医療問題
精神鑑定
平成20年3月23日、北海道新聞の記事です。
香山リカのひとつ言わせて⑬
精神鑑定ってなんだろう
東京・渋谷の夫殺害事件の精神鑑定が話題となっている。
検察側、弁護側、双方の鑑定医が
「被告は短期精神病状態にあり、責任能力はなかった」
という鑑定結果を公判で述べたのだ。
■ ■
特に検察側の鑑定医が
被告の罪が軽くなるような鑑定結果を述べることは異例、
と言われている。
精神科医には「文系」と「理系」のタイプがいるが、
検察側の鑑定医は、
日本でも珍しい「文系、理系どちらも得意」のひとり。
精神医学の世界の中にも、
「あの彼が言うなら」
と鑑定結果を支持する人も少なくない。
■ ■
大学で学生たちにこの件について意見を聞いたら、
「殺人を犯して責任能力がないから無罪や減刑、というのはおかしい」
という声とともに、
「そもそも、検察側の鑑定医だからといって厳しいことを言え、というのはどうして」
という声があった。
確かに客観的でなければならない精神鑑定で、
「弁護側だから」
「検察側だから」
という主観が入るのはおかしな話のような気もする。
■ ■
とはいえ、
「短期精神病という一過性の病名で、夫を殺しても無罪?」
と疑問に思う人がいるのも当然だ。
裁判のスピードアップが要求され、
精神鑑定のあり方も変わってくると言われている。
この「異例の鑑定結果」は、
私たちにもう一度、「精神鑑定ってなに」
と問いかけているのではないだろうか。
(精神科医)
(以上、北海道新聞から引用)
■ ■
秋田の児童殺害事件でも、
精神鑑定が問題になっています。
そもそも、精神状態が普通の人は、
自分の子供や夫を殺しません。
自殺を図って、救命救急センターに搬送される方も、
精神疾患がベースにある方が多いと言われています。
■ ■
それでは、精神鑑定が出て、
複数の精神科医が、
『この人が犯罪を犯したのは、病気のためです』
と鑑定書を出せば、無罪にしてよいものでしょうか?
私は、そうは思いません。
精神病院に入院している患者さんの中には、
『オレは○○で人を殺した』と、
大っぴらに公言している人もいました。
■ ■
その患者さんが言っていることが、
ウソかホントかはわかりません。
ただ精神病院に入れたからといって、
‘完治’させられる訳ではありません。
精神疾患は再発率も高く、
一番治しにくい病気の一つです。
■ ■
犯罪者は犯罪者です。
精神疾患を免罪符にして、
無罪放免だけは勘弁してください。
子供を殺された親の気持ちはおさまりません。
精神科医といえども万能ではありません。
ウソを言われても、わかりません。
オウム真理教の教祖様を‘精神疾患’で無罪にできますか?
仮病(けびょう)を見分けるのは、難しいのです。
精神医学にも限界があります。
犯罪者は犯罪者として刑務所に入れて、
死刑にするのは法律家の仕事です。
‘医学’が関与すべきではないと思います。
横綱だって、‘病気’を理由にしていたではありませんか!