昔の記憶

医師としての価値

 世の中は医師不足です。
 特に地方の医療機関は、医師不足で困っています。
 昨日まで、3回にわたり、
 北海道新聞に掲載された、
 市立札幌病院NICUのことを記載しました。
 私の心のどこかに、
 美容外科医なんて
 形成外科医なんて
 新生児科医や救急医に比べて、
 価値の低い医師さ。
 という自分を卑下した意識があります。
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 国は、医師不足解消のために、医師養成を急いでいます。
 北海道では、札幌医大と旭川医大の入学定員を
 2009年度入学生から増員しました。
 私は、国の政策に懐疑的です。
 かつて、国策で作った、
 防衛医科大学校卒業生のうち、
 現在まで、防衛医官として、
 防衛省職員のままの‘先生’は
 何%いらっしゃるのでしょうか?
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 もちろん、防衛医科大学校を卒業後は、
 最低9年間は、防衛省に勤務しなくてはならないという、
 ‘義務年限’がありました。
 ところが、現実には、
 お金を払って義務年限を免除してもらい、
 晴れて自由の身になった‘先生’が
 何人もいらっしゃいました。
 そのため、
 義務を免除するために必要な‘お金’を
 増やしたという話しを聞いたことがあります。
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 なぜ、防衛医大出身の先生は
 防衛省を退職したのでしょうか?
 医師として働く魅力が乏しいから、
 防衛省を退職して、
 民間の医療機関に就職したり
 ご自分で開業したりしたのではないでしょうか?
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 人間は、やりがいがあって、
 仕事に見合った報酬を得られれば、
 簡単には、職場を変えないものです。
 市立札幌病院新生児科の先生は、
 助からないと思われた、500㌘の赤ちゃんを救命して、
 立派に育っていく様子を、お母さんとともに喜ぶことができて、
 両親や祖父母からも感謝されて…
 だから、36時間勤務でも、辞めないで働けるのだと思います。
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 私は、毎日、朝から深夜まで仕事をしています。
 日記の更新やメールの返事は、
 午前0時を過ぎていることもよくあります。
 私が、市立札幌病院に勤務していたのは、30歳台後半でした。
 当時は、今よりもっと働いていたと思います。
 北大に通って、研究もしていました。
 自分にとって、医師としての青春時代だったと思っています。
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 私は、その頃に、救急部や未熟児センターへ行くのが好きでした。
 自分にとって未知の世界だった救急医療の現場や
 触っただけで、壊れそうな赤ちゃんを助けることに
 少しでも、医師としてお手伝いできることに、魅力を感じていました。
 皮膚のキズが少しでもよくなると、
 お母さんと一緒に喜びを共有できました。
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 今は、形成外科や美容外科の手術をしています。
 もう、総合病院の形成外科医として働くことはありません。
 私は形成外科の手術も美容外科の手術も好きです。
 人をキレイにして、喜んでもらえるのは嬉しいことです。
 遠くから、この日記を読んでくださって、
 メールでご相談を受けることもあります。
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 面識がない方から、ご相談を受けても、
 できる限りのご返事を差し上げているつもりです。
 ただ、どんなにキレイに手術をしても、
 どんなに丁寧に手術をしても、
 わたしたち、美容形成外科医ができることは、
 体表面のキズや形を治すことです。
 人の命を助ける‘医師’よりも、
 価値が低いような気がしています。
 私はもう救急医にも新生児科の医師にもなれません。
 自分の美容形成外科医としての職責を
 できるだけ誠実に果たしたいと考えています。

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