医療問題

精神と犯罪

 各地で凶悪な犯罪が目立っています。
 優秀な弁護士さんは、‘責任能力’を強力な武器として、
 無罪を主張してきます。
 そうすると、‘犯罪者’の中には、刑務所ではなく、
 精神病院へ入院させてもらえる人が出てきます。
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 刑務所と精神病院では待遇に雲泥の差があります。
 食事一つとっても、
 ‘犯罪を犯した患者’だからといって、
 差別されることはありません。
 一般の入院患者さんと同じ、病院食が出されます。
 希望すれば、おかわりもできます。
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 私は学生時代に、真剣に精神科医になろうと思った時期がありました。
 理由は、簡単です。
 ‘血を見るのが怖かったから’です。
 今の私を知る人は、
 『えぇ~???』と驚かれるに違いありません。
 毎日、血を見て仕事をしていますから…。
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 私が精神科を諦めた理由も簡単でした。
 治らない、
 治せない、
 患者さんが実に多いからです。
 どこの精神病院にも、
 人生の大半を病院で過ごしている方がいらっしゃいます。
 他の診療科では考えられないことです。
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 大部分の方は、生活保護を受けていらっしゃいます。
 すなわち、税金が使われています。
 患者さんの中には、医師免許証を持った人もいました。
 医師免許証を持っていても、
 人生の大半を精神病院で過ごしていました。
 そこの病院の治療方針が悪くて治らないのではありません。
 ある割合で、どうしても治せない患者さんがいるのです。
 悲しいことですが、これが精神医学の限界です。
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 私は、犯罪を犯した人を、精神を理由に無罪にするのには反対です。
 無罪にして、精神病院へ入れたとしても社会はよくなりません。
 精神病院では、刑務所ほど厳重に患者さんを管理しません。
 いや、管理なんてできません。
 タバコを吸うのも自由です。
 中には、病院で妊娠しちゃう人も出てきます。
 他の病棟と比較すると、看護職員の数が少ないのが精神科です。
 看護職を増やすと、それだけお金がかかるからです。
 国の方針です。
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 精神科勤務の職員には、程度に応じて、
 ‘危険手当’が支払われる場合があります。
 閉鎖病棟で、凶暴性のある患者さんを看護する職員などです。
 私が、知っている看護職の方で、
 患者から暴行を受けて意識不明の重体となった男性がいます。
 残念なことに、後遺障害も残ってしまいました。
 精神科勤務は、時に命がけです。
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 医学生は全員精神神経科を履修します。
 選択科目ではありません。
 実習へ行くと、分厚い辞書のようなカルテを目にします。
 何十年も、精神科に入院していた患者さんのカルテです。
 そのカルテを見ただけで、精神医療の難しさを痛感できます。
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 私は、司法修習生など、法曹界の方が、
 精神神経科に実習に来ているの見たことがありません。
 もし、私が間違っていたら、ごめんなさい。
 弁護士さんや裁判官、検察官になる方は、
 日本の精神医学の状況や精神病院の現実を見るべきだと思います。
 どうしたら、日本を安全で住みやすい国にできるか?
 ‘犯罪を犯した患者’を精神病院に入れるだけでは、
 決して、安全な国はできないと思います。
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 形成外科や美容外科も万能ではありません。
 私が手術をしても、治せないキズもあります。
 私が手術をしても、満足していただけないこともあります。
 でも、それは治療前に説明していますし、
 納得していただかなくては、手術をお引き受けしていません。
 まさか、美容外科に行ったら、
 どんな人でも美人になれるとは考えていないと思います。
 でも、ひょっとすると、法曹界では?
 精神病院に入院したら、
 ‘犯罪を犯した患者’が治ると思っているのでしょうか?

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