医療問題
医学部定員増
平成20年9月7日、朝日新聞朝刊、
声の欄への投稿記事です。
医学部定員増
余裕ない現場
勤務医 安達智江 (千葉県柏市46)
医師不足解消のため、
厚生労働省の検討会が
医学部定員の大幅増を提言したのに対し、
国立大学医学部長会議が
教員や経費増を求める
批判的な内容の要望書を出したという
(8月28日朝刊)。
■ ■
当然である。
医師を教育養成するのは
研究・臨床の現場で働く現役医師だ。
教員が増えなければ、
大学での基礎系講義には、
学生が詰め込まれ、
教員の目が届かなくなる。
■ ■
臨床系の実習は大学病院で受ける。
だが、新医師臨床研修制度の導入で
医局の新人医師が激減し、
人手不足で市中の病院から
医師を引き揚げているような
大学病院の医師たちに、
増加した医学生を
教育する余裕などあるだろうか。
■ ■
卒業後に教育を受ける研修病院の
勤務医も減少している。
新しい臨床研修制度自体、
新人医師の教育に
うまく機能しているかどうかの
評価もされていないのに、
定員増で
この制度にさらに負荷をかけることになれば、
現場の混乱が増幅するだけである。
■ ■
いまの状態での定員の大幅増は
現場の医師をさらに疲弊させ、
十分な教育を受けていない
若手医師を誕生させるだけだろう。
現状では、
定員増は微増にとどめるべきだ。
医師の粗製乱造となれば、
将来に禍根を残す。
(以上、朝日新聞より引用)
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私もこの投稿者の先生に、
まったく同感です。
医学教育の現場の‘先生’
臨床研修指定病院の
指導医の‘先生’は
くたクタに疲れています。
学生や新人医師の教育は、
本当に疲れるものです。
自分ひとりで処置や手術をすれば…
30分で済むものを…
新人医師に指導をしながらすると、
倍以上の時間がかかります。
■ ■
その上、新人医師に何かをさせて、
失敗されると…
指導医の責任が問われます。
誰だって、
新人医師の…
練習台にはなりたくありません。
でも、‘練習台’になっていただく…
患者さんがいないと、
新人医師は上達しないのです。
臨床研修指定病院になって、
指導医になったからといって、
医師の待遇が良くなることはありません。
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医療という危険を伴う仕事を、
研修医に教えるのは疲れます。
もし、研修医が手術で失敗しても、
それを回復できて、
何もなかったかのように
手術を終える知識と技術がなければ、
研修医に手術を教えることはできません。
教官パイロットが、
訓練生に飛行を教える時、
もし機体が傾いても、
それを元に戻す技量が必要なのと同じです。
■ ■
飛行機はお客さんを乗せないで、
空(から)で飛ばして訓練ができますが、
手術とか検査は、
お客さんがいないと‘訓練’ができません。
厚生労働省が考える方針には、
どう考えても賛成できません。
質の悪い、
速成栽培の、
お医者さんを、
粗製乱造して、
将来困るのは国民です。