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北海道の花人

 午後9:00からのNHK教育テレビで、趣味の園芸40年スペシャル、‘北海道 花園を作った人たち’を放送していました。
 私は弟にバカにされながら、高校生から趣味の園芸を見ていた花好きです。
 クリニックにもラベンダーを飾って、ファーム富田の富田忠雄さんからいただいた、‘花人’の称号カードを掲示しています。
      ■         ■
 今日のNHKテレビでは、大空町(東藻琴村)のシバザクラ、上湧別町のチューリップ、帯広の紫竹ガーデン、旭川のオープンガーデン上野様、中富良野のファーム富田が紹介されていました。
 私が毎年訪れているのは、ファーム富田だけですが、どこも花を愛する、花人がキレイに花を咲かせていました。
 自分が育てた花を他人が喜んでくれ、それが励みになって、また花作りをする。とてもよいことだと思います。
      ■         ■
 ファーム富田は、‘農業’としては成り立たなくなったラベンダー栽培を続けたおかげで、現在年間100万人もの人が訪れる、北海道の代表的なフラワーガーデンができました。
 今日のテレビでも、偶然に昭和48年の国鉄カレンダーで、取り上げられ、カメラマンがたくさん来てくれたのがはじまりだったと話されていました。
 私がラベンダーを知ったのも同じ頃でした。
      ■         ■
 ラベンダーは紫の小さな花です。ひとつ一つの花は小さくて、一つだけ見ても大したことはありません。
 畑で紫の絨毯(ジュウタン)のように、一面に咲いていると見ごたえがあります。
 富田さんが、番組で小学生3~4年生の目の高さから見るラベンダーが、一番キレイに見えるとお話しなさっていました。
 山の斜面に植えられたラベンダーもやや低い位置から眺められるのでキレイです。
      ■         ■
 キレイな花を咲かせるには、雑草だらけの土地を開墾し草の根と石を取り除きます。
 土を篩(フルイ)にかけて、小石を取り除き、まず土を作ります。
 そこに有機質の堆肥を入れ、種を蒔いて、芽が出たら草取りをして花を育てます。
 苦労して花を咲かせ、他の人に見ていただいて喜んでいただき、それを励みにまた花を作ります。
 北海道には心優しい、花好きの花人がたくさんいます。

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今日から8月

 札幌美容形成外科は3年前の8月3日に開院しました。3日が火曜日でした。予約が入って、3日は空きがなくなってしまったので、正確には2日(月)から手術を始めました。幸先の良いスタートでした。
 札幌美容形成外科のようなクリニックを‘専門用語’では無床診療所(ムショウシンリョウジョ)と呼びます。入院するベッドを持たないクリニックのことです。
 Dr.コトー診療所のように、入院できるベッドがある診療所は有床診療所(ユウショウシンリョウジョ)と言います。病院は20床以上の入院ベッドを持つ医療機関のことです。
      ■         ■
 診療所を開設するには、保健所に‘診療所開設届’を出します。保健所から検査を受けて、合格すると‘診療所開設届済証’をいただきます。これで晴れて診療を開始できます。
 保険医療機関の場合は、保健所から‘診療所開設届済証’をいただいてから、更に厚生労働省の社会保険事務局に申請する必要があります。
 美容外科の自由診療だけでしたら、厚労省の許可は不要ですが、保険医療機関は手続きが面倒です。
      ■         ■
 これから保険医療機関として新規開業をお考えの先生は、この届出にかかる時間を考慮しないと開院日から保険診療ができません。
 つまり、保健所の検査に合格して‘診療所開設届済証’をいただき、社会保険事務局から‘保険医療機関指定通知書’という保険医療機関としての指定を受け取るまで、最短で約1ヵ月はかかるのです。
 ですから、札幌美容形成外科が保健所に開設届を出したのは、平成16年7月でした。北海道社会保険事務局長から平成16年8月1日から保険医療機関として指定を受けました。
      ■         ■
 大学の医学部では、開業に関する手続きについて学ぶことはまずありません。
 開業した先輩が『大変だぁ~』と言っていたのを、ウロ覚えに覚えていた程度です。
 医学部には‘医学’に関する専門家はたくさんいますが、開業のノウハウを教えてくれる先生はいません。教官自身が‘勤務医’なので、開業の苦労を知らないのです。
 自分が知らないことを一から一人でするのはとても疲れます。私は幸いなことに、よいコンサルタントにお願いできました。
      ■         ■
 私がお願いしたのは、(有)メイプルの武田栄治社長です。ムトウという大きな医療関係の会社に長くいらした方です。
 私は銀行からお金を借りる相談から、各種届出まですべて相談してお願いしました。
 医師は開業のことなどよく知らないので、信頼できるコンサルタントに相談するのがよいと思います。
      ■         ■
(有)メイプル
札幌市北区新川5条1丁目1番22号
新川駅前メディカルビル3階
電話:011-700-6361

最初のホームページで使用

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専門医10症例

 日本形成外科学会専門医でも手術が下手な先生がいることを書きました。これは専門医認定制度をどんなに厳しくしても必ず出てくる問題です。現在の専門医試験で難関なのは、10症例(ジュッショウレイ)と呼ぶ、自身が術者として手術を行った10症例についての所定の病歴要約です。
 4年間の形成外科研修中に、自分自身が術者として手術を担当した患者様の術前・術中・術後の写真、詳細な病歴、手術記録などを学会に提出し審査を受けます。
 手術の腕前を写真で判定するのが、形成外科専門医試験の特徴です。
      ■         ■
 幸い、私の頃は個人情報保護法も今ほど厳しくはありませんでした。大学病院という名前なので、若い先生が手術を担当しても不思議には思われませんでした。
 私が「今度手術を担当させていただくことになった本間です」と申し上げても「よろしくお願いします」と言われた時代でした。
 私が手術を担当する時でも、必ず上の先生がついて手術をしていました。これは今でも同じだと思います。ただ、大学によっては、あまり経験がない指導医の先生がいることも事実です。
 手術の同意をいただく時に、『明日の手術は、○○先生が専門医を取得するために、はじめて執刀させていただきます』と正直に言って、同意してくれる患者様がいらっしゃるとは到底思えません。
      ■         ■
 熱傷の手術でしたら、研修医も含めて大勢で手術をすることもあります。
 問題なのは唇顎口蓋裂など先天異常の手術です。出生数の減少と医科大学の増加で、形成外科医一人が一生の間に手術する唇顎口蓋裂の数は減少しています。
 生後3ヵ月の赤ちゃんの手術を、専門医試験のために研修医に任せてくれる親などいないと思います。
 赤ちゃんの写真を専門医試験の書類に使わせていただく同意も取れないと思います。
      ■         ■
 私がこのホームページで使わせていただいている写真は、すべて患者様の同意を得て使わせていただいています。
 大学病院や認定施設で、どのように同意をいただいて写真を使わせていただいているかわかりません。よほど患者様との信頼関係がなければ難しいと思います。
      ■         ■
 唇顎口蓋裂のような手術は、大学の講師クラス以上の先生がするのが一般的になっています。
 研修医は手術に入って、術者の助手をするのが精一杯で、形成外科研修3年目とか4年目に任せられる手術ではありません。専門医試験に出す10症例は、先輩が手術して、自らはせいぜい抜糸を担当したというのが正直なところではないかと思います。
 専門医試験で写真判定を受けた症例は、受験者本人が自ら手術したのではなく、上手な先輩が手術したのを‘いただいた’可能性が否定できないのです。こうして‘専門医’になった先生は誰も見分けがつきません。
      ■         ■
 私も最初から上手にできたのではありません。先輩に教えてもらって、ドキドキしながら手術をして、少しずつ上達したのです。
 私が幸せだったのは、丁寧で上手な先輩が何人もいて、実に家族的な雰囲気の医局で育ったことです。
 外科医は職人です。腕のよい師匠について、お客様がたくさんいらっしゃる職場で修行をしないと上手になりません。
      ■         ■
 医師選びは難しいと思います。専門医は一つの指標ですが、絶対ではありません。先生との相性もあります。
 手術を受ける時は、その先生と何度か会って話してみるとか、症例写真を見て判断するとか、自分自身で‘この人なら’と思う先生を見つけることです。
 私は人の性格と声と字はなかなか変わらないと思います。自己責任ですから慎重に先生を選んでください。

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形成外科専門医

 私は日本形成外科学会専門医です。厚生労働省が決めた学会専門医なので広告にも出せます。美容外科医の中には、形成外科専門医でない先生もいらっしゃいます。
 形成外科専門医=(イコール)上手な美容外科医ではないと思います。形成外科専門医を持っていなくても、センスがよくて上手な美容外科医を私は知っています。
 残念なことですが、形成外科専門医だからといって、全員が形成外科の手術が上手というわけではありません。
      ■         ■
 昨日、形成外科専門医の認定施設になるための条件を一部書きました。形成外科専門医は厚生労働省が定めた臨床研修を終了してから、最短4年でなることができます。以下が日本形成外科学会の規定です。
【専門医申請資格】
専門医申請資格は,以下の各項を充足するものとする。
①6年以上日本国医師免許証を有するもの
②臨床研修2年の後、資格を有する研修施設において通算4年以上の形成外科研修を行うこと。4年以上ひきつづいて日本形成外科学会正会員であること。
③第19条に定める研修を終了し,第20条に定める記録を有するもの
④日本形成外科学会主催の講習会(学術研修会あるいはインストラクショナル・コース)受講証明書を4枚以上有すること。
      ■         ■
 厚生労働省が臨床研修を義務付ける前は、形成外科研修が6年間必要でした。
 2年間の臨床研修が義務付けられたので、4年間の形成外科研修で取得できるようになったのです。
 学会が認めた施設で、きちんと修行を積まないと専門医はあげませんよ。という規定です。
      ■         ■
 私は4年間で腕の良い形成外科医になれるとは思いません。以前のシステムで、6年間でも不十分だったと思っているほどです。
 学会専門医は一つの基準ですが、専門医だからといって、すべての手術が満足にできるとは限らないのです。
      ■         ■
 手術は車の運転と一緒で、実際にやらなければ上手になりません。運転を教わる教官にもよります。
 丁寧で上手な教官に教わって、本人に素質があれば上達します。
 下手な教官に教わって、十分に走らなければ、免許をもっていても危ないのと同じです。
      ■         ■
 私が医師になった頃は、形成外科医が少なかったので、北大形成外科にはたくさんの患者様がいらっしゃいました。
 全国の他大学からも国内留学の形で北大にたくさんの先生が‘修行’に来ていました。
 先輩から手取り足取り教えていただいたので、今の私があります。先輩にはとても感謝しています。
 これから形成外科医になろうと考えている先生は、よい先輩がいて、症例がたくさんあり、学会活動も盛んにしている施設を選ぶべきです。問題はそんな施設が少ないことと、よい施設は人気があってなかなか行けないことです。

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医学講座

皮膚腫瘍の手術

 日本形成外科学会認定施設は、毎年一回年次報告という報告書を提出しなければなりません。
 手術件数や学会発表の数。指導体制の変更の有無などを学会に報告し審査を受け認定施設の更新をします。
 最近は学会発表や学術論文発表を行っていないと認定施設が取り消されたり、教育関連施設という1ランク下の施設に格下げされたりします。
      ■         ■
 認定施設になるためには規定の手術件数が必要です。
(1)新鮮熱傷(ヤケド)
(2)顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷(顔のケガ)
(3)唇裂・口蓋裂
(4)手,足の先天異常,外傷
(5)その他の先天異常(耳がないなど)
(6)母斑,血管腫,良性腫瘍(アザや皮膚のできもの)
(7)悪性腫瘍およびそれに関連する再建
  (ガンやガンの再建手術)
(8)瘢痕,瘢痕拘縮,ケロイド(キズのひきつれなど)
(9)褥瘡,難治性潰瘍(いわゆる床ずれ)
(10)美容外科
(11)その他。
(カッコ)内は私の注釈です。
これらの項目の手術が必要です。
      ■         ■
 このうち圧倒的に数が多いのが、皮膚良性腫瘍の手術です。
 一般の方は皮膚にデキモノができると皮膚科に行かれます。小さくて簡単に取れる腫瘍でしたら皮膚科でも十分に対応できます。皮膚科医にも上手な先生がいらっしゃいますし、形成外科で修行を積んだ先生もいらっしゃいます。
 最初から形成外科にかかる方はマレです。形成外科医や形成外科学会の宣伝が足りないのかも知れません。
      ■         ■
 料金は皮膚科で取っても形成外科で取っても同じです。形成外科で取ると高いイメージがありますが、自由診療の美容外科以外は料金は同じです。
 形成外科で取ろうと思っても、形成外科は皮膚科ほど数が多くありません。形成外科がない医学部や医科大学があるくらいです。皮膚のデキモノですから、皮膚科や外科で取っていただいて構いません。
      ■         ■
 私たち形成外科医は、他科より少しでもキレイにキズを少なく取るように努力します。
 形成外科医が縫ってもキズは残ります。私たちは残るキズを少しでも目立たなくする努力をします。
 抜糸した後も、最低一ヵ月、部位によっては3ヵ月もテープでキズを保護します。
      ■         ■
 形成外科に入った研修医は、先輩から皮膚良性腫瘍の手術を教わります。最初にする手術はたいてい皮膚良性腫瘍の手術です。
 他科の先生が手術するよりキレイでなければダメなので、研修医がする時には必ず指導医がつきます。
 皮膚のデキモノを手術する時は、ぜひ形成外科にご相談なさってください。同じ料金でよりキレイに治すよう努力しています。

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医学講座

皮膚ガンの手術

 『ガンです。手術が必要です』と言われて驚かない人はいません。『まさか?ガン?手術?』と普通の人は狼狽(ロウバイ)し、どうしよう?と思います。
 胃ガンができたとします。ガンは健康診断で見つかっても、更に内科で精密検査をします。ガンの組織型、つまりどんなタイプのガンか?悪性度は?他の臓器への転移は?などなど、詳しく調べます。最近はPET(ペット)という診断方法もあり、かなり詳細に調べられます。
      ■         ■
 手術の適応が決まると、外科へ紹介されます。外科病棟へ転科して、手術前の検査・処置をして、いよいよ手術です。
 白い巨搭の財前教授が外科。里見助教授が内科。二人の関係が外科と内科の関係です。
 外科はメスを持って、病巣を切除し、切除した部位は縫合するか他の臓器で再建します。財前先生のような消化器外科でも形成外科と一緒に手術をすることもあります。私も消化器外科の先生と手術をしたことが何度もあります。
      ■         ■
 皮膚ガンだけは、皮膚科の先生が診断も手術もする施設があります。札幌医大がそうでした。私の直接の上司は前任の皮膚科J教授でした。
 彼の主張は『皮膚科医はメスを持たなければならない』でした。彼は悪性黒色腫というホクロのガンで有名でした。
 彼の手術は形成外科から見ると、お世辞にも上手とは言えませんでした。皮膚移植をすると植皮が生着しないことがよくありました。
 患者様は‘教授’が手術したのだからと諦めていましたが、中には形成外科へ助けを求める方もいらっしゃいした。
      ■         ■
  私が在籍していた頃の北大病院は皮膚科と形成外科がとても仲良しでした。当時の皮膚科教授であった三浦先生が形成外科を作ってくださいました。
 私の恩師である大浦名誉教授は、形成外科ができたのは、三浦先生のおかげといつも感謝していまいした。
 当時の北大では、皮膚科が診断して、形成外科が手術する。小さなガンでしたら皮膚科が手術して形成外科が助言するという分業がうまくできていました。
      ■         ■
 私の恩師である、市立札幌病院院長の吉田哲憲先生は皮膚ガンの権威です。私が札幌医大に在籍していた時も何度もご相談していました。吉田先生に助けていただいた患者様もたくさんいらっしゃいます。
 形成外科医の中でも、皮膚ガンを専門にしている先生は多くありません。大学病院の形成外科でも皮膚ガンは取り扱わない施設もあります。
 私は皮膚科医がメスを持っても悪いとは思いません。ただ、ただ切るにしても形成外科医がするのと皮膚科医がするのでは雲泥の差があります。
      ■         ■
 良心的な皮膚科医は、形成外科医と仲良くして、手術の時にも協力を仰ぎます。
 どのような手術法で切って、どうやって再建すると、患者様にとって最良なのかを考えてくれる先生がベストです。
 自分の専門外のことは、信頼できる専門家に任せて、仲良く治療できる先生がベストです。
 私は皮膚科は専門ではないので、皮膚科を標榜していません。皮膚病の方は信頼できる皮膚科専門医にご紹介しています。皮膚腫瘍については、診断も手術もしていますが、診療所でできる手術には限界があるので、皮膚ガンの治療は市立札幌病院にお願いしています。

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解剖の承諾

 形成外科では患者様が亡くなることはマレです。北大病院形成外科でも年に数人でした。
 北大形成外科は、他大学の形成外科と比較して、皮膚悪性腫瘍(皮膚ガン)の治療を多くしていました。そのため、皮膚ガンで亡くなる方の割合が多かったと記憶しています。あと、私が医師になった頃は、重症の熱傷(ヤケド)で亡くなる方もいらっしゃいました。
      ■         ■
 大学病院で亡くなると、全員解剖するわけではありませんが、ガンの患者様などには解剖をお願いすることがありました。
 病理解剖という解剖です。亡くなってから、死因を確かめたり、病巣の拡大程度、転移の程度などを調べるために行います。また、摘出した臓器から細胞をとって、ガンの研究に使うこともあります。
      ■         ■
 病理解剖だけは、生前に『もし亡くなったら解剖してもよろしいでしょうか?』という同意を本人からいただいてはいませんでした。おそらく、今も本人からはいただいていないと思います。
 死期が迫った患者様に、『あと一週間であなたは亡くなります。死んだ後に解剖してもよろしいでしょうか?』なんてことは、世界中どこへ行って言わないと思います。例外は医学部の現役教授です。教授が亡くなった時は、無条件で解剖するという不文律がありました。
 病理解剖は『ご臨終です』と申し上げた後で、ご家族にお願いします。
 主治医がいれば、主治医がしますが、出張などで不在の時は、病棟医長がすることもありました。
      ■         ■
  悲しんでいらっしゃるご家族に、解剖させてくださいと言うのは辛いことです。
 入院中に、よほどしっかり治療していなければ、解剖の承諾はいただけません。医療不信があって、解剖して死因を確かめたい時は別ですが、大部分のご家族は、死んでまで痛い思いをさせたくないとお考えになります。
 解剖の承諾をいただくこと=(イコール)家族からの信頼を得ていることになります。
      ■         ■
 厚生労働省が臨床研修指定病院を指定する要件として、解剖の割合を定めていました。
 つまり、年間に亡くなる患者様のうち、病理解剖をさせていただく割合(剖検率ボウケンリツ)が高くないと、研修指定病院にはなれません。
 よい病院を選ぶ基準として、この剖検率が高い病院を選ぶのは賢明な方法です。
 毎日の治療をしっかりしていないと、決して解剖は引き受けていただけません。また、医師・看護師・医療スタッフの対応がよくないと同意はいただけません。
      ■         ■
 政治家は選挙で国民から審判されます。医療従事者は、患者様が亡くなって、解剖のお願いをした時に、患者様のご家族から審判を受けます。
 昨日の臓器提供の同意と同じように、日常診療に対する評価が、患者様やご家族からの‘同意’という形で評価されます。
 研修医の中には、朝『おはようございます』もきちんと言えない人もいます。まず、きちんと挨拶ができて、相手の目を見て話せるようになることが臨床研修の第一歩です。
 私は自分を治療してくれた先生がベストを尽くしてくれれば、たとえ助からなくても、解剖でも臓器提供でもいたします。もし、いい加減な治療をして助からなかった時は、化けて出て来て文句を言うと思います。

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医学講座

鹿野 恒 先生

 昨日の日記に市立札幌病院救命救急センターの鹿野先生のことを書きました。
 気になって、Googleで鹿野先生を検索してみました。
      ■         ■
 平成18年12月に開催された、第25回日本蘇生学会の抄録が見つかりました。抄録(ショウロク)というのは、学会の前に、今度の学会ではこういう内容で発表します、と発表内容がわかるように提出する原稿のことです。学会に参加する人は、抄録集を読んで、この発表を聴こうと決めるのです。
 以下は鹿野先生の発表タイトルと抄録の一部です。
      ■         ■
 救急医療終末期において、再び「蘇生」への医療を考える
-主治医にしかできない臓器・組織提供の選択肢提示-
 市立札幌病院 救命救急センター
 鹿野 恒
 救急集中治療領域における終末期医療のなかで、どんなに懸命に治療しても救命不能な患者は必ず存在する。それは救急医療の限界であり、救急医にとって敗北の瞬間でもある。
 しかし、そのような患者とその家族を前にして、私たち救急医は何もできないのであろうか? そして患者の意思や家族の希望を見過ごしてはいないであろうか?
      ■         ■
【対象・方法】2004 年1 月より2006 年3 月までに、14 例の脳死が疑われる患者に対して臨床的脳死診断を行ない、全例に対して終末期の選択肢提示による意思表示カードの確認および患者家族の臓器提供の意思確認を行なった。
【結果】14 例の家族のうち13 例の家族において臓器提供への関心が認められ、10 例の家族が移植コーディネーターと面談を行なった。その全て家族が心停止後の臓器・組織提供を承諾され、腎臓19 件、膵臓1 件、心臓弁・大血管5 件、角膜12 件、皮膚4件の臓器・組織提供を受けた。
 これらの症例の中で、意思表示カード所持は4 例であったが、死亡前確認は1 例であり、鼓膜損傷のため脳死下臓器提供には至らなかった。
【考察】日常の診療の繁忙さと臓器提供の意思確認の精神的負担、臓器提供時の労力を考慮すると積極的に選択肢提示を行なうのが躊躇されるのも事実である。しかしながら、脳死となった患者の約7 割の家族より臓器・組織提供を受け、10 例中6 例では家族の意思のみで臓器提供が行なわれており、患者家族の臓器提供への関心は決して希薄ではなかった。
 さらに、将来的には臓器移植法改正により家族の承諾のみで脳死下臓器提供の可能性もある。
【結語】救急医療終末期の臓器・組織提供の選択肢提示は、救命不能な患者家族に対して、救急医が最期にできる医療の一つではないかと思われた。
      ■         ■
 私は以前にも書きましたが、ドナーカードを持っています。市立札幌病院に勤務した際に、腎移植科の平野先生が献身的に腎移植に取り組んでいらっしゃいました。その真摯なお姿を拝見して腎バンクに入ったのが最初です。
 救急医療の現場で家族から臓器提供の同意をいただくのは大変なことです。
 最愛の人が突然救急車で運ばれ、呼んでもゆすっても返事もしてくれないのです。‘脳死です’なんて言われたって、そこに寝ているのは、つい昨日まで(今朝まで)は元気だった人もいるのです。
 誰もが、夢であって欲しい。何かの間違いだ。悪夢だ。と思っている瞬間です。
      ■         ■
 救命救急センターの医師、看護師、医療スタッフのだれもが献身的に働いて、家族から信頼されなければ、臓器提供の同意は決して取れません。
 この抄録を読んで、私はTVでしか拝見したことがない鹿野先生を‘すごい’と思いました。
 医療不信とか医療事故とか、医療に対する国民の目が厳しくなっています。この時代にこれだけの信頼を得るのは素晴らしいことです。
 私も、助からない状態になったら、すぐに臓器提供をします。鹿野先生のような素晴らしい医師に治療を受けて助からなければ諦めもつきます。

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医学講座

頭を冷やす

 私は短気ですぐに怒ります。なるべく怒らないように気をつけていますが、自分の正義感や道徳観と合わないことには強い憤り(イキドオリ)を感じます。すぐに行動に移すので、日記にも随所に私の憤りが出ていると思います。
 外科医には気が短い人が多いかも知れません。瞬時にいろいろな判断をしなくてはダメなので、モタモタしているのは嫌いです。
      ■         ■
 頭を冷やしてよく考えなさいとか、頭を冷やしなさい!という言葉があります。
 医学的に頭を冷やして冷静になれるかどうか??? わかりません。病院で頭を冷やすのは熱がある時くらいです。
      ■         ■
 手術中はどんなことがあっても冷静沈着に対処します。なかなかできることではありません。経験と勉強が必要です。
 航空機のパイロットといっしょで、生身の人間相手の仕事ですから、いつも快適な水平飛行ばかりではありません。
 時には予期しない乱気流に巻き込まれることもあります。慎重に操縦桿をにぎり機体を立て直します。
 頭を冷やしている暇はありません。瞬時にいろいろな判断をします。
      ■         ■
 昨夜のフジテレビ23:30からのニュースJAPANで、先日ご紹介した市立札幌病院救命救急センターが出ていました。
 鹿野 恒(かの ひとし)先生が出ていらっしゃいました。
 私は、鹿野先生と一緒に働いたことはありませんが、以前は札幌医科大学にいらっしゃいました。
 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
 日本救急医学会認定医
 日本救急医学会指導医
 私の記憶が正しければ、鹿野先生は札幌医科大学高度救命救急センターにいらして、脳をガンガン冷やしていました。
      ■         ■
 心臓が止まった人を助けるのが、経皮的心肺補助(PCPS)であることは、7月15日の日記に書きました。
 昨日のテレビでは、鹿野先生が手のひらにのるほどの円形の装置を持っていらっしゃいました。
 その装置で血液を脳に送り、同時に血液を冷やして、脳を低温に保ちます。温度を下げると、脳の代謝が減り、心臓が止まった人でもダメージが少なくなります。
 簡単に言うと、心臓が止まると、止まった瞬間から、脳が死んでいくのですが、冷やすことで死ぬのが遅くなり助かるのです。
      ■         ■
 昨日のテレビでは、鹿野先生に助けていただいた男性が奇跡だとおっしゃっていました。
 私が市立札幌病院に勤務していた頃は、経皮的心肺補助(PCPS)はありませんでした。
 たまたま、冬に心肺停止になり、心臓が止まって‘死んだ’状態で搬送された方がいらっしゃいました。その方は、発見されるまで何時間もかかっていましたが、寒い札幌の冬のおかげで脳が助かり、元気になって退院されました。
 当時から脳を冷やすと良いことがわかっていましたが、このような症例はマレでした。
      ■         ■
 今日のフジテレビ23:30からのニュースJAPANでも、救急医療の話しが出るようです。
 私を含めて、人間はいつどこでどんなことが起こるかわかりません。興味がある方は是非ご覧になってください。私が見てもヤラセはいっさいありません。

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札幌こころのセンター

 昨日、自己臭恐怖という‘病気’について書きました。美容外科と精神医学は密接な関係があります。美容外科や形成外科を生業(ナリワイ)としている私たちが一番気をつけなければならないのは、実は心の病気です。
 美容外科を受診なさる方の中には、明らかに‘病的’に自分の容姿を気になさる方がいらっしゃいます。醜形恐怖という‘病気’です。美容外科の教科書には必ず書いてあります。
      ■         ■
 醜形恐怖の疑いがある方が来院された時は、‘絶対’にすぐに手術はいたしません。他人が自分の顔がおかしいと悪口を言っている。それが原因で夜も眠れなくて、仕事も辞めてしまった。などさまざまな症状が出ます。
      ■         ■
 以前いらした方です。他の美容外科で何度も手術を受けているのに、自分の目がおかしいと訴えられます。
 睫毛が目に入っているのでもないのに、睫毛は全部抜いてしまっていました。
 私は、今まで受けてきた手術は間違っていないし、目も異常はない。どうしても目が痛いというので、信頼できる眼科の先生を紹介しました。その方は、精神科に通院していましたので、そちらの先生にも紹介状を書きました。
      ■         ■
 保護者の方にもいらしていただき、現在の状態について説明しました。保護者の方も明らかに‘病気’であることを認められ、本人に説得もしていました。
 その方は、私のところに数回いらしてくださいました。最後にいらしたのが保護者と一緒の時でした。
 何度も手術をしてくださいと頼まれましたが、私は精神科の先生の同意があれば手術をします。と返答し紹介状を書いたのが最後でした。
 6ヵ月後位に警察署から電話がありました。札幌美容形成外科の診察券を持った方が、自殺しているのが発見されたという知らせでした。
      ■         ■
 私はもし自分が手術を引き受けていたら、その方は死ななくても済んだのでは…?と後悔しました。
 ただ、私が手術しても、その方の主訴は改善したかどうかはわかりません。
 精神医学の難しいところです。美容外科や形成外科は手術で治して、手術した瞬間に治るものもありますが精神医学は‘簡単’には治りません。
      ■         ■
 札幌市には札幌こころのセンターという施設があります。札幌市民以外の方には北海道立精神保健センターという施設があります。
 「札幌こころのセンター」は札幌市民の心の健康の保持増進や精神障害の予防、社会復帰への援助を行う総合的技術センターです。
 心の悩みや病について相談を受ける関係者に対し、研修やコンサルテーション、情報提供を行うほか、思春期、ひきこもり、依存症等の特定相談を行っています。
 もし、こころの問題で相談したければ、こうした公的な機関を利用されるのも一つの方法です。
      ■         ■
 札幌駅周辺にもメンタルクリニックがたくさんできました。どこも、大繁盛していて、予約がなかなか取れません。
 現代はストレス社会です。ストレスが原因でさまざまな身体症状が出ます。
 精神神経科は、‘キチガイ病院’と言われた時代もあったようですが、現代ではごく一般的な診療科目です。
 内科の先生に不眠で睡眠薬をいただくより、メンタルクリニックの方が的確に診断をしてくれて、よく効く薬を出してくださいます。もし、こころあたりがある方は是非受診されることをお薦めします。札幌こころのセンター

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