に
 「テスト80点以上にコロッケ2ヶ呈上」の「檄」。
 近くの高校の先生が「生徒が勉強しない」と嘆くのを聞き、
 6年ほど前から、
 80点以上の答案を持って買いにきた生徒に、
 1枚で2個おまけしている。
 今春も女子生徒が大学の合格証を持ってお礼に来た。
      ■         ■
 終戦直前、特攻隊に志願した。
 出撃した仲間を思うと、若者がかわいくて仕方がない。
 おまけの最多は20個。
 成績の良かった子だけでなく
 一緒に来た子が寂しそうにしていると
 「がんばれや」と気遣ってその子にもおまけする。
 「おじさん、太っ腹やね」
 「生意気言うな」。
 笑いが広がる。
      ■         ■
 かっぽう着の下はワイシャツとネクタイ。
 制服のネクタイがだらしない生徒を
 「何のためにネクタイしとる」としかりつける。
 「そんなんじゃコロッケ売ってやれん」。
 厳しい言葉にも愛がある。
 「先生が強いこと言うと、クビになる時代。
 代弁してるようなもの」
      ■         ■
 18年前から1個40円。
 黒コショウの利いたピリ辛味が受け、
 客が絶えない。
 店を継ぐはずの長男は20年前、
 交通事故で32歳で亡くなり、
 最愛の妻にも7年前に先立たれた。
      ■         ■
 自身もがんで胃と大腸を切除した。
 店は一代限りでたたむつもりだ。
 日本新聞協会に寄せられた
 「読んで幸せになった」
 記事1万点から
 2007年度の
 「ハッピーニュースパーソン」に選ばれ、
 3日表彰された。
 「開店から40年以上。私こそ、お客さんから幸せをもらってきた」
 文・高木文子
 写真・恵原弘太郎
 (以上、朝日新聞から引用)
      ■         ■


森島豊さん(79)
朝日新聞より引用

      ■         ■

 檄
 高校生諸君
 毎日勉学精励
 ユタカの店は悦んで居ます
 そこでテスト八十点以上(一科目)に
 コロッケ二ヶ呈上
 一生懸命頑張ってネ…
      ■         ■
 ニコニコしたおじさんの横には、
 こう書いてありました。
 この新聞記事を読んで、
 ほのぼのとした幸せな気分になれました。
 「読んで幸せになった」
 記事にぴったりです。
      ■         ■
 岐阜県まで、コロッケを食べに行きたくなりました。
 昨日の帰りに、コロッケを買って帰りました。
 (夜、20:00過ぎだったので割引でした)
 黒コショウの利いたピリ辛味ではありませんでしたが、
 この新聞記事に載っていた、
 森島豊さんのことを想って食べました。
 息子さんを、交通事故で亡くし、
 奥さんにも先立たれて、
 まだ79歳でお元気なのは、
 高校生やお客様から元気をいただいているのでしょう。
      ■         ■
 自分が若い時には気づきませんでした。
 若い人と接していると元気をいただきます。
 私にはとても真似できそうにありませんが、
 79歳で現役は素晴らしいことです。
 自分も、このコロッケ屋さんのようになりたいと思いました。
 いつまでもお元気でコロッケを作ってください!

“テスト80点でコロッケ2個”へのコメントを見る

医学講座

ドリスタン

 一週間前に風邪を引きました。
 とうとう、ノドにきて声が出なくなりました。
 診察の説明も、
 電話を受けても、
 お聞き苦しく申し訳ございません。
 食欲もあり、体調はそれほど悪くないのですが、
 ノドと声が最悪です。
      ■         ■
 私は小さい頃から、体が弱く、
 札幌医大に合格した時に、
 札幌西高校の保健室の先生から、
 『本間君、あなたのような、札付きの軟弱児がお医者さんになって大丈夫?』
 と半分冗談?で言われたほどでした。
 確かに、京都へ行った修学旅行でも、
 東京で熱を出して病院へ行きました。
      ■         ■
 医者になってからも、よく風邪を引いていました。
 北大形成外科の秘書さんから、
 本間先生のトレードマークは、
 風邪引きさんの大きなマスク、
 と言われたこともありました。
 フラフラになって、
 北大病院の看護婦さんに注射や点滴をしてもらったこともありました。
 家内が下の子を妊娠中に風疹になり(患者さんからうつりました)、
 家を追い出されて‘入院’したこともありました。
      ■         ■
 大学病院をクビになって、
 開業医になってからの方が、
 かえって、不思議と風邪を引かなくなりました。
 自分で開業してからは、病気で休んだことはありません。
 低空飛行ながら、何とか元気を出してやっています。
 子供の頃から、よく風邪を引いていたので、
 民間療法を含めて、風邪の治療には詳しくなりました。
      ■         ■
 高校生や大学生の頃は、よくタマゴ酒を飲みました。
 私はアルコールはダメですが、
 タマゴ酒はOKでした。
 はちみつレモンもよく飲みました。
 タマゴ酒もはちみつレモンも、
 温かい飲み物で、からだをあたためて、
 その後ですぐに寝ました。
      ■         ■
 ここ数年、お世話になっているのが、
 ドリスタンというお薬です。
 成分にアセトアミノフェンという解熱鎮痛薬と、
 ビタミンCが入っています。
 くすり屋さんで買える、風邪薬です。
 レモン味とアップル味があります。
 私はレモン味を飲んでいます。
 はちみつレモンを思わせる味です。
 苦くはありません。
      ■         ■
 これを飲んで、寝るのが私の風邪治療です。
 くすりなのに、意外とおいしいのが特徴です。
 また、医科向の‘お薬’と違って、
 成分がマイルドです。
 適度に鼻水を少なくしてくれて、
 その割りに眠くなりません。
 風邪はウイルスによって引き起こされる、
 上気道(鼻、鼻の奥、口の奥、ノド)の病気です。
 風邪薬は、症状を改善しますが、
 ウイルスを殺すパワーはありません。
 自分の免疫力が風邪を治します。
 ゆっくり休むのが一番の治療法です。
 ドリスタンは適度に症状を改善してくれます。
      ■         ■


ドリスタンレモン味
6包で840円

“ドリスタン”へのコメントを見る

院長の休日

嬉しい便り

 医師になってよかったと思う瞬間があります。
 毎日の診療で…
 キレイな二重ができた。
 ワキの臭いがなくなった。
 患者さんの嬉しそうな笑顔が何よりの喜びです。
 逆に…
 なかなか腫れが取れない。
 ワキのキズが治らない。
 思ったより、二重の幅が狭くなった。
 などという苦情をいただくこともあります。
      ■         ■
 私は、神さまでもなければ、
 神の手も持っていないので、
 100%、
 全ての方に満足していただいていると思ってはいません。
 お叱りを受けることもあります。
 これが現実です。
 美容外科医は、決して楽して儲かる職業ではありません。
 細かい作業ですし、神経も使います。
 好きでなければできません。
      ■         ■
 そんな毎日ですが、嬉しいお便りをいただくと元気が出ます。
 美容外科や形成外科は、
 救急医や新生児科、産婦人科のように、
 直接、人間の生命と向き合う診療科ではありません。
 私のような人間でも、
 『手術を受けて、元気になりました』
 『また、明日から元気に働きます』
 とか
 『難関の○○大学に合格できました』
 『○○に合格できました』
 というお便りをいただくと、
 本当に元気が出ます。
 どんなに疲れていても、機嫌がよくなります♪
      ■         ■
 人は外見ではなく中味です。
 外見で判断してはいけません。
 外見にこだわるのは、愚かなことです。
 もっともなご意見です。
 ただ、世の中の女性の大部分はお化粧をされます。
 老人ホームに入居していた、お年寄りが、
 ちょっとお化粧をしてあげたら…
 元気になったという話しも聞きます。
 医学の力を借りて、ちょっとキレイになって、
 おまけに元気になるのは、よいことだと思います。
      ■         ■
 強そうにしていても、人間は弱いものです。
 『運命』と割り切ろうと考えても、
 自分の『運命』を受け入れるのに、何年もかかることがあります。
 そうして、落ち込んでいる時に、
 ちょっとだけキレイになって、元気になれることがあります。
 私たちは、人の命を助けることはできませんが、
 人を幸せな気分にしたり、
 ちょっとだけでも、元気にするお手伝いができます。
 美味しいものを食べて、
 明日から、また元気に働こうという意欲がでるのと同じです。
      ■         ■
 人間は、どんなに頑張っても、思い通りにならないこともあります。
 ただ、頑張ったら、頑張っただけの効果が出ることもあります。
 4月は新しい人生のスタートです。
 私もそうですが、少しでも他人の役に立って、
 ああ、この仕事をしていてよかったなぁ!
 と思えるように頑張ろうではありませんか。
 嬉しいお便りをいただき、ありがとうございました♪

“嬉しい便り”へのコメントを見る

医療問題

ジェネリック医薬品

 私の日記を掲載させていただいている美容の杜で、
 ジェネリック医薬品についてご質問を受けたので、
 回答を兼ねて記載いたします。
 平成20年2月19日の日記に書いたガスターを例にとってみます。
 ガスターは山之内製薬㈱が開発した、胃潰瘍の薬です。
 胃酸という強力な酸で胃の粘膜が損傷され、胃潰瘍になります。
 ガスターはこの胃酸の分泌を抑える作用があります。
      ■         ■
 ガスターなどの薬が発売される前は、胃潰瘍で吐血を繰り返すと、
 消化器外科で胃を切除するのが一般的でした。
 ところが、H2(エイチツー)ブロッカー(ガスターなどの薬)という薬が発売されると、
 胃潰瘍で吐血するような人はいなくなりました。
 この薬が発売された頃には『外科医殺しの薬』と呼ばれたほどでした。
 それほど、劇的な効果があったので、
 胃潰瘍で手術する人がいなくなり、外科医が失業するという意味です。
 当時の山之内製薬㈱はかなり収益を上げたと思います。
      ■         ■
 開発の詳しい経緯はわかりませんが、
 当時は夢の新薬と言われました。
 ところが、ガスターも製造特許(最長で25年です)が切れると、
 他のメーカーが、まねっこをして、
 同じ成分の薬を作ることができるようになりました。
 ただし、ガスターというのは商品名なので使えません。
 これが、2月19日に書いた、
 ・ガモファー
 ・ガスイサン
 ・ガスセプト
 ・ガスドック
 ・ガスポート
 などという製品の名前です。
 覚えやすいように、ガスを頭につけているところが笑えます。
      ■         ■
 競争社会の宿命とはいえ、高額の開発費をかけて作った薬を
 簡単にまねっこされて、
 安く売られる製薬メーカーが可哀想な気もします。
 欧米では、このまねっこして作った薬の市場占有率が高いのです。
 まねっこ薬=ジェネリック医薬品です。
 有効成分名を指す一般名(generic name)で処方されるので、
 「ジェネリック医薬品」と呼ばれます。
 昔は、特許権が消滅した後、ゾロゾロと出てくるので、
 「ゾロ」とか「ゾロ薬」と呼んでいました。
 安い薬は、医療費の抑制には効果的です。
 ただ、安売りばかりが強調されると、
 メーカーの製品開発力がなくなります。
      ■         ■
 2008年4月1日からは、医師が特に指示しない限りは、
 調剤薬局の薬剤師の判断で、後発医薬品に変更できるようになりました。
 ですから、先生に遠慮して、
 『安い薬にしてください』
 と言えない人でも、
 調剤薬局で簡単に『安い薬』に変更できるようになったのです。
 調剤薬局でお薬をもらう時に、
 『安い薬』をお願いしますと言うだけでOKです。
 処方してくれた先生にも知らされません。
      ■         ■
 『安い』からといって、中国製ではありません。
 ジェネリック医薬品メーカーは日本の製薬会社です。
 厚生労働省の認可を受けて製造販売しています。
 いままで、ジェネリック品だから不良品だった、
 という話しも聞いたことがありません。
 ですから、安心してお願いしてください。
      ■         ■
 実は、札幌美容形成外科では開院時から、
 ジェネリック医薬品を採用しています。
 もちろん、先発品と言われるお薬も使っています。
 抗生物質などはジェネリック医薬品です。
 自分や家族も内服しています。
 何の問題もありません。
      ■         ■
 また、札幌美容形成外科では院内でお薬をお渡ししています。
 これは、‘美容外科’と書かれた処方箋を持って、
 調剤薬局まで行くのがイヤだという心理。
 院内でお薬をお渡しした方が、
 調剤薬局でいただくより、『安い』からです。
 たかが薬といえど、
 同じ成分でもかなり価格の開きがあります。
 国全体でみると、ガソリンよりも影響が大きいかも知れません?

“ジェネリック医薬品”へのコメントを見る

医療問題

お詫びとお知らせ

 今日から4月です。
 診療報酬という、保険診療の料金が変わりました。
 新しく、早朝・夜間加算という制度ができました。
 これは、標榜時間内
 (何曜日は何時から何時まで診療していますと看板に書いてある時間)
 であっても、
 朝6時から8時、
 夜の6時過ぎ、
 土曜の12時過ぎには、
 50点(自己負担分で150円)を加算できるというルールです。
      ■         ■
 大変申し訳ございませんが、
 札幌美容形成外科でも、この加算料金をいただきます。
 土曜日や午後6時以降の診療を変更ご希望の方は、
 お手数でもお電話でご予約の変更をお願いいたします。
 昨日の日記にも書きましたが、
 この早朝・夜間加算は診療所だけの料金です。
 大病院では、かかりません。
      ■         ■
 でも、そもそも大病院では、
 土曜日の午後や平日の6時以降は診察をしていません。
 私が札幌美容形成外科を開業する時に考えたのは、
 大病院ではできない医療サービスの提供です。
 仕事を休んでまで病院へ行くことができない…。
 ちょっと、病院へ行ってきますと言いにくい‘病気’。
 形成外科には、このような特殊事情があります。
      ■         ■
 実際に診療所を経営していると、困ることもあります。
 まず、従業員はほぼ100%若い女性です。
 友人や親戚の結婚式。
 開かれるのは、土日祝日が大部分です。
 お休みをあげないわけには行きません。
 有給休暇も取得してもらわないといけません。
      ■         ■
 そうすると、人が足りなくなります。
 少人数で回している、私のような診療所では大きな問題です。
 休診日はHPでお知らせしていますが、
 平成20年4月からは、
 祝日は休診とさせていただきます。
 土日月と3連休が続く月曜日の振り替え休日は、
 休診させていただきます。
 お客様には大変申し訳ございませんが、
 ご理解とご協力をお願いいたします。
      ■         ■
 私自身は、土日に働くことは何の問題もないのですが、
 月に一度も日曜日の休みがないと、従業員が集まりません。
 これが、祝日休診の正直な理由です。
 自慢ではありませんが、こんなウルサイ院長なのに、
 文句も言わずよく働いてくれる職員に感謝しています。
 これからも、サービスの改善を検討して参ります。
 皆様のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げます。 

“お詫びとお知らせ”へのコメントを見る

医療問題

診察の5分ルール

 平成20年3月30日、朝日新聞朝刊、声の欄への投稿です。
 「5分ルール」
 診察の質心配
 医師 二宮聖耳(大阪市住之江区 80歳)
 皆さん、4月から医療が大変なことになります。
 公的医療保険の価格を定めた診療報酬点数の改定に伴い、
 医師が5分以上診察しなければ、
 診療報酬の加算措置を受けられなくなるのです。
      ■         ■
 医療費抑制を目指す、
 この「5分ルール」は、
 患者と医師の双方に大きな問題をはらんでいると思います。
 まず患者さん側の問題。 
 「薬だけ」と申し出る方が今でも多くて、
 診察の必要性を説明するのに医師は苦慮しています。
 医療費が安ければ、
 皆さん、5分以上の診察を受けなくなるでしょう。
 しかし、投薬だけでは病状の変化に対応できません。
 質の高い、責任ある医療はできなくなります。
      ■         ■
 そして医師側の問題。
 診療報酬の加算がなくなることで病院経営への影響が予想されます。
 病院が立ちゆかず廃業すれば、医療崩壊の加速にもつながります。
 4月からはストップウオッチをもって病院にいきますか。
 5分を超えそうになったら、
 「ハイ、先生、もうわかりましたから」と早々に退散しますか。
 果たして、こんな診療体系で患者さんの健康を守ることができるでしょうか?
 (以上、朝日新聞より引用)
      ■         ■
 80歳にして、現役を続けていらっしゃる、
 大先生の投稿です。
 ほんとうに、厚生労働省は何を考えているのでしょうか?
 この5分間ルールというのは、
 再診時の外来管理加算という制度のことです。
      ■         ■
 もともと、再診時に、しっかりとした医学的な説明をした場合に、
 520円の『説明料』を請求してもよろしいですよ。
 というルールだったのです。
 それを、5分間の説明と明文化したのが今年の改定です。
 それでは、10分説明した時や、
 30分説明した時は?どうするの?
 ということになります。
 10分でも30分でも、料金は5分と同じです。
 この辺がいい加減です。
      ■         ■
 少しでも医療費を安くしたい人には、裏ワザがあります。
 この「5分ルール」が適用されるのは、診療所と200床未満の病院だけ。
 大病院へ行けば、外来管理加算も指導料もかかりません。
 お金はないけれど、時間とヒマだけはたっぷりある人は、
 大病院へ通院すると、安く診療を受けられます。
 この辺のカラクリをマスコミでも報道しないのが面白いところです。
      ■         ■
 こちらの内科の先生が書かれたHP、医知場(いちば)
 『よくわかる診療報酬 2008年最新版』に詳しく掲載されています。
 糖尿病や高血圧で、通院していて、
 毎月お薬をいただている方がいらっしゃいます。
 大病院にかかると、再診料700円(実際の負担は3割で210円)に
 処方箋料+お薬代でいただけます。
 診療所でいただくと、
 再診料710円+外来管理加算520円+特定疾患療養管理料2,250円の
 合計3,480円が基本料金。
 3割負担でも、1,040円となります。
      ■         ■
 これは、小型タクシーの基本料金が1,040円。
 ちょっと来るのに時間はかかるが、
 安心快適な大型のリムジンの、基本料金が210円と同じことになります。
 つまり、診療所で月に一度、糖尿病のお薬をいただくと…
 大病院より、830円も余計に払うことになるのです。
 ですから、大きな民間病院の横には
 ○○クリニックなどという、‘診療所’ができていて、
 そちらの、診療所で外来診療をする理由がわかります。
      ■         ■
 診療所が高くなるのは、
 特定疾患療養管理料がかかる、
 がん、甲状腺機能異常、糖尿病、高脂血症、
 高血圧、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、
 脳梗塞、慢性気管支炎、喘息、胃・十二指腸潰瘍、
 慢性肝炎、慢性膵炎などの病気の方です。
 私たち形成外科のワキガや眼瞼下垂症ではかかりません。
 外来管理加算の520円(3割負担で150円)が余計にかかるだけです。
      ■         ■
 国民が、このからくりを知ると…
 ますます、安い診療を求めて、大病院に患者さんが殺到すると思います。
 厚生労働省は、
 大病院に外来診療をしても儲からなくする料金体系を作って…
 診療所に患者さんを集めようとしているようです。
 こんなことをしても、日本の医療はよくなりません。
 勤務医がますます疲弊して、開業医になるだけです。
 ほんとうに日本のお役人は頭が悪いと思います。

“診察の5分ルール”へのコメントを見る

医療問題

通勤災害と交通事故

 帰宅途中に交通事故に遭った私は、
 当然、労災事故(通勤災害)になると思っていました。
 病院で事故に遭った患者さんを診察する時、
 交通事故や労災事故に、健康保険は使えません。
 健康保険は、ふつうに生活していて、病気になった時に使う保険。
 仕事中の事故は、労災保険です。
 料金体系も若干異なります。
 国が決めた決まりです。
      ■         ■
 交通事故は、大部分が車かバイクの事故で起こります。
 自動車損害賠償責任保険(通称:自賠責)という制度があります。
 健康保険は、自動車事故のように、
 第三者によって起こされたケガについては使えないことになっています。
 もし使うとしても、誰にケガをさせられて、
 相手方保険会社は○○損害保険ですと、
 通知しなければならないことになっています。
 これも、国が決めた決まりです。
      ■         ■
 社会保険は、ただでさえ大赤字です。
 自動車事故で、自賠責から支払われるべき治療費まで支払っては大変です。
 近年は特に厳しくなってきています。
 また、労災保険は仕事中や通勤途中の事故でケガをした時に使います。
 私のように、仕事を終わって、
 通勤届けに届けた通りの道や交通機関で、
 自宅に帰る途中の事故は、通勤災害になります。
      ■         ■
 ちなみに、同じ帰宅途中の事故でも、
 仕事帰りに、ちょっと一杯飲んで、帰りに転倒したような時。
 仕事帰りにデパートで買い物をして、
 その帰りにエスカレーターで転倒してケガをした時。
 は残念ながら通勤災害にはなりません。
 寄り道すると、通勤災害にならないという規定があります。
      ■         ■
 会社の業務命令で、取引先の○○社の接待があったとか、
 デパートへ買い物へ行ったのは、自分の買い物ではなく、
 上司から指示された物品を購入に行ったという場合は、
 合理的な説明ができれば、労災になる可能性があると思います。
 この辺は、医師ではなく、社会保険労務士が詳しいです。
 通勤災害か私病による事故かにこだわるのは、補償が違うからです。
 もし、労災の通勤災害でしたら、休業補償も出ます。
      ■         ■
 この程度の知識は、労災病院に勤務していたり、
 通勤災害で負傷した患者さんを治療していると、
 医師でもわかるようになります。
 私は、自分の事故は当然、労災扱いになると思っていました。
 ところが、労働基準監督署に問い合わせても、
 交通事故の場合は、まず自賠責保険を使ってください。
 という回答がきました。
      ■         ■
 つまり、帰宅途中に轢かれた場合は、
 通勤災害でも、自賠責を使って保険会社に費用を請求する。
 というのが、正しいルールだと、その時はじめて知りました。
 問題はそこからでした。
 ランクルの運転手さんは、深く反省していました。
 もし、私の事故が人身事故扱いになると、
 点数がないので免停になる可能性が高いということでした。
 私は、自分の足が轢かれてケガをして、
 警察にも届けたので、当然人身事故だと思っていました。
      ■         ■
 帯広市内は、交通の便が悪く、
 仕事をするには、車がないとできません。
 相手の運転手さんは、私に泣きついてきました。
 私は、轢かれた原因は見通しの悪い交差点にあると思っていました。
 高架事業をしている会社に、文句を言いました。
 すぐに、右折車は歩行者に注意!という大きな看板がつきました。
 相手を責める気持ちもなかったので、保険会社に任せると言いました。
      ■         ■
 ここで問題が起こりました。
 相手方の保険会社は人身事故扱いでないと、
 自賠責保険を出さないと言って来ました。
 私は好きで人身事故扱いを外したのではありません。
 相手が泣きついてきたので、そうしただけです。
 そこで、私は弁護士さんに相談しました。
 相談した弁護士さんは、適切に回答をしてくれました。
      ■         ■
 しばらくすると、相手方の損害保険会社の所長が謝りに来ました。
 私のケースは、その損害保険会社で責任を持って支払いをするという内容でした。
 私としては、治療費をしっかり払ってくれて、
 補償もしてくれるのなら了承することにしました。
 私のケースは、人身事故扱いにしたかどうかはわかりませんが、
 治療費は自賠責から払ってもらいました。
 ただ、仕事は休まなかったので、
 痛い思いをしたのに、
 私がいただいた補償金は多くはありませんでした。
 今では、ケガのことは忘れるくらい快くなりました。
 数年間は寒くなると左足が痛くなり、事故を思い出しました。

“通勤災害と交通事故”へのコメントを見る

昔の記憶

私の交通事故

 私は帯広厚生病院に勤務していた時に、交通事故に遭いました。
 病院からの帰り道で、右後方から右折して来た、
 1ナンバーのランドクルーザーに轢かれました。
 ちょうど、帯広厚生病院の裏にあった、JRの高架工事をしていました。
 ただでさえ、見通しが悪い交差点なのに、
 高架工事で、ますます見通しが悪くなっていました。
      ■         ■
 私も注意して交差点を横断していました。
 気づくと、自分のすぐ左後方にランクルがいました。
 とっさに、身をかわしましたが、
 左足が残りました。
 私の左足の上を、ランクルの右前輪が通り過ぎました。
 一瞬のことで、どのくらいの痛みがあったかは覚えていません。
      ■         ■
 私はすぐに、買ったばかりの携帯電話を取り出しました。
 110番通報をしました。
 私:もしもし、もしもし、車に轢かれました。
 110番:場所はどこですか?
 私:厚生病院の裏の交差点です。
 110番:どちらの厚生病院ですか?
 私:はぁ…?、厚生病院は帯広に一箇所しかありませんょ。
 110番:こちらは釧路警察署です。
      ■         ■
 その当時は、帯広から携帯で110番をすると、
 なんと釧路に繋がりました。
 今は、最新型FOMAから110番をすると、
 GPSのデーター?を送り、自分の位置まで教えてくれるようです。
 私は、自分がいる場所を正確には言えませんでした。
 帯広厚生病院の住所は、
 帯広市西6条南8丁目でした。
 私が轢かれた場所は、おそらく西6条南9丁目付近だったと思います。
 釧路警察署の110番は、帯広警察署に連絡をしてくれ、
 まもなくパトカーが来てくれました。
      ■         ■
 私を轢いたランクルは、若い運転手さんでした。
 『すみません。大丈夫ですか?』
 轢いた方も驚いています。
 『病院へ行きますか?』
 私:私はそこの厚生病院の医者です。
 轢いた運転手さんは、二度びっくりしていました。
 そこへ、パトカーが来ました。
 警察官:大丈夫ですか?救急車を呼びますか?
 私:大丈夫じゃないけど、救急車は呼ばなくてもいいです。
 私は厚生病院の医者なので、病院まで送ってください。
      ■         ■
 私はパトカーに乗せてもらい、
 すぐそこに見えている、帯広厚生病院へ戻りました。
 救急外来の当直の看護婦さんがいました。
 『あら、先生、どうしたの?』
 私:そこで轢かれました。
 『大丈夫ですか?』
 私:左足の中足骨(チュウソクコツ)から先が折れているかもしれません。
 レントゲン当直の方を呼んでくれますか?
 看護婦さんは、私を車椅子に乗せてレントゲン室へ運んでくれました。
      ■         ■
 当直のレントゲン技師さんは、すぐに来てくれました。
 先生どうなさったのですか?
 いやぁ、そこで轢かれました。
 私の左足は、パンパンに腫れており、ずきずきと痛みます。
 1ナンバーのランクルが乗っかったのですから、
 折れているに違いありません。
 レントゲンは、すぐにできました。
 不思議なことに、私が見ても骨折線は見えません。
 ランクルが乗っかったのに、骨は折れませんでした。
      ■         ■
 次に、私の頭をよぎったのは、仕事のことです。
 当時は、私の他に2名の形成外科医が勤務していました。
 合計3名でも、毎日忙しく働いていました。
 約3ヵ月先まで、手術予定が入っていました。
 もちろん、翌日にも手術が入っていました。
 困ったなぁ…。
 骨が折れていないのなら、仕事はできるかなぁ…?
 あの手術は、自分でなければできないしなぁ…などなど。
      ■         ■
 左足がパンパンに腫れたまま、
 私は翌日からも仕事をすることにしました。
 普通の人でしたら、最低一週間は休むところです。
 ここが、医師のつらいところです。
 私は、足を引きずりながら、翌日からも仕事をしました。
 一番大変だったのが、会う人ごとに、
 交通事故でケガをしたと説明しなければならなかったことでした。
 首から、説明文をぶら下げようかと思ったほどでした。

“私の交通事故”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ