昔の記憶
忘れられない味
北大病院近くの、
札幌市北区北13条西4丁目の角に
味の広龍(あじのこうりゅう)というお店があります。
開店してから、もう45年くらいになるそうです。
私が北大病院の研修医になったのが、
1980年(昭和55年)でした。
当時は土曜日も外来診療がありました。
札幌市内の総合病院で形成外科があったのは、
北大だけでした。
■ ■
当時の北大形成外科は、
患者さんであふれていました。
手術を申し込んでも、
手術日は未定。
まともに待っていると、
手術を受けられるのは、
2~3年先でした。
(2~3ヵ月ではなく、‘年’です)
■ ■
医師免許証をいただいても、
手術ができるわけではなく…
研修医の私は、朝9:00から、
上の先生がいらっしゃる前に、
予診(よしん)という問診をして、
ポラロイド写真を撮って、
外来診療の準備をします。
上の先生がいらした後は、
処置をしたり、
手術や入院の説明をしたり…
何もできないけれど、一生懸命に働いていました。
■ ■
当時は25歳でした。
とにかく外来は混んでいました。
順調に終わって、
土曜日でも13:30とか14:00までかかりました。
外来が終わってからも、
新患台帳という厚い台帳に記入したり、
手紙の返事を代筆で書いたり…
とにかく、忙しく働いていました。
■ ■
今でこそ、
15:00頃まで昼食を食べなくても平気ですが、
当時は若かったのか、
とにかく‘腹ペコ’になりました。
最後の方になると…
‘腹へったなぁ~’しか考えられなくなります。
そんな時、
当時、講師だった
‘杉さん’こと、杉原平樹(すぎはらつねき)先生が、
『腹へっただろう、出前とってやるよ』
と私たち研修医に、
広龍から出前をとってくださいました。
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私が頼んだのが、中華飯でした。
出前が早く来たので、
私が食べる頃には冷めていましたが、
丁寧にラップがかかっていました。
ラップを取って食べた
その中華飯の美味しかったこと。
今でも杉原先生にご馳走になった
その味が忘れられません。
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昨夜、15年ぶりくらいで
その中華飯を食べました。
おじさんは少し歳をとっていらっしゃいましたが、
味は昔のままでした。
北大病院でかつて働いていた偉い先生も
たまにいらっしゃるそうです。
忘れられない味は誰にでもあるようです。
私は今でも…
冷たくなった中華飯が好きです。