医学講座
医師の言葉
医師の言葉について、
平松様からのコメントをいただきました。
「日常生活に困ってるかい?」
と聞かれたので
「それほどでもありませんが、曲げ伸ばしが辛い…」
まで言いかけたときに、
「だから。困ってるかいって聞いてるの」
と言葉をかぶせられ、違う病院を受診してみようと考えました。
■ ■
「痛い」事に困っているから1年も通い続けているのです。
日常生活に支障があるからではなく、
痛い事に困っているのです。
原因のわからない痛みの辛さを切々と訴えました。
「こちらでわからなかったら諦めようと思って受診させていただきました」
と言うと、
本来なら1週間待ちのMRI検査をしてくださり、
午後からは手術で先生が診察できないにも関わらず、
時間を割いて結果を教えてくださいました。
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中学2年生の子どもが
『先生、ぼくの病気は治るんですか?』
と医師に尋ねたところ、
『あぁ、一生治りません。』
と答えられた先生もいらっしゃいます。
その先生は、
札幌市内でも大きな病院の先生で、
『一生治らない病気』の権威です。
先生、本人は忘れていらっしゃると思いますし、
別に悪気があって言ったとも思えません。
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医師の立場から医師を弁護させていただくと、
現在の保険医療制度では、
時間をかけて外来で説明すればするほど、
病院の赤字が増えます。
次に待っていらっしゃる患者さんからは苦情が出ます。
多忙な医師の代わりに、
困っている患者さんに捕捉説明をしてくれる、
看護師さんはいません。
■ ■
一人で一日に何十人も外来を診るのは、
正直なところ辛いものです。
朝、8:30から診療をはじめて、
お昼ごはんが15:00なんてこともあります。
外来で待っていらっしゃる方がたくさんになると、
必然的にスピードアップを迫られます。
予約制をとっていて、
予約時間を2時間以上過ぎても、
順番が回ってこないこともあります。
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医師免許がなくてもできるような、
次回受診日の予約とか、
手術日の調整など…
すべて一人の医師がしなくてはなりません。
電子カルテが導入されると…
患者さんの方ではなく、
パソコンの画面に向かって、
慣れないキーボードと奮闘する先生もいます。
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こんな混雑した外来で、
お一人おひとりに丁寧に説明するのは、
とても大変なことなのです。
でも、
一番の問題点は医師側の認識です。
「お坊ちゃま成功者」
「お嬢ちゃま成功者」
として医学部へ入学された学生さんがいます。
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センター試験で高得点を取った学生さんの、
国語の能力は…
マークシートでは良くても…
実際の医療現場では役に立ちません。
『おはようございます』
も言えない医師がいます。
医学部に入学後に、
医学英語という科目はありましたが、
正しい、
美しい、
医療用日本語会話なんて科目はありません。
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私自身を含めて、
医学部教育に携わる医師で、
美しい日本語を指導できる教官がいません。
私は札幌美容形成外科を開業してから、
美しい敬語を身につける本
㈶NHK放送研修センター、日本語センター
河路 勝 著
中経出版
ISBN 4-8061-2163-0
を購入して日本語を勉強しました。
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この本は、
トヨタ自動車がレクサス販売店を立ち上げた時に、
従業員の方が参考にしていらした本です。
テレビでトヨペット店から
レクサス店へ移動した女性スタッフが
この本を片手に特訓を受けていました。
それを東京のレクサス販売店に伺って、
本を購入しました。
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医師だけではなく、
今年、社会人となられた新人さんにもおすすめです。
名医になるのは難しいですが、
患者さんにしっかり丁寧に説明できる医師を育てるには、
日本語の教育が必要です。
そのためには、
受験にはない日本語の使い方が必要です。
もちろん、一番大切なのはその医師の人間性です。