医学講座
膀胱炎の予防法
平成20年9月10日、北海道新聞朝刊の記事です。
ちょっと聞けない
泌尿器科の話⑰
膀胱炎の予防策
前から後ろにふいて
古屋聖児
膀胱炎の予防法があれば
多くの女性にとり朗報ですが、
残念ながら
「これだ!」
という絶対的な方法はありません。
■ ■
一般的に疲労や体の冷え、
排尿の我慢などに注意すると
よいと言われています。
米国のある泌尿器科医が勧める予防法は
①排尿をあまり我慢しないで、
だいたい3時間ごとの排尿を心がける
②排便後は肛門周辺を丁寧に前から後ろにふき、
同じトイレットペーパーを2度ふきしない。
■ ■
膀胱炎の原因菌となる大腸菌などは
肛門の周辺に常在しています。
そこから腟に移動して繁殖、
次に尿道を逆行して膀胱に侵入し、
膀胱炎を起こすのです。
ですから排便後はトイレットペーパーで
前から後ろの方向にふき、
肛門周辺の細菌を
腟の方向に移動させないことが
膀胱炎の予防になるというわけです。
■ ■
ところで、
18世紀までヨーロッパの女性は
ノー・パンティーで、
排尿後に紙でふく習慣はありませんでした。
ところが19世紀になり、
女性がパンティーをはくようになってから、
排尿後ぬれたままでは
パンティーが汚れるので、
紙でふくようになったのです。
■ ■
さて排尿後のトイレットペーパーのふき方には
前から後ろの方向に
ふくのがよいと言われています。
「前から後ろへ」
という方向は
尿道口、腟口、肛門の
位置関係を知っていれば
理解できますね。
(北見医師会長)
(以上、北海道新聞より引用)
■ ■
古屋先生の文章はわかりやすく、
前立腺のお話しなどは、
医師の私にも参考になりました。
この「前から後ろへ…」
の方向のことは、
医学生の時にも習いました。
そもそも、
おしっこはふつうは無菌です。
血液を漉過したものですから…
■ ■
腟の中には、
デーデルライン桿菌という乳酸菌がいます。
これらの乳酸菌が乳酸をつくるので、
膣内のpH(ペーハー)は酸性に保たれています。
健康な女性は、
この乳酸菌によって病原性細菌から
腟を守っています。
これを膣の自浄作用とか
生体バリヤーと言います。
簡単に言うと…
ヤクルトを飲んで
お腹を健康にしているのと同じことです。
■ ■
一方、腸の中には、
大腸菌などが住んでいます。
大腸菌にも、
病原性が強いものと、
悪さをしないものがいます。
うんこが汚いと言われるのは、
おしっこが血液を漉過(ろか)したものなのに、
うんこは食べ物のカスだからです。
お尻を拭いた後は、
手をよく洗わないと、
どんなにペーパーを重ねて使っても…
手にバイ菌がつきます。
■ ■
女性は解剖学的に、
肛門と尿道口が近いので、
大腸菌が尿道から入りやすいのです。
しかも男性より尿道が短いので、
尿道から入った菌が
膀胱に届きやすいのです。
ですから…
おしっこの後のペーパーは
前から後ろへ拭くとよいのです。
ご理解いただけましたでしょうか?