昔の記憶
四浪(よんろう)
平成21年4月1日、北海道新聞『いずみ』への投稿です。
四浪
この春、四浪の末、
息子が大学生になる。
息子はひたすら勉強し、
親は祈り続けた。
■ ■
去年の合格発表の日。
「最後の1年で結果を出せなかった。もういいだろう」
と主人に言われ、
「母さんごめんね」
と声を上げて泣いた息子。
その姿を見て、
なんとかしてやらなきゃ、と思い、
主人に
「もう1年やらせて」と頼み込んだ。
■ ■
そうやって与えたこの1年が、
息子にとって、
かえってつらいものになっていないだろうか、
あの時
あきらめさせるべきだったんではないか、
と何度も後悔しかけた。
■ ■
合格ラインに届かなかったセンター試験。
それでも志望を変えずに
逆転を狙って出願した2次試験を経て、
息子は執念で合格を勝ち取った。
いろんな人に
いろんなことを言われた4年間だった。
■ ■
高校卒業後、
社会人になった娘は、
精神的に大きな支えとなってくれた。
この結果ですべてが報われた。
「親として間違いじゃなかった」
と思わせてくれた息子に、
私は心から感謝した。
■ ■
合格発表後の息子の声は、
明るくて大きい。
生き生きとした息子の声を、
久しぶりに聞いた気がする。
一番つらかったのは本人だっただろう。
■ ■
この4年間を思えば、
今後の6年間、
医学生として
息子は頑張り続けられるはずだ。
浮かれることなく、
責任重大な職業を
選ぼうとしていることを忘れないで。
本当に見たかった桜が、
ようやくわが家に咲きそうだ。
平松奈緒美(45歳・パート)
=十勝管内音更町
(以上、北海道新聞より引用)
■ ■
平松様に心からおめでとうございますと
祝福のメッセージをお送りします。
私は4年間、
札幌医科大学形成外科の講師として働きました。
その間、400人の医学生に、
形成外科の講義をしました。
四浪(よんろう)なんてふつうです。
社会人経験者も、
妻帯者もいました。
■ ■
補欠合格で入学しようと、
四浪で合格しようと、
医師としての資質には、
まったく関係ありません。
むしろ、
ご子息は素晴らしいお医者さんになれます。
私の同級生を見ても、
四浪以上で入学して、
素晴らしい院長になっている先生が何人もいます。
■ ■
卒後30年もして同期会をすると、
現役合格で一番若い先生が、
一番老けて見えたりすることもあります。
4年間は決して無駄ではなかったのです。
むしろ現役合格で入学後に、
大学に失望してやる気を無くする人もいます。
多浪して入学した学生さんは、
大学に対する情熱が違います。
しっかり勉強して落第率も低いです。
(100人入学すると6年間で10人以上落第します)
■ ■
札幌医科大学の入学式は
4月3日(金)ですね。
医学部は入学後も勉強が厳しいです。
実習もあり、レポートもあります。
6年後には難関の医師国家試験もあります。
医学部と保健医療学部だけの
札幌医科大学は、
総合大学に比べて欠点もあります。
ただ、よいところもたくさんあります。
医師国家試験合格率は北大(医)より上です。
■ ■
平松さんのお母さん、
ご苦労様でした。
よかったですね。
私の後輩となった平松君へ、
入学おめでとう
大いに青春を楽しんでください。
よい先輩や素敵な彼女を見つけてください。
心から4年間の努力に敬意を表します。
6年間勉強して、
素晴らしいお医者さんになってください。