昔の記憶

命日(めいにち)

 今日、4月6日は、
 岳父(がくふ:家内の父)、
 故_片寄茂八(かたよせもはち)の命日です。
 平成5年(1993年)に、
 兵庫県三田市(さんだし)のゴルフ場で、
 急性心筋梗塞で亡くなりました。
 64歳でした。
 65歳になる23日で前でした。
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 その日は火曜日でした。
 市立札幌病院皮膚科の外来で、
 13:30から診療を開始して、
 間もなくでした。
 看護婦さんが、
 『先生、奥さんから電話です』
 と電話を取り次いでくれました。
 『こんな時間に何だろう?』
 『子どもがケガでもしたのかなぁ…?』
 と思って電話に出ました。
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 電話を取ると…
 家内の声が震えていました。
 『おじいちゃんが…』
 『おじいちゃんが…、死んだって…』
 それを聞いて、
 私は自分の父親が亡くなったと、
 一瞬、思いました。
 市立札幌病院へ勤務してから、
 私は、毎日、救急部で、
 ‘ある日突然亡くなる人’を見ていました。
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 市立札幌病院の正面玄関は、
 午後7時に閉まっていました。
 その後は、救急部の横が通用口でした。
 私が帰宅するのは、
 午後7時以降が多く、
 救急部の公衆電話から、
 身内の急逝(きゅうせい)を伝える方を、
 何度も目にしていました。
 まさか、自分の身内が急逝するとは…
 しかも、家内の父が亡くなるとは…
 夢にも思っていませんでした。
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 家内に、
 『すぐに帰るから航空券を手配して』
 とそれだけを指示しました。
 私は4月に赴任したばかりの、
 竹野巨一(たけのなおかず)先生に外来をお願いし、
 直属の上司である皮膚科主任医長の
 嶋崎匡(しまざきただし)先生に報告をしました。
 亡くなったことが信じられず、
 搬送された、
 三田市民病院へ電話をしました。
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 義父の最期を診てくださった、
 担当の先生とお話しができました。
 『救急車で搬送されていらした時は、心肺停止でした』
 『蘇生(そせい)を試みましたが、戻りませんでした』
 亡くなったのが、
 家内の父であることを確認しました。
 亡くなる2日前まで、
 私の子どもたち2人(小4と小2)が、
 家内の実家に遊びに行っていました。
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 『おじいちゃんに遊園地に連れて行ってもらった』
 『おじいちゃん、ちょっと辛そうだった』
 『酸欠でなぁ』と休んでいた。
 など子どもと話していたところでした。
 今から考えると、
 下肢の動脈が細くなって、
 足が冷たいというので、
 登山用の靴下を送っていました。
 他にも前兆らしき症状がありました。
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 幸い飛行機に空席があり、
 午後のJALが取れました。
 新千歳空港に着くと、
 JASが少し早く出るというので、
 JASに変更しました。
 いつもはANAですが、
 この時は少しでも早い便に乗りました。
 当時は機内に公衆電話があったので、
 機内から実家へ電話をしました。
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 伊丹空港に到着しました。
 いつも、
 『よく来た』と出迎えてくれた義父はいません。
 空港からタクシーで、
 高速道路を飛ばしました。
 家内は一言も話しません。
 実家に着いたのは、
 午後7時頃でした。
 顔に白い布をかけられた義父が、
 布団の上に横たわっていました。
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 どうしてこんなことになったのか…?
 途方に暮れていました。
 そのうち、
 親戚の人たちが
 島根県から駆けつけて来ました。
 私たちは北海道からでしたが、
 東京へ出張中の義弟よりも、
 島根県からの親戚よりも
 早く着きました。
 私にとっては、唯一の救いでした。
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 家内は、
 『私が北海道へお嫁に来たので、お父さんが早く死んだ』
 と悔やんでいました。
 家内が回復するまで、
 何年もかかりました。
 人が亡くなる場面には慣れていた私も、
 亡くなった後のことは、はじめての経験でした。
 人が亡くなるとこんなに大変だとは知りませんでした。
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 親戚の人たちから、
 菩提寺(ぼだいじ)のことや、
 葬儀のことなどを教えていただき準備しました。
 おじいちゃんは、
 慈徳大願居士という名になりました。
 浄土宗の林法寺(りんぽうじ)というお寺で
 葬儀を営みました。
 桜が満開できれいでした。
 何年経っても忘れられない日です。

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